撮影日記


2006年06月15日(木) 天気:雨

ミノルタ「AF-C」の不思議

ミノルタAF-Cは,オートフォーカスのコンパクトカメラとしては貴重な,フラッシュを内蔵していないカメラである。メーカー希望小売価格は,本体のみで¥42,000であり,オプションのフラッシュやデータバックを組みあわせると,当時の一般的なフルオートでクォーツデート機能ももったコンパクトカメラよりも,少し高価なものになる。
 オートフォーカスのコンパクトカメラでフラッシュを内蔵していないものには,ほかにKonica Hexarがある。これは「高級コンパクトカメラ」というカテゴリーで語られることが多い。MINOLTA AF-Cも,少し高級な位置づけのコンパクトカメラだったのだが,いわゆるバブリーな「高級」感をいたずらに追求したようなものではない。

MINOLTA AF-Cは,いわゆる「ケースレス」デザインになっている。レンズやファインダーを覆っている前面のバリアを開くことで,撮影可能な状態になる。このようなしくみは,ケースが不要になるだけでなく,レンズキャップをはずすのを忘れて撮影をするという失敗を防ぐ効果もある。また,コンパクトに持ち歩けるようにするために,フラッシュを取り外せるようになっている。これらは,OLYMPUS XAがつくりあげたスタイルの影響を受けたものだといえるだろう。
 ボディのデザインは,OLYMPUS XAやMamiya Uなどのように曲面を利用したものではない。しかし,どことなくユーモラスなスタイルをしている。それは,どことなくLomo LC-Aにも似ている(ということは,COSINA CX-1にも似ているということだ)。

オートフォーカスのコンパクトカメラは,多くのものが3群4枚構成のレンズを搭載している。Yashica Tなどが代表的といえるだろう。それに対してMINOLTA AF-Cは,6群6枚構成の「ぜいたくな」レンズを搭載している。これも,価格にみあったやや「高級な」路線に沿ったものなのだろう。

ところで,このMINOLTA AF-Cは,今週はじめに東京駅で時間が少し余ったときに,八重洲の地下街にある「カメラのきむら」でみつけたものである。さっそく見せてもらうことにした。
 シャッターを動作させてもらおうとしたが…動かない。電池が切れているのだろうか?電池ボックスを開いてみた。そこにはLR44型ボタン電池が2個ずつ2列に,4個入っていた。電池はいずれも,電池ボックスに貼られているシールが示すように「正しく」入っている。電池の電圧もチェックしていただいたが,問題はない。
 2列とも,「−」側が上を向いている。しかし,こういう電池の入れ方は,絶対に一般的ではない。店員さんも,不思議そうに,「ふつう,並列に入れたりしませんよね。」という。店員さんが,「ちょっと試してみましょうか。」と,片方の電池の向きを変えて,入れ直してくれた。すると,今度はちゃんとシャッターが動作した。
 いったい,どの段階で,電池ボックスのシールの向きが変わってしまっていたのだろうか?

左のように電池が入っているべきなのだが,電池ボックスのシールは右のように示していた。

シャッターが動くようになったので,ほかの動作も確認する。まずは,オートフォーカスが生きているかどうかである。カメラを近いところに向けたり,遠いところに向けたりしながら,シャッターを切る。近いところに向けたときにはレンズは大きく繰り出し,遠いところに向けたときにはレンズはほとんど繰り出さないなら,(精度はともかく)いちおう正しくオートフォーカスは動作していることになる。
 しかし,何度やっても,レンズは微動だにしない。
 店員さんも不思議そうにして,「レンズが動く量が小さいのかもしれないですね。」と,裏蓋をあけて試してくださった。その結果,レンズの後群だけが動いてピントをあわせるしくみになっていることがわかった。店員さんも「ふつう,この種のカメラだと,全群繰出式か,前玉回転式ですよね。リアフォーカスだよ,すごいなー。」と驚いていた。

ともあれ,いちおう動作していることが確認できたので,購入することにしたのである。

後群のレンズが移動して,ピントをあわせるようになっている。

結局,MINOLTA AF-Cの特徴としては,次の3つにまとめられる。
 1 コンパクトさを追求
 2 凝ったレンズを搭載
 3 リアフォーカス機構
 リアフォーカス式になっていることは,まったく知らなかったので,これには私も驚いたのであった。


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