撮影日記


2007年12月02日(日) 天気:はれ

8mmフィルムで撮ってみたい

昨日,今日と続けて,ある講座の取材に行ってきた。先月(2007年11月10日の日記を参照)の続きである。
 この講座は,家庭用ディジタルビデオカメラを使って自主映画を制作してみよう,というものである。自主映画とは,商業映画と対になることばで,アマチュア作家によってつくられる映画作品などが含まれることになる。

かつて,自主映画はおもに「8ミリ」とよばれるシステムで制作されていた。「8ミリ」とはフィルムの幅をあらわしている。幅8mmのフィルムに撮影し,現像し,そのフィルムをつなぎ合わせて,1本の作品にしあげていた。
 「8ミリ」は,自主映画制作だけではなく,家庭の日常的な記録に使われることもあったようだ。しかし,1本のフィルムに記録できる映像は3分ほどであり,また,フィルムや現像のコストや時間の負担は小さいものではなかったようだ。撮った映像を見るには大きな映写機を設置し,部屋を暗くしてスクリーンに投影することになる。これも決して,お手軽なことではない。
 その後,家庭用ビデオカメラが登場し,低価格化にともなって一気に普及がすすんだ。映像は何度でも使える磁気テープに記録され,テレビに接続して記録された映像をすぐに見ることができるという点は,「8ミリ」フィルムの欠点をすべてカバーしていたのである。
 ところが,自主映画の制作者にとっては,ビデオは「8ミリ」フィルムと違って,編集がやりやすいものではなかったらしい。パーソナルコンピュータを利用した「ノンリニア編集」によって,編集がやりやすくなったことは,たいへん大きな要素であるようだ。

2006年に,富士フイルムは,8ミリフィルム「シングル8」の製造,販売の終了(2007年3月)と,現像処理の終了(2008年9月)を発表した。それに対して,映画作家や8ミリフィルムの愛好家から「継続してほしい」という声が多数寄せられ(2006年10月27日の朝日新聞でも報道されていた),2007年1月10日付けで「当面継続する」ことが発表された(※1),という経緯があった。
 しかし,8ミリフィルムの絶対的な消費量が減少傾向にあることは間違いない。それにともなって,8ミリカメラがジャンク品として格安で売られている場面を見かけることも増えている。
 2007年9月29日の日記にも書いたが,広島市内で中古カメラの扱いが多い「カメラのキタムラ」あけぼの店は,ジャンクカメラの扱いも多い。その価格は1台525円だが,まとめて買うと1台あたりの価格が安くなるしくみになっている。そのとき,数合わせのために購入したカメラの1つがこれである。

1974年発売のフジカシングル8「ZX300」という中級モデルの8ミリカメラである。外見はかなり傷んで見えるが,レンズ等に致命的なダメージはなく,電池を入れるととりあえず動作した。おそらく撮影可能だろう。
 このたび,自主映画の制作現場を見たことで,自分もなにか映像作品をつくってみたくなったのである(笑)。どうせなら,8ミリフィルムで,2〜3分にまとめてしまいたい。しかし,作品としてしあげるには,カメラのほかにエディタ(フィルムを見ながら切り貼り編集をするための装置)が必要になる。さらに上映のために映写機も必要になる。
 やはり,最初の敷居はどうしても高いようだ。

ところで今,「8ミリ」というとき,8ミリフィルムを連想する人は少ないかもしれない。たぶん,8ミリビデオの方を連想してしまうことだろう。8ミリビデオも,すっかり市場でみかけることは減ってしまった。店頭にカメラやデッキを見ることもなく,中古品のウィンドウでもほとんどみかけない。ジャンクワゴンで見られることも稀である。私の手元にある8ミリビデオカメラも調子がよくなく,これまでに8ミリビデオで撮った映像が見られない状態になっている。フィルムなら,映写機がなくてもなにが写っているかくらいは確認できるのに,ビデオテープではそれも不可能である。機器がなくても見ることができる,それがディジタルカメラによる画像データに対するフィルムによる写真の優位点である。8ミリビデオはディジタル機器ではなくアナログ機器であるが,それでも映像を再生するために機器が必要である。フィルムの偉大さを思い知るには十分な事実であろう。

※1 http://fujifilm.jp/information/20070110/index.html


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