2007年03月19日(月) 天気:晴のち曇
標準ズームレンズの変遷(2)
前回の日記では,1968年,1973年,1974年の「日本カメラショー」の総合カタログを見てきたわけだが,標準ズームレンズはまだ,「特殊」で「高価」なレンズであるという位置づけだったと言えるだろう。間違いなく,単焦点レンズの方が,大きさ・重さの面でも,画質の面でも,価格の面でも,ズームレンズよりも有利だったのだ。画質の面については,ある程度,しかたないと割り切るとしても,ズームレンズの魅力は,「数本分の単焦点レンズのはたらきを,1本のレンズでまかなえる」ところにあるのだから,コンパクトさと価格の面では,もっとがんばってもらいたい,と思う人は,少なくなかっただろう。もっともこの当時には,「そうは言っても,ズームレンズの画質は悪い」という意見も,まだまだ有力だったものと思われるが。
日本カメラショーの総合カタログ(1975年,1976年,1977年)
今日は,1975年版の日本カメラショー総合カタログから見ていくことにしよう。
1975年ごろの標準・広角ズームレンズ (「カメラ総合カタログVol.54」,日本カメラショー1975年 より)
メーカー | レンズ | 重さ | 価格 |
Pentax | SMC Takumar-zoom 45mm-125mm F4 | ?g | 70,000円 |
Canon | FD 35mm-70mm F2.8-F3.5 | 575g | 105,000円 |
Konica | AR 35mm-100mm F2.8 | 1100g | 89,200円 |
Sun | Macro38mm-90mm F3.5 | 650g | 54,800円 |
Sigma | 39mm-80mm F3.5 | 520g | 38,000円 |
Tamron | 38mm-100mm F3.5 | 750g | 74,500円 |
Tokina | Macro zoom 35mm-105mm F3.5 | ? | 64,000円 |
Nikon | Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5 | 410g | 38,000円 |
Nikon | Zoom-NIKKOR 28mm-45mm F4.5 | 440g | 100,000円 |
Petri | Auto zoom 45mm-135mm F3.5 | ? | 43,000円 |
この年から,ペンタックスも標準ズームレンズをラインアップするようになってきた。また,サン,シグマ,タムロン,トキナーという,いわゆるレンズメーカーからも,標準ズームレンズが登場してきた。その中では,トキナーの35mm-105mm F3.5が目立つ存在だ。それまでの「標準ズームレンズの代表」と言う立場にあった,Zoom-NIKKOR 43mm-86mm F3.5では,ズーム比が2倍にとどまっており,広角側にも望遠側にも十分な効果が期待できなかったわけだが,35mm-105mmをカバーすることで「本格的な広角・望遠効果が得られる」ということが,セールスポイントにされたものと思われる。ただ,大きさや価格においては,「特殊なレンズ」という位置づけに変わるものはない。
また,サンやシグマのレンズの短焦点側は「38mm」や「39mm」となっている。これらも,「40mmよりも短焦点をカバーしている」ことをセールスポイントにしていたのかもしれない。このころまでの多くの標準ズームレンズでは,50mm前後から135mmくらいまでをカバーするものが主流だったように見えるので,「40mmよりも短焦点」というのは,かなりのインパクトがあったことだろう。
この年のカタログにおいて,特筆すべきことは,「広角ズームレンズ」の登場があげられる。広角側で28mmをカバーした,Zoom-NIKKOR 28mm-45mm F4.5の登場は,画期的な出来事だったはずだ。価格はかなり高価であるが,重量は43mm-86mm F3.5と大差ない点も,注目に値する。
ところで,翌年,1976年版では,キヤノンからも広角ズームレンズが登場している。
1976年ごろの標準・広角ズームレンズ (「カメラ総合カタログVol.57」,日本カメラショー1976年 より)
メーカー | レンズ | 重さ | 価格 |
Pentax | SMC Takumar-zoom 45mm-125mm F4 | ?g | 70,000円 |
Canon | FD 35mm-70mm F2.8-F3.5 | 575g | 105,000円 |
Canon | FD 28mm-50mm F3.5 | 470g | 105,000円 |
Komura | 38mm-90mm F3.5 | ? | 41,300円 |
Konica | AR 35mm-100mm F2.8 | 1100g | 89,200円 |
Sun | Macro38mm-90mm F3.5 | 650g | 54,800円 |
Sigma | 39mm-80mm F3.5 | 500g | 38,000円 |
Tamron | 38mm-100mm F3.5 | 750g | 74,500円 |
Tokina | Macro zoom 35mm-105mm F3.5 | 700g | 64,000円 |
Nikon | new Zoom-NIKKOR 43mm-86mm F3.5 | 450g | 43,000円 |
Nikon | new Zoom-NIKKOR 28mm-45mm F4.5 | 440g | 100,000円 |
Minolta | 40mm-80mm F2.8 | 560g | 107,000円 |
キヤノンの広角ズームレンズは,ニッコールよりも明るく,長焦点側の焦点距離も長い。価格は近いものがあり,スペック的にはたいへん魅力的だっただろう。地味ではあるが,ミノルタの40mm-80mm F2.8というのは,開放F値が2.8で一定である点が注目に値する。
このあと,1977年版では,一眼レフ用交換レンズとしてのズームレンズに,目立った動きはみられない。1976年版から,ポケットカメラ(110判)でズームレンズを搭載したカメラが登場しはじめたが,1977年版で登場したミノルタ「110ZOOM」は安価に入手できるなら,今でも少し気になるカメラではある。
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