撮影日記


2003年08月08日(金) 天気:台風

可部線存続問題に思う

やはり鉄道は必要ないものなのか?

JR西日本による可部線の運行は,今年の11月末まで,残り115日となった。この廃止により,たちまち困る人も少なくないわけで,6月には,代替バスの案が発表されている。一方で,新たな運営形態を模索する動きも,進められているようだ。
 単純に「商売」としてのみの視点で考えた場合,いまやローカル鉄道の運営は,「儲かる」事業ではない時代になっていると思われるのが,一般的な見方であろう。また,多少の「赤字」という負担が発生しても,公共の福祉のために必要な投資と認められる範囲であれば,その負担を覚悟してでも存続させる価値は発生するだろう。
 今日まで,中国新聞において,可部線の「再生」に関する提言が連載されていた。まだまだ,いろいろな人が,鉄道の維持に向けて,さまざまな研究や努力をしていることが十分にうかがえる内容であった。

都市近郊の路線として

先の連載における1つのポイントとしては,可部線の廃止対象区間の一部が,大規模な住宅団地に近いところを通っていることに注目をしていることにある。これは地形図などを見ると一目瞭然なわけであるが,それらの住宅団地は,可部線の存在を意識しているようなつくりになっているとは思われない。住宅団地と最寄り駅は,少々距離があり,その間の道は,夜でも安心して歩くことができるような状態ではないところもある。
 逆に,そのような,連絡道路を少し整備したりすることで,可部線の役割が蘇る可能性があるということが言えるわけだ。また,朝のラッシュ時間帯は,どうしても道路の混雑が激しく,マイカーやバスによる移動には,時間がかかる。これを解消するためには,途中の道路の車線を増やすなどの対策が必要と考えられているようだ。たしかに,一部に,交通が集中して流れが悪くなる原因になる交差点は存在するので,そういう対策の必要な部分もあるだろう。
 しかし,最終的に,朝は市内中心部まで,ずっと混雑は続くのである。途中をいくら改良しても,トータルでは「無意味」である。市内中心部へ流入する車の絶対量を減らすことが,最大の渋滞対策と言えるだろう。東京都などでは,ディーゼル車の排出物に関する規制が進められているが,都心部への車両の乗り入れの制限も検討しているという。結局,それがもっとも効果的な対応だからである。そのためには,鉄道のような,大量輸送の可能な交通機関を維持しておくことも必要になってくるだろう。

問題は夜だ

現在でも朝のラッシュ時間帯については,可部線の方が優位な状況にある。問題は,夜である。
 朝は,通学者も通勤者も,似たような時間帯に移動することになるだろう。一般的に,通学者の方が1時間ほど早いと思われるが,1時間以上かけて通勤する人がいれば,時間的に重なることもあるだろう。朝の2時間ほどの間に,多くの移動が集中するのである。
 それに対して,夜は事情が異なってくる。学校にしても職場にしても,朝の始まる時刻は似たようなものであろうが,帰る時刻は人それぞれでバラバラである。そのため,全体的には朝ほど激しい混雑にならない。また,市内中心部から郊外へ進むにつれて,混雑が緩和されてくる。そして,夜は,疲れた体で暗い道を,駅から自宅へとぼとぼ歩きたくない,という気持ちも作用するだろう。
 そのためには,夜になっても,それなりの運転本数を確保し,駅の周囲とそこからのメインルートくらいは,安心して歩くことができるような環境を整えることは,どうしても必要になってくると思われるし,それぞれの地域におけるそういう面の整備を,行政などがこれまで怠ってきたということが言えるのではないだろうか。


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