撮影日記


2007年09月07日(金) 天気:晴

さらば,積層電池

カメラは,精密機械である。かつてのカメラは,細かいギアやばねなどによって構成されていた。やがて,フラッシュ撮影用のシンクロ接点が取りつけられるようになると,そのための電気回路が組みこまれるようになった。しかし,このときカメラに組みこまれた電気回路は,導線とスイッチだけと言ってよい状態である。
 やがて,電気露出計が組みこまれるようになる。露出計の電源は,当初,セレン光電池が用いられることが多かったが,やがて,性能のよいCdSやSPDなどの部品が使われるようになる。セレン光電池は,それ自身が電源であるのだが,CdSやSPDなどを利用した露出計には,別途,電源が必要になる。その電池は,小型で,容量がある限り電圧の低下が少ない,ボタン型の水銀電池がよく使われていた。その後,水銀に関する環境問題から,電池に水銀が使われなくなり,ボタン型の水銀電池は製造・販売されなくなった。このとき,多くの古いカメラが使用できなくなる危機が訪れた。ただし,「露出計が使えなくなるだけ」のカメラであれば,単体露出計を利用するなど,内蔵露出計の使用をあきらめるだけで,カメラそのものは継続して使うことができた。また,自動露出専用のカメラなどでは,現行のボタン型アルカリマンガン電池を利用するために形状や電圧を変換するアダプタが発売されたので,それを利用することで使い続けることが可能になった。
 ところが,さらに電子制御化がすすんだ最近のカメラでは,電池がなければまったく使用することができない。単3乾電池は,なかなかなくならないものと期待できるため,単3乾電池を使えるカメラについては心配は必要ないものと思われるが,さまざまな形状のリチウム電池はどうであろうか。そのような電池を使うカメラは,いつまで使い続けられるのか,不安がともなうものである。ましてや,ほぼ機種ごとに異なることも多い充電式電池を使用するディジタルカメラなどには,将来,いつまでも使えるだろうという幻想を抱いてはいけない。

露出計を内蔵しない,いわゆる機械制御式のカメラであれば,写真を撮るための電源は必要としない。しかし,フラッシュ撮影については,話は別である。フラッシュ撮影のためのフラッシュバルブあるいはスピードライトを発光させるには,マジキューブのような一部の例外を除いて,発火のための電源が必要である。そして,そのためには,かなりの高電圧が要求されている。
 レンズ付きフィルムにも,スピードライトが内蔵されているものがある。それにはたいていの場合,1本の単3乾電池が内蔵されている。単3乾電池の出力電圧は1.5Vに過ぎないが,内部の電気回路に含まれるコンデンサに高電圧をたくわえ,それを利用してスピードライトを発光させている。

かつてよく使われていたフラッシュバルブを発光させるためのフラッシュガンという装置には,電池を内蔵させるようになっていた。そこに使う電池は,小型で高電圧のものが必要である。たとえば,「015」という22.5Vの積層電池とよばれるものが使われていた。そのような電池の内部は,1.5Vの電池のユニットが15個直列につながった状態になっている。そのような積層電池は,スピードライトの普及によってフラッシュバルブが使われなくなるのにつれて,いつのまにか製造・販売が終了していた。
 スピードライトでフラッシュ撮影をするとき,1回発光させたあと,次の発光の準備ができるまでの待ち時間が気になる人もあるかと思う。そのような待ち時間が発生するのは,高電圧をたくわえる(チャージ)ために,それなりの時間が必要だからである。一方,スナップ撮影などの業務をおこなう際には,素早いチャージが求められる。そこで,スピードライトには「積層電池」を使うためのバッテリーケースがオプション品として用意されていることがある。ここで使われる「積層電池」には,「0210」という315Vのものや,「0160W」という240Vのものが2本入った480Vのものが代表的である。
 今日,日本国内では最後まで「0210」や「0160W」を製造・販売していた,松下電池工業が,積層電池の製造を2008年2月末で終了するアナウンスをしていることを知った・・・。(*1)

ちょうど,私の手元にある機材では,National PE-5651というグリップ型スピードライトが,「0160W」を使用する。

これは数年前にいただいたものであるが,このスピードライトは,「0160W」を使用するのが基本的な使い方のようだ。しかし,すでにそのころから「0160W」を店頭で見かけることは少なく,「0160W」を使用する新製品も見かけないことから,「0160W」がいつまで販売されるかに不安を感じていた。そこで,PE-5651をいただいた直後に,オプション品の単1乾電池を8本使うバッテリーパック(TRパワーパック PW-200)を入手しておくことにしたものである。積層電池「0160W」を使う場合にくらべてチャージの時間がかなり長くなるが,単1乾電池が入手が困難になる可能性はかなり低いと思う。

※1 http://panasonic.co.jp/mbi/news/news/070903.html


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