撮影日記


2004年02月29日(日) 天気:雨のち晴

ベスト判は扱いにくい

クロアチア製のフィルム

「寡占」という言葉がある。辞書によれば,「少数の供給者が市場を支配し,互いに競争している状態」をいう。フィルムの業界は,少なくとも日本国内においては,「寡占」と言えるのではないだろうか。カメラ店の店頭にならぶフィルムは,そのほとんどがフジの製品であり,あとはコニカとコダックの製品が見られる程度である。日本国内で流通しているフィルムとしては,ほかにはドイツのアグファ(古くから写真に凝っている人にとっては,憧れのブランド的なイメージがあるらしい),イギリスのイルフォード(モノクロ写真に凝っている人には,根強い愛用者があるらしい)などがある。さらに,大手の販売店に行くと,フォルテや3Mブランドのものを見かけることがたまにある。しかし,これらの流通量は,フジ,コニカ,コダックの3社にくらべると,ごくわずかのものと思われる。
 ところが,クロアチアのフォトケミカ社のフィルムが,ひそかに日本国内で話題になっている。それは,ほかのほとんどのメーカーが,製造・販売をやめてしまった,127(ベスト判)フィルムを発売していることが原因のようだ。それは,「efke R100」というモノクロフィルムである。東京や大阪のクラシックカメラ専門店などで,ときどき販売されているようである。
 昨年末,大阪のある店でこのフィルムが売られているのを見た私は,とりあえず2本だけ買ってみた。1本580円なので,一般的なモノクロフィルムにくらべると高い(ちなみに,通信販売などでは,1本1000円以上で売られていることもある)。とりあえず2本だけにしたのは,私はこのフィルムを使うカメラを1台しか持っていないからである。それも,いわゆる「おもカメ」だからである。

一般的なモノクロフィルムなら

「efke R100」は,普通のモノクロフィルムである。したがって,一般的なモノクロフィルムの現像液で現像できるはずである。しかし,標準とされる現像時間がわからない。まあ,品質を問わねば,「適当」に処理しておけばいいだろう,と開き直ることにした。そして,箱を開いてみると,その中に,標準的な処理時間が記載されていた。以下に,その内容を示す。

Developer
(20℃)
Development
Time (min)
Speed Obtained (ISO)
DaylightArtificial Light
efke FR-34100100
efke FR-1410160100
efke FR-164100100
Ilford ID-118100100

処理液としては,「efke」ブランド以外のものでは,イルフォードの「ID-11」だけが記載されていた。ID-11なら,たいてい常備しているので,これで処理してみることにした。現像液は確保できたので,次は,現像タンクの準備である。私が使っているものは,「キング」の「3ロールタンク」で,最大で35mm判用のリールを3個まで処理することができる。このタンクで使う2B(いわゆるブローニー判)用のリールは,大きさを3段階に変えて使うことができるようになっている。幅を最大にすると2B,幅を最小にすると35mm判となる。そして,中間の幅のときが,ベスト判用ということになっている。
 これで,現像するための道具もそろったと安心したのも束の間。このリールは,「ベルト」を必要とするタイプである。35mm判用や2B用のベルトはそれぞれ何本か用意しているが,ベスト判用のベルトを持っているはずがないのである。

写真用品といえば浅沼商会・・・かな

「キング」ブランドの写真用品を扱っているのは,浅沼商会である。この会社は,かなり古い時期から,写真用品を販売している会社のようである。とりあえず,浅沼商会のウェブサイトを閲覧してみた。「3ロールタンク」は現行品のようである。リールは35mm判専用と,2B/35mm判兼用の2種類がラインアップされている(2B/ベスト/35mm判の兼用じゃないのか?)。また,ベルトは,35mm判用と2B用のみがラインアップされている。古い「写真用品ショーカタログ」を見返してみると,以前はベスト判用のベルトも掲載されていたが,現在は掲載されていない。さすがに製造・販売が終了したのかと思わざるを得ない。そこで,浅沼商会に,ベスト判フィルムを現像する道具がなにかないか,問い合わせることにした。その結果,「ベスト判用ベルトは,カタログには載っていないが,在庫がある。」ということが判明したので,早速注文することにした。
 カタログから落ちているせいか,取り寄せにはけっこう時間がかかったが,ようやく,ベスト判フィルムを現像する道具がそろったのである。早速,「ドナルドダックカメラ」の試し撮りをしたフィルムを現像することにした。
 ベスト判フィルムのスプールは,たいへん細い。そこにやや薄手のフィルムが固く巻きつけられている。したがって,その巻きクセは,非常に強い。リールに巻きこむのも,容易ではない。現像結果を見ると,かなり強く巻きつけたせいか,ベルトの跡がところどころにつくような「失敗」に終わってしまった。ベスト判フィルムの現像には,かなりの慣れが必要かもしれない。


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