撮影日記


2003年02月02日(日) 天気:曇一時雪のち晴

可部線存廃問題に思う(11)

広島市長選終わる

今日は,現職市長の任期満了にともなう市長選の投票日であった。結局,現職の秋葉氏が再選を決めた。明確な争点がないことから投票率がいまいち低いことが予想されていた。そのため,どちらかというと秋葉氏は苦戦すると予想していたのだが,結果の数字だけを見ると,そうでもなかったようである。
 今回,安芸区において,政令指定都市としてははじめての「電子投票」が実施され,注目を集めていた。IT化の流れはほかにも見られる。ここ数年の傾向ではあるが,各陣営は街頭演説など従来の手法のみならず,各候補を支援する者の手によると思われるウェブサイトでもいろいろな考えを表明していた。また,市民団体などによる「公開質問状」も,その回答をそれぞれの団体が独自にウェブサイトを開設して公開する例もあり,これらの流れは今後定着していくものと思われる。
 ちなみに,各陣営を応援するウェブサイトを見たところ,作り方はまさに各陣営ごとに十人十色である。特筆すべきは,今回次点であった大田氏を応援するウェブサイトである。Flashを駆使した尋常ではない重さのトップページと,中身の薄い各ページという構成は,見る人のことをなにも考えていない,表面の派手さに自己満足しているだけの「悪いページ」作りの見本であると感じた。もっとも得票数の少なかった,船田氏を応援するページも,「悪いページ」の見本といえるだろう。派手な背景画像のために,文字が非常に読みにくいデザインになっている。それぞれ,ブロードバンド,常時接続などの環境をもっていない人や,視力の衰えている人など,弱い立場の人に対する配慮が欠けている典型例といえる。有権者は,案外,そういうところに各候補者に対するなんらかの「疑問」を感じたのかもしれない。

どうなる可部線

可部線存廃問題に関して,いくつかの団体が各候補に質問状を出していた。それらは,「新生かべせんをつくる会」のウェブサイトで公開されているので,参照していただきたい。そこに公開されている回答によれば,秋葉氏の考えは,基本的にはバス転換とし一方で可部−河戸の区間の電化を実現させたい,というもののようである。これは,行政主導による可部線存続の道は,完全に消えたということだろう。もっとも,この判断は財政面を配慮して実現できそうなギリギリの線かもしれない。
 たしかに,可部から河戸付近まで住宅地が広がっているので,それなりの需要は見込めるだろう。しかし,その周辺において,交通手段の選択肢が1つ増えるだけであり,国道54号線などの交通量に大きな影響を与えることは期待できない。横川−可部の区間の到達時分の短縮がなければ,多くの人を,バスやマイカーから可部線に乗り換えさせることは難しいだろう。
 先に紹介した,「新生かべせんをつくる会」のウェブサイトへは,「可部線プロジェクト」からリンクを設定してある。「新生かべせんをつくる会」は,安芸飯室までの区間は,広島都市部への通勤手段として再生の可能性があることを主張しているので,あわせて参照しておくとよいだろう。

観光路線としての模索

一方で,加計−三段峡をいわゆる観光路線として残そうという考えもあると聞く。この区間は,比較的よい規格で建設されているので,廃止してしまうのはもったいないということも考えられる。また,可部−加計の区間は,今後も使用するなら大がかりな補修なども必要と考えられるので,当面はこの区間をあきらめ,両側だけを部分的に維持しようという考えは,合理的にも思える。
 観光路線として生かす場合,たとえば現在の上殿駅を少し三段峡よりに移設して,高速バスのバス停と隣接させる方法が考えられるだろう。連絡をうまくとっておけば,たぶん,可部線を直通するよりも時間の短縮が実現できるかもしれないし,全体的な増便も可能かもしれない。しかし,乗り換えは,利用者にとってなによりも苦痛である。
 鉄道は,やはりつながっていなければ価値は減少するだろう。


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