撮影日記


2007年07月06日(金) 天気:雨

キヤノン初代オートボーイも復活

「コンパクトカメラ」ということばがある。文字通り,小さなカメラという意味もたしかにあるが,どちらかというと,「簡単に操作できるカメラ」という意味を含めて使われる場合が多いのではないだろうか。たとえば,最近のコンパクトカメラにくらべれば,オートフォーカスが実現されたころのコンパクトカメラは,はるかに大きい。「小さい」という意味での「コンパクト」は,「一眼レフカメラにくらべて小さい」という意味くらいにとらえておけばいいだろう。
 「被写体にカメラを向けてシャッターレリーズボタンを押すだけ」で写真を撮ることができるカメラとしては,1962年のリコー「オートハーフ」が最初のものだと言えるのではないだろうか。リコー「オートハーフ」は,自動露出機構をもち,ゼンマイによってフィルム巻き上げとシャッターのチャージが自動的におこなわれる。ピントについては固定焦点になっているため調整は不要である。これこそまさに,シャッターレリーズボタンを押すだけである。その後,ピントを自動的に調整するオートフォーカス機構が組みこまれたカメラの登場は,1977年のコニカ「C35AF」(ジャスピンコニカ)まで待たねばならない。コニカ「C35AF」は,まさに歴史に残るカメラと言っていいだろう。
 オートフォーカスカメラは,コニカのあと,ヤシカやフジからも発売された。ところで,オートフォーカスカメラの前には,フラッシュ内蔵のカメラが登場している。1975年のコニカ「C35EF」(ピッカリコニカ)以後,ヤシカやフジからもフラッシュ内蔵カメラが登場したが,それらは3群4枚構成のレンズをもち,ピント調整は目測式のカメラであった。それに続いてキヤノンからもフラッシュ内蔵のカメラがはじめて登場する。そのキヤノン「A35Datelux」は,他社のフラッシュ内蔵カメラとは異なり,距離計に連動した4群5枚構成のレンズをもっているという大きな特徴がある,ピント調整が正確におこなえるカメラである。距離計とフラッシュを内蔵したカメラは,2002年の「秋月」(安原製作所)を除いて,ほかに例を知らない。

他社のカメラにくらべて高スペックな,キヤノン「A35Datelux」であるが,旧来のキヤノネットGIIIに似た印象の,ぱっと見た目には「古くさい」カメラだったかもしれない。そんなキヤノンは,フラッシュ内蔵カメラだけでなく,オートフォーカスカメラも他社に遅れて発売した。それが,1979年のキヤノン「オートボーイ」である。

当時の日本カメラショー「カメラ総合カタログ」(1980年, Vol.69)を見ると,「キヤノンは自動焦点だけでは満足しなかった」という宣伝文句が見える。「自動焦点」になにが加わったのか,それは,「自動巻き上げ」である。リコー「オートハーフ」以来17年,ようやくほんとうに「シャッターレリーズボタンを押すだけ」で写真を撮ることができるカメラが登場したのである。
 当然ながら,キヤノン「オートボーイ」は大ヒット商品になった。それを物語るかのように,カメラ販売店の店頭の「ジャンクカメラ」のなかに,その姿はよく見られたものである。キヤノン「オートボーイ」は,かような歴史的名機であるから,必ず1台は持っておきたいと頭の中ではわかっていたものの,そのあまりもの数の多さに,なかなか入手しようという気にはならなかったものである。そして,いざ,実際に入手しようと思うと,今度はそれを見かけることがめっきり少なくなったのである。
 そんなとき,とりあえず外見はきれいなジャンク品を見つけたので入手しておいた。電池を入れてシャッターレリーズボタンを押してみると,巻き上げのモーターの動きは力なく,数回,シャッターを動作させているうちに動かなくなってしまった。

その後,例によってしばらく放置していたのであるが,先日,リコー「MIRAI」が復活したこともあって,こちらにも手をつけることにしたのである。前面カバーをはずすと,シャッターレリーズボタンの近くに,モーターとギアが見える。ここをくるくる回してみることにした。

しばらく回していると,なにかひっかかっていたものがはずれたかのような「ぱちん」という小さい音が聞こえた。そこで電池を入れてシャッターレリーズボタンを押してみると・・・・・実に快調に動作をはじめたのである。こうして,歴史的名機キヤノン「オートボーイ」は復活したのであった。なお,キヤノン「オートボーイ」はシリーズ化し,その後,多くの機種が登場していることは,よく知られているであろう。


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