撮影日記


2003年04月12日(土) 天気:くもり

アーガスC3は無意味に重い

アーガスC3とは

最近,「ハリー・ポッター」の本や映画が話題になっていた。その映画のなかで,主人公の友人が「アーガスC3マッチマチック」というカメラを持っているらしい。「アーガスC3」のシリーズは,1939年から1966年にかけて製造・販売されていたアメリカ製のカメラである。徹底した直方体のボディから,アメリカでは「レンガ(ブリック)」,日本では「弁当箱」と呼ばれていたという。「アーガスC3」のシリーズは,比較的廉価なカメラだったようで,アメリカの一般家庭に広く普及したらしい。いわゆる古き良き時代のアメリカを代表する製品なのだろうか,それが「ハリー・ポッター」の映画の小道具として登場した理由なのかもしれない。
 とにかく大量に出回ったカメラなので,中古市場では極めて安価に流通している。私は「Pacific Rim Camera」という店から(ほかのものを取り寄せたついでに)購入したが,標準レンズ付きの本体にケースがついて$20だった。「Pacific Rim Camera」では,アーガスC3はいつも,この程度の価格で在庫しているようだ。
 安いからというだけの理由で取り寄せた「アーガスC3」だが,その後,やはり安いからという理由で,35mmと100mmの交換レンズも入手した。そしてそれから数年,これらのシステムはほとんど使うことがなかった。

アーガスC3は持ち出す気にならない

「アーガスC3」というカメラをじっくりと見てみよう。まず,ボディはずっしりと黒くて重い。しかし,ボディの大部分は樹脂製のようで,いわゆる精密感は感じられない。レンズシャッター式だが,ボディに内蔵されているので,交換レンズは小さくシンプルである。シャッター速度は1/10〜1/300に対応している。おそらくばねのテンションをダイヤルで連続的に変化させることで調整するように思われるので,シャッター速度が無段階で選べるようである。フィルムの巻き上げとシャッターのチャージは連動していない。慣れないと,未露光のコマ,二重写しになったコマを量産することだろう(逆に,多重露光がやりやすいと考えることもできる)。露出計が内蔵されていないのは,仕方ないだろう。
 距離計は,上下像合致式で見難いものだが,レンズと連動しているので,慣れればこれは十分に使える。レンズのヘリコイドを回して調整することもできるが,距離計のギアを回してピントあわせをすることも可能である。このようなしくみや,直方体の黒いボディは,「ContaxI型」を意識したものではないだろうかと想像する。
 使いにくい面の多いカメラだが,このカメラを持ち出す気にさせてくれない最大の理由は,その大きさ・重さである。そこには,カメラ本体に,ストラップを取り付ける金具がないという,重大な問題も存在している。そのためケースを使いたくなるわけだが,この大きなボディを収めるケースは,さらに一回り大きいのである。

撮るときには重い方がいい

持ち歩くときには大きく重いことは問題になるが,実際に被写体に向かってシャッターを切るときには,それが問題ではなくなることも多いだろう。「アーガスC3」のシャッターは,すさまじい音を発してくれるが,振動を感じることはほとんどない。それはレンズシャッターという要因もあるが,ボディが重いことも影響しているだろう。今日は,「アーガスC3」でカラーネガフィルム1本を試し撮りしてみた。カラーフィルムを通したのは,はじめてである。
 実際の撮影にあたっては,もう1つ大きな問題があった。それは,レンズ交換の煩雑さである。距離計とレンズを連動するギアをはずしてレンズを交換するのだが,その都度,距離計の目盛りとレンズの目盛りをあわせてやらねばならぬのである。こうしてみると,当時,バルナック型ライカやContaxは,優れて自動化されたカメラであることがよくわかるというものだろう。
 「アーガスC3」は,このようなあくまでも廉価なカメラである。しかし,このカメラも,かつてはどこかの家族たちの楽しい日々を記録してきたのだろう。


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