2007年03月01日(月) 天気:晴
標準ズームレンズの変遷
かつて,一眼レフカメラには,「50mm標準レンズ」がセットで売られることが多かった。たとえば,「リコーのサンキュッパ」で有名なリコー「XR500」も,「RIKENON 50mm F2」(およびケース)とのセットで,39,800円だったのである。しかし,いつしか一眼レフカメラは,「標準ズームレンズ」がセットで売られるようになっている。場合によっては,さらに「望遠ズームレンズ」も含んだ「Wズームセット」もあたりまえのように見られる。
先日の日記で書いたように,「カメラ総合カタログVol.32」(日本カメラショー1968年)に掲載されている標準ズームレンズは,ニコン「Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5」だけであった(2007年2月11日の日記を参照)。ほかのメーカーから「標準ズームレンズ」が登場したのは,いつごろのことだろうか。また,一眼レフカメラがズームレンズとセットで売られるようになったのは,いつごろのことだろうか。「日本カメラショー」の総合カタログを見ながら,その変化を追いかけてみたい。
日本カメラショーの総合カタログ(1968年,1973年,1974年)
私の手元にある,もっとも古い日本カメラショーの総合カタログは,1968年版である。その次は,残念ながら1973年版まで,途中が抜けている。まず,1973年版から見てみよう。すると,「標準ズームレンズ」としては,次のものを見つけることができた。
1973年ごろの標準ズームレンズ(「カメラ総合カタログVol.46」,日本カメラショー1973年 より)
メーカー | レンズ | 重さ | 価格 |
Konica | AR 35mm-100mm F2.8 | 1100g | 83,900円 |
Tokina | 55mm-135mm F3.5 | ? | 38,100円 |
Nikon | Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5 | 410g | 32,300円 |
Miranda | AU Soligor 55mm-135mm F3.5 | ? | 32,800円 |
Miranda | Auto Soligor 55mm-135mm F3.5 | ? | 41,800円 |
Yashica | Auto Yashinon 45mm-135mm F3.5 | ? | 48,000円 |
キヤノン,タムロン,ミノルタのレンズが見られなくなったかわりに,トキナー,ミランダ,ヤシカのレンズが見られるようになった。詳細なデータがないのでたしかなことは言えないが,トキナー(構成不明)とミランダ(9群13枚)のレンズは,どちらもフィルタ径が62mmであり,同じものかもしれない。以前あった,キヤノンのFL 55m-135mm F3.5は,10群13枚なので,ここには直接の関係はないだろう。
ここで特筆されるのは,コニカのレンズである。これはズームレンズではなく,焦点距離を変えるとピントの位置も変わる「バリフォーカルレンズ」であるが,実用的な焦点距離をカバーし,F2.8の明るさがあることは魅力的である。もっとも,重く,高価であるため,実際に使用されることは少なかったかもしれない。この時代はまだ,ニコンの43mm-86mm F3.5は,小型軽量で安価な唯一の標準ズームレンズという位置づけを保っているようだ。
次に,1974年版を見てみよう。
1974年ごろの標準ズームレンズ(「カメラ総合カタログVol.50」,日本カメラショー1974年 より)
メーカー | レンズ | 重さ | 価格 |
Canon | FD 35mm-70mm F2.8-F3.5 | 575g | 100,000円 |
Konica | AR 35mm-100mm F2.8 | 1100g | 89,200円 |
Sigma | 45mm-135mm F3.5 | 880g | 52,000円 |
Tamron | 38mm-100mm F3.5 | 750g | 75,000円 |
Tokina | 55mm-135mm F3.5 | ? | 38,100円 |
Nikon | Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5 | 410g | 32,300円 |
Miranda | AU Soligor 55mm-135mm F3.5 | ? | 36,000円 |
Miranda | Auto Soligor 55mm-135mm F3.5 | ? | 42,000円 |
Yashica | Auto Yashinon 45mm-135mm F3.5 | 890g | 48,000円 |
キヤノンの35mm-70mm F2.8-F3.5は,高価ではあるが,大きさ的にもスペック的にも,現代のズームレンズになってきたといえるであろう。タムロンは,アダプトールレンズの時代になり,38mm-100mmというのは,よく使われる焦点距離をカバーしているわけで,これも実用的なレンズになってきたといえるのではないだろうか。シグマからも標準ズームレンズと呼べそうなものが登場しているが,これはヤシカのものと同じものかもしれない(どちらも10群15枚という構成である)。
これくらいまでズームレンズがそろってくると,「ズームレンズの時代」もかなり近づいてきたと言ってもいいのかもしれない。
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