撮影日記


2005年10月05日(水) 天気:雨のち曇

ハーフサイズカメラを語ってみる(2)

ハーフサイズカメラというと,1960年代に大ヒット商品となった,オリンパス「ペン」シリーズや,リコー「オートハーフ」シリーズが有名だ。現在でも,単に「ハーフサイズカメラ」といわれるときには,これらのカメラを指していることが多いと感じる。
 かつて,カメラは,だれにでも扱えるようなものではなかった。撮影のためには,ある程度の知識や技術が必要だったし,カメラそのものも非常に高価なものであった。やがて,カメラの自動化などによる「簡便化」や大量生産などによる「低価格化」がすすみ,しだいに多くの人がカメラを使うことができるようになっていった。「低価格化」の動きは,1950年代の,いわゆる二眼レフブームからあらわれていたということができるが,1960年代のハーフサイズカメラブームは,カメラの「簡便化」と「低価格化」をさらに一気に推し進めた感がある。
 したがって,オリンパス「ペン」やリコー「オートハーフ」などは,「第2世代のハーフサイズカメラ」と呼んでみたい。これら以前の「マーキュリー」などは,「第1世代のハーフサイズカメラ」ということになるだろうか。

第2世代のハーフサイズカメラは,「低価格化」「簡便化」のほかに,「小型化」という結果ももたらした。
 低価格化について,みてみよう。第2世代の最初のカメラといえるものは,初代オリンパス「ペン」で,発売当時の価格は6000円であった。当時のほかの代表的なカメラの価格とくらべてみると,次のようになる。

オリンパスペン 6000円ハーフサイズ
ヤシカ3511550円35mm判レンズシャッター機,ヤシノンF2.8
マミヤスケッチ11600円レンズシャッター,スクエアフォーマット
ミノルタSR−136000円一眼レフ,ロッコール55mm F2付
ニコンF67000円一眼レフ,ニッコール50mm F2付
オリンパスペンの価格は,朝日ソノラマ「クラシックカメラ専科No.55」(2000年)の「カメラ設計残酷物語」(p.124)による。
 そのほかのカメラの価格は,産業経済新聞社「サンケイカメラ 1959年9月号」掲載の各社の広告による。

次に,簡便化について,みてみよう。初代オリンパス「ペン」は,露出調節はマニュアル操作で,ピント調節は目測式であった。機能的には,第1世代のハーフサイズカメラと同等である。第2世代のハーフサイズカメラの「簡便化」については,1962年発売のリコー「オートハーフ」(発売当時の価格12000円)を代表とするべきだろう。
 リコー「オートハーフ」のシリーズは,ゼンマイを利用した自動巻上げ,セレン光電池を利用した自動露出が採用されており,ピント調整についてはパンフォーカス(固定焦点)というしくみを採用している。その結果,「ボタンを押せば写る」というカメラが実現された。

RICOH AUTOHALF S
1965年発売の,リコー「オートハーフS」。発売当時の価格は13800円。
価格は,株式会社リコーのウェブサイトによる。

次に,カメラの大きさをくらべてみよう。下の画像は,1958年のオリンパス「ワイドII」と1965年のオリンパス「ペンD3」を並べたものである。

左 オリンパス「ワイドII」,右 オリンパス「ペンD3」

第2世代のハーフサイズカメラは,「簡便化」「低価格化」「小型化」を達成するために考えられ,そのコンセプトが広く受け入れられた結果,大流行に結びついたものであると,ここでは結論づけておきたい。実際に,オリンパスやリコー以外のメーカーからも,さまざまな工夫が取り入れられた,「簡便」で「低価格」で「小型」なハーフサイズカメラが登場している。これらを入手し,いろいろと使ってみるのも楽しそうである。


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