撮影日記


2002年12月07日(土) 天気:あめ後くもり

可部線存廃問題に思う(7)

観光路線は天気に左右される?

今週も週末の天気が悪そうである。この秋,天気があまり芳しくない週末が多かった。私は,休日である週末は,写真を撮って過ごしたい。写真を撮るにあたって,天気が快晴である必要はない。もちろん,撮りたい絵にもよるのだが,極端に言えば,雨さえ降っていなければいいのである。
 しかし,雨が降りそうな天気というのは落ち着かない。とくに,たとえば三段峡を歩こうと思っているときは,なおさらである。写真を撮ることが目的であれば,それなりの覚悟と準備ででかけるという選択肢もある。雨の日ならではの絵に出会えるかもしれないからだ。ところが,写真を撮ることが目的ではない場合,雨が降りそうな日にまでわざわざ三段峡へ行こうという人はいるだろうか?もちろん,いなくはないだろうが,天気がよい場合にくらべると,大幅に減少することは容易に想像がつく。
 可部線にとって,休日に好天が続く場合と,悪天が続く場合では,週末の利用者数に大きな差が生じるだろう。そもそも,いわゆるゴールデンウィークの時期と紅葉の時期にくらべて,普段の週末は訪れる人はかなり少ないという印象を受ける。やはり,安定した利用者を確保するには,通勤・通学の需要をベースに考えたいところだろう。

三段峡は過小評価されている?

三段峡は,上流に樽床ダムがつくられてから水量が激減し,かつてのような魅力がなくなったと言う人が多い。また,昭和60年代の水害などで三段滝や二段滝が崩れ,さらに魅力が減ったと言う人もある。どうやら,三段峡は以前にくらべてよくないらしい。しかし,よくなくなったはずの三段峡でも,一度訪れてみると,その変化に富んだ景観,美しい水や緑,豪快な流れなどに魅せられ,癒されることだろう。
 三段峡は,1925年に「史蹟名勝天然祈念物保存法」により名勝指定され,さらに1953年11月に国の特別名勝に指定された。「史蹟名勝天然祈念物保存法」により名勝指定されたため,その範囲内には大規模な開発はおこなわれていない。その一方で,観光地としてJR可部線の三段峡駅から奥まで遊歩道が整備されている。自然の景観を最大限に残しながら,手軽に峡谷を楽しむことができるようになっていることは,先見の明をもった先人の偉業の結果であるといえる。
 名勝指定された峡谷内部では,大規模な開発はおこなわれていない。しかし,その周辺では,ダムや大規模林道など,開発の手が伸びている。舗装された道路など,その地域の生活を向上させるために必要不可欠な内容の開発もあるが,先人が子孫達のために残してくれた貴重な自然を,不用意な開発で取り返しがつかない状態にならないように,もっと注目していく必要があるのではないだろうか。しかしながら世間では,観光地としてもいまひとつ,三段峡が高く評価されていないように感じている。広島市という大都会からさほど遠くなく,多くの観光客が訪れることができるという条件があるにも関わらず,である。なんとも不思議なことである。

開発と自然保護

古い地図を見てみると,かつては太田川沿いに集落が続いていたことが目立つ。しかし,現在では,とくに広島市内に該当する部分では,太田川沿いよりも,周辺の山の上などに大規模な集落が目立つ。このように居住域が広がった一方で,太田川沿いにある古くからの集落は,過疎の傾向にあるという。可部線の役割が低下していることは,このような空間の変化によるものが大きいといえる。このことについては,「広島という都市が無秩序に拡大してきた」という表現をする人もあるようだ。
 「三段峡」という限られた空間のみ,たまたま「規制」があったために,無秩序な開発の手を逃れられてきた,ということも言えるかもしれない。しかし,三段峡の周囲では現実に,三段峡の上流方面から恐羅漢スキー場へ至る,大規模な道路(大規模林道)の建設が進行中である。この道路は,周辺の集落の生活のために不可欠と考えられる部分も含んではいるが,三段峡の周辺に断片的に残る原生林などの貴重な自然にどれだけの影響を与えるか,十分に考察がなされているのだろうか?
 また,この道路は,当初の計画ではすでに全線開通していなければならないはずなのだが,国の予算の大半を使い切ってもまだ半分も開通していないという。こういう税金の無駄使いにも見えるできごとへの批判があまり聞かれないのは,不思議である。こういう問題は,たぶんあちらこちらにあると思う。可部線存廃問題も含めて,いわゆる「地方紙」などのマスコミには,さまざまな立場からの問題提起を積極的におこなっていただきたいものだ。


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