撮影日記


2005年11月13日(日) 天気:晴

ギンナンのかほり

桜前線は,南から北へ,低地から高地へと移動していく。一方,紅葉前線は,北から南へ,高地から低地へと移動していく。三段峡の紅葉は,先週あたりがピークだっただろう。今週あたりからは,低地も見ごろになりつつある。
 広島市内付近で見られるサクラは,ソメイヨシノが多い。これは,発芽できる種子をつけることができず,もっぱら接木(つぎき)によって,人為的に増殖させられている。つまり,すべてのソメイヨシノは,クローンであり,まったく同じ性質をもっているという。そのため,ある一定の地域内のソメイヨシノは,一斉に開花し,一斉に花を終えるという傾向を示す。それが,ソメイヨシノの魅力とも言えるだろう。
 ところで,イチョウは,雌雄異体の植物である。精子(のもとになる花粉)をつくる雄花だけを咲かせる雄株と,種子の実る雌花だけを咲かせる雌株とにわかれている。さまざまな性質をもつ個体どうしで交配がすすむため,個々のイチョウは,それぞれ少しずつ性質が違うようだ。そのためか,同じ場所に生えているイチョウでも,黄葉する時期が,微妙に違うような気がする。

例年写真を撮りに行っている筒賀神社の大イチョウの木は,そういう個体差の問題なのか,それがあまりに大きいためか,その周辺のイチョウにくらべて,黄葉する時期が少し遅いように感じている。だから,そろそろ見ごろ,撮りごろだろうと考えて,訪れることにした。
 ところで,出発が遅かったせいもあるが,国道191号線は混んでいた。まだまだ芸北方面は紅葉狩りが楽しめる状況だし,各方面でさまざまなイベント等もおこなわれていたようである。また,台風によるがけ崩れの復旧工事のための片側交互通行規制区間も随所に残っており,そういう箇所で小規模な渋滞が発生していた。戸河内ICの交差点では,右折して三段峡方面に向かうクルマが多く見られたが,直進して筒賀方面に向かうクルマは,まだまだ少数派だったようだ。

筒賀神社の大イチョウは,期待通りの姿を見せていた。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 50mm F6.3, E100VS

大イチョウは雄株であり,ギンナンをつけることはない。社殿の奥にあるイチョウは雌株であり,こちらは盛大にギンナンをつける。ちょうど,ひとしきりギンナンが降ったあとでもあり,上記の写真を撮った位置の周辺は,散乱したギンナンの香りに包みこまれていた。


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