撮影日記


2006年01月08日(日) 天気:晴ときどき曇

謎のガラス片

新年早々に動かなくなった,「マミヤ35S-II F1.9」を調べてみることにした。症状は,巻き上げがかたまって動かない,というものである。
 このカメラは,レンズシャッター式のカメラである。そして,巻き上げレバーの操作で,フィルム1コマの巻き上げと,シャッターのチャージができるようになっている。あたりまえの機能と思われるかもしれないが,巻き上げとシャッターのチャージが連動していないカメラは,たくさんの例がある。「アーガスC3」のように,巻き止めをいちいち解除しなければ巻き上げられないようなカメラも珍しくない。

「マミヤ35S-II F1.9」は,別々に操作する必要があった巻き上げと,レンズシャッターのチャージを連動させるというメカニズムをもっている,進んだカメラだったのである。しかも,レンズのヘリコイドは,内蔵した距離計と連動している。巻き上げレバーや,巻き上げられるフィルムは,本体となる暗箱部分にある。シャッターユニットは,ヘリコイドによって前後に動くレンズ鏡胴部分にある。巻き上げレバーの動作によって,離れたところ(しかもその位置は移動する)にあるシャッターをチャージするためには,てこやギアなどを利用した,なんらかのリンク機構が存在するはずである。
 巻き上げが動作しなくなったのは,そこにトラブルが発生したのではないかと想像した。レンズのヘリコイドが固かったのは,そのリンク機構に変形などのトラブルが発生し,それと接触することに原因があったのではないか,とも想像できる。この部分を調べるには,レンズ鏡胴をはずす必要があるだろう。そして,そのあとの組み立ては,少々面倒なことになるだろうと考えられた。

そこで,「マミヤ35S-II F1.9」の,まずは分解しやすそうなところから,いちおう見てみることにした。分解しやすそうなところというと,トップカバーをはずすことである。一般的に,巻き上げレバー,巻き戻しクランクと,数本のネジをはずせば,トップカバーは簡単にはずれて,内部のようすを観察することができる。
 巻き上げレバーの回転する中心部には,2つの小さな穴があった。これは,「カニ目回し」とよばれる道具を使えば,簡単にはずすことができることを意味している。フィルムカウンタもこの部分に組みこまれているが,「カニ目」をはずすと,すべてまとめて,簡単に取り外すことができた。再組み立ても,容易なつくりである。巻き戻しクランクも,中心部のネジを1本はずすだけで,簡単にはずすことができた。いわゆるマニュアルカメラには,裏蓋開閉のロックが巻き戻しクランクを引き上げることによるものが多い(これは,誤って裏蓋が開くというトラブルを防ぐ効果があるものと思われる)。その場合,裏蓋をあけたまま作業をする必要があったりするという面倒があるのだが,このカメラにはそういう問題はなく,単純にはずせばよいのである。あとは,左右のネジを1本ずつはずせば,トップカバーは簡単にはずすことができる。そして,ホットシューもないので,カメラ本体とトップカバーを結ぶ,細い導線などもなく,気を使うところはほとんどない。

このカメラでトップカバーを開くときに,唯一,気をつけなければならないことは,シャッターレリーズボタンが落ちてくることである。ついついこぼしてしまったシャッターレリーズボタンを拾いあげ,これが本来,どこにあるべきなのか見てみようとした。
 そこには,不思議なものが存在していた。

巻き上げが動作しなくなっていた原因は,このガラス片がひっかかっていたことであった。このガラス片を取り除くと,巻き上げもシャッターレリーズも,問題なく動作する。
 それではいったい,このガラス片はどこから来たのだろうか?
 ファインダー部分のガラスが割れた破片である,という可能性が高いだろう。しかし,その部分のガラスに,割れた形跡は見つからない。そうなると,このカメラがかつて修理されたときに,紛れこんだものとしか考えられないわけだが・・・・・・。


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