撮影日記


2007年11月01日(金) 天気:雨

人は見かけによらぬもの
カメラも見かけによらぬもの

先月末の東京への出張は,ちょうど台風の接近もあり,ヒドイ目にあったものである(2007年10月27日の日記を参照)。そして今日も雨。

さて,一般的に,カメラは雨に弱いとされる。
 カメラは精密機械である。内部のメカニズムは,細かなばねの力を,細かなギアが,それぞれ必要な場所に伝えるようになっている。その力によって制御される動作は,たとえば絞りの微妙な開き具合であったり,たとえばシャッターの開く時間を精密に決めたりするものである。動きそのものが細かい上に,そこに求められる精度も高いものになっている。そのためには,1つ1つの部品がなめらかに動作することが求められるだろうし,些細な錆なども大きく動作に影響することになる。
 さらに,電子部品を多用して自動化の進んだ最近のカメラにおいては,電子回路が水の影響で破損することもあり得る。
 また,フィルムも雨に弱いといえる。フィルムの現像処理は薬品につけておこなうから結局は濡れるわけだが,雨が漏れてくるなどして不均一に濡れてしまった場合などは,それが画像のムラにつながってくる。

ほかの側面として,雨が降っているときには,カメラの操作がやりにくいということも忘れてはいけない。傘をさした状態では操作しにくいし,カメラを濡らさないように注意深く操作しなければならないのである。

しかし。
 雨の日にだって,写真を撮りたいことがある。雨の日ではなくても,たとえば海岸であるとか,滝のそばであるとか,雪の日であるとか,さまざまな要因で濡れる可能性がある場面でも,写真を撮りたいことがある。そんなときには,防水の工夫がされたカメラが重宝される。

防水カメラの代表といえば,ニコン様の「ニコノス」シリーズである。このことに異議を唱える者はいないはずだ。「ニコノス」は水深50mの水圧にも耐えられるように設計されており,「防水カメラ」というよりも「水中カメラ」というべきかもしれない。
 これはTTL測光の絞り優先AEが採用された「ニコノスIV-A」型である。絞り優先AE専用のため,外観はコンパクトでシンプルなカメラであるが,手に持つとずしりと重い。シャッター切ってみると,一眼レフカメラのようなミラーの動作がないことや,気密性が高いためか,シャッターのショックをあまり感じず,静かな動作をする。
 裏蓋にはゴムのパッキンが使われており,そのロック機構も厳重なもので,実に頼もしい限りである。

これはニコン「ピカイチカリブ」という防水カメラである。フルオートのいわゆるコンパクトカメラだが,耐水深3mという防水性能を誇るものだ。ニコノスの耐水深50mというスペックにくらべると,耐水深3mというスペックは比較対象にならないと感じられるかもしれない。しかし,本格的な潜水を目的としないなら,たとえばプールや海水浴などでちょっと潜ってみる程度であれば,耐水深3mというのはかなり使えるレベルの防水性能といえるのではないだろうか。
 裏蓋を開けてみると,そこにはゴムのパッキンが使われていたり,フィルムをおさえる圧板のしくみがニコノスと同様のものになっていることに気がつくだろう。また,裏蓋のロックが二重になっている点からも,このカメラが防水性能を強く意識してつくられたものであることを感じとることができるはずだ。

水中で撮影できるほどの防水性能は必要ないが,水しぶきのかかるところでカメラを使いたい,というケースもあるだろう。このオリンパス「AF−1(ぬれてもピカソ)」は,そういう防水性能をもったカメラである。レンズ正面に防護ガラスのようなものがあること以外は,ごく普通のフルオートのコンパクトカメラにしか見えないカメラである。ニコノスやピカイチカリブに見られたような仰々しさは,ここにはない。

さて先日,「新・広島お気軽写真クラブ」写真展(2007年10月20日,21日,23日の日記も参照)にご来場くださった友人から,何台かのカメラをいただいた。その中の1台がこれである。

レンズの前に防護ガラスのようなものがゴムのパッキンでとりつけられているように見える。裏蓋のロックはニコノスに似た厳重なものになっている。そう,このカメラ全体から,「私は水中カメラです」というオーラがただよっているのである。
 実は,このカメラは水中カメラではなく,防水カメラである。このカメラの名前は,チノン「スプラッシュ」。「スプラッシュ」とは,水や泥などがはねることをあらわす単語である。水中に潜っても大丈夫というよりも,水しぶきを浴びても大丈夫という程度の防水性をあらわすネーミングのようだ。
 チノン「スプラッシュ」の見かけは,まさに水中カメラである。しかし,実際には水中カメラではない。一方,オリンパス「AF−1」はごく普通のカメラに見えるが,防水性能をもっている。「人は見かけによらぬもの」とはよく聞かれる言い回しであるが,それと同様に,「カメラも見かけによらぬもの」ともいえそうである。


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