撮影日記


2003年01月17日(金) 天気:はれ

可部線存廃問題に思う(10)

鉄道事業法

あらゆる鉄道は,日本の法律に基づいて建設され,運営されている。公益性が高いとされる鉄道事業に,適切な制限をおこなうことで,需要と供給のバランスを調整することを目的に考えられていたようである。現在,関連する法律の1つに「鉄道事業法」というものがある。これは,国鉄が分割・民営化された1987年4月1日に施行された。
 その後,いわゆる規制緩和風潮のなかで,2000年3月1日に,「鉄道事業法」の改正が施行された。この改正により,鉄道事業は「免許制」から「許可制」に移行した。その結果,鉄道事業への新規参入がおこなわれやすくなると同時に,事業の廃止もおこないやすくなった。事業の廃止については,「(事業の廃止)第二十八条の二」に定められている。

(事業の廃止)
第二十八条の二  鉄道事業者は、鉄道事業の全部又は一部を廃止しようとするときは、廃止の日の一年前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
 2  国土交通大臣は、鉄道事業者が前項の届出に係る廃止を行つた場合における公衆の利便の確保に関し、国土交通省令で定めるところにより、関係地方公共団体及び利害関係人の意見を聴取するものとする。
 3  国土交通大臣は、前項の規定による意見聴取の結果、第一項の届出に係る廃止の日より前に当該廃止を行つたとしても公衆の利便を阻害するおそれがないと認めるときは、その旨を当該鉄道事業者に通知するものとする。
 4  鉄道事業者は、前項の通知を受けたときは、第一項の届出に係る廃止の日を繰り上げることができる。
 5  鉄道事業者は、前項の規定により廃止の日を繰り上げるときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

 可部線の廃止届は,これに基づいて提出されている。

情報公開のあり方

2003年1月20日に国土交通省中国運輸局が「西日本旅客鉄道株式会社の鉄道事業(可部線)廃止届出に係る意見の聴取」を実施することが,新聞でも報じられた。同局のウェブサイトでは,『鉄道事業者が鉄道事業(路線)の廃止を行った場合における「公衆の利便の確保」に関して行う』と,目的が示されている。この意見聴取は,上記「鉄道事業法」第二十八条の二第二項に基づいておこなわれる。またこの「意見の聴取」は,鉄道事業法施行規則第四十二条の五によって「公開」と定められている。

(意見の聴取)
第四十二条の五  国土交通大臣は、法第二十八条の二第二項 の意見の聴取をしようとするときは、その十日前までに、関係地方公共団体及び前条第一項の申請書を提出した利害関係人に対し、意見の聴取の日時及び場所並びに当該廃止の内容を書面で通知する。
 2  意見の聴取は、公開とする。ただし、国土交通大臣が特に必要があると認める場合には、この限りでない。

 今回の意見聴取は,終了後に記者会見をおこなうという形での公開になる。このことについて,聴取行為そのものを公開してほしいという声があることが,新聞で報じられている。この報道では,「他の団体の意見も聴きたい」という声も紹介されていることから,意見聴取は完全に個別でおこなわれるようだ。新聞の見出しも「非公開で」という表現が使われており,痛烈である。
 役所などへの申請書類の類は,行政文書として情報公開に基づき開示を請求することができる。あとからその内容についてさまざまな疑問や矛盾点などが指摘されることもありうるだろう。今回,意見聴取が完全に個別におこなわれることは,意見を記録に残すにあたって,個別の意見に対して若干の修正を要求されるケースも想定しているのではないかと想像できる。

公開を強行する

記者会見という形式が「公開」とはいえない,とするならば,このような措置は法令に反した行為とみなすことができる。また,「公開ではない」という反発が生じる方法をあえて採りいれたことについては,なんらかの意図がそこに存在するのだろう。具体的な事情はわからないが,あえて「非公開」呼ばわりされるような方法を選ぶ理由は思いつかない。
 ただ,「みんなに意見を聞いてほしい」「ほかの人の意見を聞きたい」という声があるにもかかわらず,それが叶えられない状態にあることは,たしかなことだろう。このことを報道した新聞には,このような声を実現させるべく,意見の公開に協力していただきたいものである。


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