2006年01月12日(木) 天気：曇
ニコン様の重大発表
〜３５ｍｍ判カメラの大幅な整理〜
2006年１月11日は，カメラの世界において，記念すべき日になるかもしれない。この日付で，ニコン様は，重大な発表をなされた。その内容は，ニコン様のカメラ事業からの事実上の撤退を示したものである。その背景にあるものは，カメラ関係の市場の縮小と，ディジタルカメラ事業への今後の経営資源の集中である。その概要は，翌日の各新聞でも報道され，ニコン様の重大な発表が人類に与える影響の大きさを再認識することとなった。
（http://www.nikon-image.com/jpn/news/info/info060111.htm）
さて，この「撮影日記」をいつも読んでくださっておられる方々にとっては，すでによくご存知のこととは思うが，ニコン様の発表の概要をここでも簡単にまとめておく。
- 「Ｆ６」以外のカメラの生産を終了。
- 「Ｆ６」「ＦＭ１０」以外のカメラの販売は，在庫がなくなりしだい終了。
- マニュアルフォーカスの交換レンズは，ごく一部を除き生産を終了し，在庫がなくなりしだい販売を終了。
- 大判カメラ用レンズは全品の生産を終了し，在庫がなくなりしだい販売を終了。
- 引き伸ばし用レンズは全品の生産を終了し，在庫がなくなりしだい販売を終了。
2004年，ニコン様から，一眼レフカメラの最上位モデル「Ｆ５」の後継機である「Ｆ６」が発売された。これが，最後のニコン様のカメラとなるようだ。そして，現状を見る限り，ニコン様からあたらしいカメラが登場する可能性は，きわめて低いと思われる。すなわち，「Ｆ」にはじまった一眼レフカメラのシリーズは，「Ｆ６」までとなり，「Ｆ７」の登場はないということになる。
今回の件に関して，知人の１人は，次のような考えを示してくださった。
「まだしばらく部品の供給に困らないように，『Ｆ５』を『Ｆ６』にモデルチェンジしたと考えることができる。」
「『Ｆ６』はファインダーを固定式にした点など，コストダウンを意識した面も強く感じられるが，それも，できるだけ長く生産を続けるための手段ではないか。」
さて，この重大な発表によって，どれだけの人が，どれだけの影響を受けるだろうか。実際，困る人はさほど多くないと予想される。まず，今後とも，あたらしくカメラを買ってまでフィルムを使う人は，それなりにこだわりのある人と考えられる。そういう人に対応できる「Ｆ６」は，生産・販売が継続される。そして，「Ｆ６」の機能をフルに活かすことができるオートフォーカス用のレンズは，継続して生産・販売される。ディジタル一眼レフカメラとレンズが共用できるメリットがここにある。そして，あまりお金をかけずに写真を楽しみたい人には，豊富な中古商品がある。中古商品が豊富な理由としては，ニコン様が人気商品だったということがあげられるだろう。そして，丈夫で高性能なために，多少古くなっても十分に実用的であることも考えられる。そして，「高級品」だったために，中古品としてもある程度の価値があり，豊富に流通するようになったと考えることができる。
つまり，どうしてもフルマニュアル式の高級機やマニュアルフォーカスレンズの新品を今後も買っていきたい，という人以外は，実はもうほとんど困ることはないのである。今まで，どうしてこれらの製品を継続して供給してこられたのが不思議なくらいであるが，結局は，ディジタルカメラの急激な普及がすべての原因と考えられるだろう。キヤノン「ＥＯＳ−５Ｄ」の登場によって，キヤノンに乗り換えるニコンユーザも少なかっただろうと考える人がある。将来性のあるディジタルカメラの開発に集中したいという，ニコン様のお考えがあるものと思われる。また，この１年間のニコン様のカメラ販売台数は14万台と見積もられているようで，まだまだ相当な数の需要があるようにも見える。しかしこの数字は，昨年のおよそ半分，一昨年の10％強の数字であり，急激な需要の低下があることは間違いない。カメラの販売の完全な終了ではなく，こだわりのあるユーザに対応のできる最上位モデル「Ｆ６」と，フルマニュアル式でＯＥＭ品の「ＦＭ１０」を残してくださるだけでも，この現状を鑑みれば，ありがたいことととらえるべきだろう。マスコミによる報道では「撤退」という単語もよく見られたが，ごく一部の製品は継続して生産されるわけだし，オートフォーカスレンズについては，今後も新製品の投入が期待できる。「撤退」という衝撃的な単語が使われたのは，事態をつねに煽ろうとするマスコミの特性によるものと考えた方がいいだろう。あるいは，ニコン様にたいへんお世話になってきた記者たちの感傷が入っているのかもしれない。
ニコン様の高い評価を不動のものにしたニコンＦ様のお姿。
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撮影日記