撮影日記


2003年10月23日(木) 天気:はれ

可部線存続問題に思う(5)

廃線跡の利用案

可部線廃止予定区間沿線の4つの町村(戸河内,筒賀,加計,湯来)は,廃止後の跡地利用について案をまとめ,2003年10月22日にJR西日本と話し合いをおこなったという報道があった(2003年10月23日付け中国新聞)。この報道によると,広島市と加計町の境界(安野付近)と加計駅の間は遊歩道として,加計駅と三段峡駅の間はサイクリングロードとして整備する方針が示されている。沿線自治体が,可部線(安野−三段峡)を鉄道として存続させることを否定した,ということが決定的になったといえる。
 もっとも,現時点では,この計画が実行されると決まっているわけではない。それは費用の問題である。報道によると,自治体はこの事業に対して「20億円」の協力金をJR西日本に求めているが,JR西日本からは「5億円+α」という回答しか得られていない状態である。
 ちなみに,その会合に出席した自治体は,戸河内,筒賀,加計の3町村であり,湯来町はすでにこの問題についてはほとんど関心を示していないことがうかがえる。

遊歩道やサイクリングロードの意味は

廃止になった鉄道の跡地を,遊歩道やサイクリングロードとして整備した場合のメリットは,どういうものがあるだろうか。たしかに国道191号線など,この区間の幹線道路は,ごく一部を除いて歩道が設けられていないなど,自動車以外のものに対してはまったく優しくない道路である。したがって,歩行者が安心して歩くことのできる道を確保することは,一定の価値はあるだろう。人に優しい空間が増えることそのものは,むしろ高く評価することすらできることである。
 しかし,線路は集落から離れたところを通っていることもあるので,その歩道全体がこの地域の人たちにとって有効に活用されるかどうかについては,大きな疑問が残る。さらに大きな問題として,トンネルや鉄橋の存在がある。これらも歩道としてきちんと整備するのであれば,その耐久性,利用者の安全性などの面で,相応の出費が永続的に必要になることが予想される。これらのトンネルや鉄橋は,十分なコストをかけてきちんと整備し維持しなければ,結局,歩道は寸断されたものとなり,「歩行者に優しい道」としての機能を果たすことはできない。
 沿線自治体が「20億円の協力金を求める」ということは,これらの「道を整備する」という事業は,全体で20億円以上の大きな公共工事になるということだろう。このような大きな公共事業が発生することは,すなわち「一時的な好況」が創出されることである。自治体は,この「一時的な好況」を選択した,ということだろうか?

広島市の対応は

前述の案をまとめたのは,可部線廃止予定区間(可部−三段峡)の沿線自治体のうち,4町村である。沿線自治体としてはもう1つ,広島市がある。この報道によれば,広島市は「すぐには線路を撤去しない」という態度をとっているとのことである。
 その背景には,可部から河戸までの電化について,交渉を続けたいというものがあるようだ。そして,河戸から先の区間については,沿線住民の要望を考慮して決める(現状では,道路の拡幅が強い要望のように感じられる)とのことである。
 広島市以外の4町村は,沿線住民のどのような要望を考慮して,こういう案をまとめるに至ったのであろうか?


← 前のページ もくじ 次のページ →