撮影日記


2002年03月31日(日) 天気:晴一時雨

どけ!

「戸河内ふれあいセンター」における「かべせんフェスタ」の開場は,11時であった。会場への搬入は8時からだ,ということで,早朝に出発して,途中撮影しながら会場へ向かうことにした。
 途中に寄る場所としては,「安野」駅を予定した。今年はサクラの開花が全体に早く,おそらく安野駅のサクラも満開に近い状態だろうと予想できたからである。しかし,日曜日である。現地はとてつもない混雑であろうことは,容易に想像がつく。
 安野駅では,朝一番の可部行き列車を,背景にレンギョウ,モモ,サクラの3色をそろえて可部方面側から迎え撃つのが,1つの定番の撮影スタイルといえる。しかし,その位置は,間違いなく大混雑をしているだろうと予想した。また,その向きからは,ここ数年で何度か撮っているので,反対側から撮ることを計画した。加計方面側にある,トンネル付近から撮る方法である。

安野駅には5時すぎに到着。駅前を通過すると,予想どおり,すでにかなりの人出である。そこで,当初の計画どおり,さっさと予定していたトンネル付近へ移動した。タチハラとマミヤプレスを,それぞれ,ザ・プロフェッショナルとマスターに載せ,撮影の準備をすすめた。駅の方を見下ろすと,レンギョウの前に多くの人が集まっており,一番列車を迎えているように見えた。まさに,「高みの見物」状態である。
 やがて,トンネルを伝わる列車の音が聞こえ,踏切が鳴り出した。予定通りにシャッターを切る。
 このとき,駅の付近でも,多くのシャッターが切られたことだろう。列車には数人の乗客が乗りこんだように見えた。そして,多くの人に見送られるように,「滞りなく」可部方面に走り去っていった。

搬入まで,時間がまだあるので,駅付近がどれくらい混雑しているかを覗きに,駅の方へ降りてみた。やはり,先に駅前を通過したときよりも,人やクルマが増えているように見えた。ホームを歩いていると,ホームの上に三脚を立てていた人の一人が,レンギョウの前に群がる人に向かって,「お前らそこをどけ!譲り合って撮ろうぜ!」という意味のことを訴え,そこから人を退かせようとしていたりして,雰囲気は一触即発である。
 ほかの撮影者を画面内にいれずに構図を作ること(さらに,ほかの撮影者の視野に入らない位置)を考えるのは面倒なので,すなおにさがって望遠レンズで撮るようにした。そうすれば,多くの撮影者が写りこむことは,その場の雰囲気があらわれて,かえっておもしろい。
 やがて,2番列車がやってくる。
 こちらは,置きピンで,列車が停車したところを撮るつもりなので,のんびりとかまえている。踏切の音がすると,殺気立った雰囲気がこちらまで伝わってくるようだった。列車がかなり接近しても,まだ線路のなかで三脚を立てている「大馬鹿野郎」がいる。私のそばにいた撮影者が,「ばかやろー,どけどけぇ!」と叫んでいるのが聞こえるが,これは「撮影の邪魔だ,どけ!」という意味に聞こえた。それでも,列車の前に立ちはだかる彼はそこを動かない。列車は警笛を鳴らしつづけながら,一時停車しかけた。そのころになってようやく,彼はそこを離れた。
 列車は,改めて正規の位置に停車したので,私は静かにマミヤプレスのシャッターを切った。
 ところで,列車の運行を妨げたことを,「大馬鹿野郎」な彼はどう考えているのだろうか?


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