撮影日記


2006年01月10日(火) 天気:晴ときどき曇

シャッターレリーズボタンのストローク

機械式のカメラには,電子式のカメラにはない,なにか「心」のようなものがあると思わないだろうか。なにか,機械が一生懸命に与えられた役割を果たそうと,けなげに動いているように感じられる。手にもつと,ひんやりとした金属特有の冷たさが伝わってくるが,そこにはなにか「暖かみ」を感じることができるだろう。そうだ,機械式カメラは「生命体」にも通じるなにかがあるに相違ない。
 写真撮影をするわけではない夜,自分の部屋で,フィルムを入れていないカメラのシャッターを切って,なんとなくくつろいでいる人も多いのではないだろうか。少なくとも,この「撮影日記」をいつも読んでくださっている人の大半は,そういう経験があるか,少なくともそういう人の気持ちがわかるはずだ。
 だから,というわけではないが,今夜も「マミヤ35S-II F1.9」のシャッターを切ってみた。いや,それには意味がある。落ち着くためとかいう理由ではない。先日,「謎のガラス片」を取り除いた後,きちんとシャッターを切ることができるようになっているかどうか,確かめるためである。

巻き上げレバーを回す。フィルムカウンタがカリカリカリと音を刻む。巻き上げレバーが止まるところまで巻き上げて手を離すと,巻き上げレバーが戻る。よしよし,ここまでは正常だ。シャッターレリーズボタンを押しこんでみる。シャッター速度は1/125秒に設定してある。

チャッ

シャッターは無事に切れた。これを何度か繰り返す。うむうむ。快調である。機械がスムースに動くというものは,本当に気持ちがよい。ファインダーを覗く。距離計も,よく見える。これで,ピントリングがもう少し軽く動いてくれたならば,まったく問題はない。少しでも動きがなじまないものかと,ピントリングを何度も往復させてみる。そして,ふたたび巻き上げてシャッターレリーズボタンを押した。

空振りである。シャッターが切れない。その後,巻き上げはできるので,巻き止めの解除は正常におこなわれ,シャッターを切る動作だけが空振りということである。ふたたびピントリングを動かして,巻き上げ,シャッターレリーズボタンを押した。今度は,シャッターが切れた。
 どうやら,ピントリングが最短撮影距離付近にあるときは,空振りするようである。
 このカメラは,ピントリングの回転によって,シャッターユニットを含むレンズ全体が前後に移動してピントを合わせる,全群繰り出し式になっている。最短撮影距離のときは,本体からシャッターユニットまでの距離がもっとも遠くなっている。つまり,シャッターレリーズボタンからの動きが,届いていない状態が考えられる。

そこでふたたび,トップカバーをはずしてみた。

矢印で示した部分を,シャッターレリーズボタンが押し込むことによって,巻き止めの解除とシャッターを切る動作がおこなわれる。そして,この部分は,ネジになっている。試しに,この部分が長くなるようにネジを回転させ,元通りに組み立てた。
 ピントリングを最短撮影距離にして,巻き上げ,そしてシャッターレリーズボタンを押しこんだ。

チャッ

シャッターは無事に切れた。ピントリングを何度も往復させながら,シャッターレリーズボタンを押しこむことを繰り返した。今度は,どこにあっても,スムースにシャッターが切れる。ようやく,ちゃんと使える状態になったわけだな。ピントリングの位置,すなわちシャッターユニットがボディからどれだけ離れているかによって,やはりシャッターレリーズボタンのストロークが違うことが,あらためて感じられた。

何度もピントリングを往復させたのだが,やはりこの動きは固いまま,さほど変化が起こらないのであった。


← 前のページ もくじ 次のページ →