撮影日記


2006年05月05日(金) 天気:晴

ズーム

「ズーム(zoom)」という言葉を聞いたことがない人は,いないだろう。では,「ズーム」には,どういう意味があるのだろうか。

「撮影日記」を読んでくださっている方であれば,きっと「カメラ」について,興味,関心が高いはずだ。であれば,「ズーム」というのは,「ズームレンズ」の意味だと理解しているのではないだろうか。「ズームレンズ」は,「連続的に焦点距離を変えることができるレンズ」である。そのようなレンズを搭載したカメラには,「ズーム」という名称がついていることが多い。たとえば,1963年「ニコレックスズーム35」,1978年「フラッシュフジカズーム」,1986年「ペンタックスズーム70」などいろいろある。
 しかし,辞書を見てみると,「ズーム」という言葉の意味としては,「(飛行機が)急上昇する」「(物価が)急にあがる」などが,先に出てくるのである。そして,「(映画などで)画像が急に拡大・縮小する」という意味が出てきている。
 最近の家庭用ビデオカメラやコンパクトディジタルカメラでは,ズームレンズが内蔵されていることがあたりまえであり,製品名にわざわざ「ズーム」がついていることは稀である。しかし,カタログ等では「ズーム比 ○○倍」という数値は,必ず宣伝されている。この場合の「ズーム」には,「連続的に焦点距離を変える」というニュアンスはかけらも含まれておらず,本来の「画像を拡大したり縮小したりできる」という意味が語られているのであろう。

レンズつきフィルムのコーナーを眺めていたら,「スナップキッズ ズーム」という製品が目にはいってきた。フィルムの使用期限が近いせいか,非常に安く売られているので1つ買ってみた。パッケージには「1.4倍」という数値も記載されている。たとえ1.4倍であっても,レンズつきフィルムに「ズームレンズ」が搭載されるというのは,かなりすごいことではないか?と思うわけである。
 しかし,よく見てみると,「ズームレンズ」が搭載されているのではなく,33mmレンズと44mmレンズが切り替えられるというしくみが搭載されているのであった。「スナップキッズ ズーム」の「ズーム」は,「ズームレンズ」の意味ではなく「ズームアップ」の意味で使われているようだ。
 「ズームレンズ」の搭載が一般化する以前のコンパクトカメラには,レンズを切り替えたり,テレコンバータを挿入したりして2つの焦点距離を選択できるタイプの製品があった。これらのカメラには「テレ」という名称がついていることが多かった。そういう習慣的なことを考慮すれば,「スナップキッズ ズーム」は,「スナップキッズ テレ」などと名乗ってくれた方が,わかりやすいだろう。「ズーム」を名乗っていることは,やや誇大表現ではないかという気がするのであった。さらに,33mmと44mmであれば,その比は1.33倍である。これを「1.4倍」と称するのも,やや誇大表現ではないかという気がするのであるが,どちらもそれほどの問題ではないのであろう。


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