撮影日記


2007年08月16日(木) 天気:晴

2台のリコーフレックス

1950年頃から1955年頃にかけて,日本では「二眼レフカメラ」のブームがあった。数多くのメーカーが,数多くの名前の二眼レフカメラを製造し,流通させていたのである。その名称の頭文字は,A〜Zのほとんどすべてがそろっていた,といわれている(2007年3月13日の日記も参照)。
 その「二眼レフカメラ」のブームのきっかけとなったのは,1950年の「リコーフレックスIII型」である。それまでのカメラにくらべて,大幅に安価な製品として登場した「リコーフレックスIII型」は大人気となり,プレミアがついて定価よりも高く取り引きされることもあったらしい。そして,それを模倣したようなカメラや,さらに改良を加えたようなカメラなど,数多くの安価な二眼レフカメラの登場につながったのである(2007年1月28日の日記も参照)。
 リコーフレックスのシリーズとしては,多くのモデルが発売された。なかには高機能なものも含まれるが,多く見かけるものは,前玉回転式の比較的低価格なものである。前玉回転式低価格二眼レフカメラの代表がリコーフレックスである,といっていいかもしれない。

リコーフレックスのシリーズは,第二次世界大戦前の1941年に発売されたとされる「リコーフレックスA型」にはじまる。これは「ローライコード」を模倣した日本製二眼レフカメラ「ロールコンター」のOEM製品であったとのことである。さらに1942年には,板金ボディで小型の「リコーフレックスB型」も発売される。これらのカメラは,舶来品にくらべれば安価であるが,衝撃的な低価格というわけでもなかった。
 そして,第二次世界大戦後の1950年の「リコーフレックスIII型」(本体5800円ケース1500円)以後は,低価格という特徴を維持しながら,少しずつ改良を加えたモデルを登場させている。1956年の「リコーフレックス・ホリデイ」にいたっては,ケース付きの価格が4900円にまで抑えられている。一方,1955年の「リコーフレックス・ダイヤ」(ケース付き9800円)以後は,レンズボード繰出し式の高級モデルも登場しているし,1959年の「リコー・オート66」は,ドイツの「ローライマジック」とともに,プログラムAE機能をもった二眼レフカメラとして,貴重な存在となっている。

先日,塩屋の「スタジオ・チーズ」さんを訪れた際に,そこで待ち合わせていた友人から,2台のリコーフレックスをいただいた。

1つは,ネームプレートにはっきりと書かれているのでわかりやすいのだが,1954年に発売された「リコーフレックスVII型」である。「リコーフレックスVII型」は,使われているシャッターユニットによって,2つに分類される。1つはリケン付き(1/25秒〜1/100秒)のものでケース付き8300円(まもなく6800円に値下げ),もう1つはセイコーシャ・ラピッド付きのもの(ケース付き10500円)である。今回いただいたものは,セイコーシャ・ラピッド付きのもので,これは1秒〜1/500秒という幅広い範囲をカバーしており,実用性が高い。

もう1つのリコーフレックスは,ネームプレートが失われているのだが,セルフタイマー付きで1/10秒〜1/200秒のリケン・シャッターが使われていることから,1955年に発売された「リコーフレックスVIIs型」(ケース付き8300円)と思われる。ところで,このカメラの巻き上げノブには,0から35までの数字が刻まれている。おそらくは,35mm判フィルムでの撮影ができる「リコー・キン」というオプション装置に対応しているのであろう。そうなると,「リコー・キン」も入手して,使ってみたくなるというものだ。

「リコーフレックスVII型」や「リコーフレックスVIIs型」など,多くのリコーフレックスには,8cm F3.5の「リコー・アナスチグマット」レンズが固定されている。したがって,「リコー・キン」を使うときは,ライカ判で80mmの中望遠レンズが固定された状態となる。ライカ判での80mmレンズは,一般にポートレイト用に適しているとされる。標準レンズや広角レンズにくらべると,個人的には使用する機会がかなり限定されてしまいそうである。
 また,中古カメラ店等で「リコー・キン」が売られているのを見た記憶は,残念ながらない。したがって,どれくらいの価格で流通しているのか,さっぱり見当がつかない。あまりにも高価であれば,すなおに見送ってしまうだろうことは,いうまでもない。

それ以前に,重大な問題がある。これら2台のリコーフレックスは,どちらもすぐに撮影に使える状態にはないのである。「リコーフレックスVII型」の方は,レンズに目立つカビが生じている。「リコーフレックスVIIs型」の方は,ビューレンズが根元から緩んでおり,シャッター羽根は油まみれで動かない。どちらもあまり手間はかからないとは思うのだが,これに手をつけるには,少し落ち着いた時間が必要だ。

※リコーフレックス各機種の発売年や価格等は,株式会社リコーのウェブサイトによる。
  http://www.ricoh.co.jp/camera/cameralist/index.html


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