撮影日記


2005年12月06日(火) 天気:雨のち曇

35mm判フィルムを使うとき

最近,個人的に35mm判ポジフィルムの消費量が減っている。品質を考えれば中判ないし大判フィルムを使うのがベターだろう。そこの記録された情報量の魅力は大きい。一方,お手軽さを考えればディジタルカメラを使うのがベターだろう。日常的な記念写真を撮るような場合には,たとえばニコン「D70」様のような最近のディジタルカメラで,不満を感じることはない。
 それでは,35mm判ポジフィルムを使うことに魅力がないのか,といえば,そんなことはない。ポジフィルムを透過光で見るときの質感は,ディジタルカメラでは得られない体験だろう。また,フィルムという,画像が記録された「物」が残るというのは,大きな魅力だ。ディジタルデータと言う,存在の不確かさに対する不安は,なかなかぬぐいされない。また,ディジタルデータは機器を介さなければ画像を確認することができないのに対し,ポジフィルムには「そのまま」で画像の内容を確認できるという大きな利点がある。
 結局,今まで撮ってきたテーマにおいて,「ディジタルカメラでなくても撮ることのできる場面」で,「中判や大判では対応しにくい」場合に,35mm判ポジフィルムを使うことになるのである。

35mm判ポジフィルムで,いまだにぼちぼちと撮り続けているものに,「可部線」がある。「三段峡」など,芸北地方の風景を撮りに行っているうちに,その道中で見られる「可部線」を少しずつ撮っていたところ,非電化区間の「廃止」案が浮上してきた。そこで,「可部線」を集中的に撮る時期があった名残で,残っている電化区間もぼちぼちと撮り続けているのである。つまり,私は「鉄」ではない。
 「可部線」の非電化区間は,35mm判だけでなく,中判や大判フィルムでも撮ってきた。非電化区間は,列車の本数が少なく,あるシーンに集中して取り組むことになるため,中判や大判の方が扱いやすいのである。一方,電化区間においては,なかなか撮りたいシーンを絞りこむことができずにいる。そこで,取り回しのよい,35mm判一眼レフの出番が増えてくることになる。
 そんな「可部線」電化区間を撮るのに,今,もっとも似合っていると感じている機材は,以下のような組み合わせだ。

ボディ:ニコンF−301様
レンズ:Ai NIKKOR 35mm F2S様,Ai NIKKOR 135mm F2.8S様

F−301様は,もともと目だたない存在だったと思う。AEを主体としており,ワインダーを内蔵したプラスチック外装のボディは,ニコン様らしくないカメラであった。同時期に,ニコンFM2様という,いかにもニコン様らしいカメラが(ほぼ同じ価格で)発売されたことも,少なからず影響があっただろう。また,F−301様発売の直後に,ほぼ同じボディでAF機構を搭載したF−501AF様が発売されたことも,F−301様の存在を目立たなくするのに,大きくはたらいたものと感じられる。
 しかし,F−301様は,MFのニッコールレンズ様でもプログラムAE撮影ができる,数少ないカメラの1つである。電源は,底部に単4乾電池を4本収めるようになっており,グリップ部が極端に大きくないので,カバンへの収まりもよい。ファインダーも,見やすくできている。プレビュー機構がない点や,三脚のネジ穴がボディの端のようにある点は,このカメラは被写体とじっくり向き合うタイプのものではないことを物語っているように感じる。しかし,35mm判カメラのもつ「機動性」を前面に出して考えるなら,実に手ごろな扱いやすいカメラであることに気がつくであろう。しかし,不人気機種のためか,中古カメラ店でのお布施額も,かなり低めに設定されている傾向にあった。
 また,上にあげた2本のレンズは,どちらも,ニッコールレンズとしては,定番中の定番レンズといえるだろう。その描写は,開放から文句のつけようもなくシャープで,変なクセも見られない。ズームレンズとくらべて,小型で明るいという魅力も大きい。これらだけの身軽な装備で,ローカル線の日常を,気が向くままに撮っている。また,これらを撮るには,このくらいの焦点距離域のレンズがちょうど似合っている。

Nikon F-301, Ai NIKKOR 135mm F2.8S, EB

最後に,念のために書いておくが,私は「鉄」ではない。あくまでも,身近な風景の1つとして撮っているのである。


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