撮影日記


1999年11月15日(月) 天気:あめ

ニッコールは日本のゾナーだ

昔から,カール・ツァイスのレンズは評価が高い。標準レンズとしては,テッサー,プラナー,ゾナーというレンズが有名である。残念ながら,私はテッサー以外は所有しておらず,そのテッサーについてもあまりきちんと使ってはいないので,その良さというものを知るには至っていない。されど,数10年前のレンズが,今でも実用になるということは,それが当時としては十分に完成の域に達していたことを示すのであろう。なお,私が使っているテッサーは,エキザクタ用のものなので,1950年代の製品であろう。
 テッサータイプのレンズは,レンズの構成数が少なく,かつ,十分に収差を補正できるということで,あまり大口径ではない標準レンズとして,幅広く採用されたようだ。そして,大口径レンズとして,プラナーやゾナーが高く評価されていた。コーティング技術があまり発達していなかった時代には,空気接触面のより少ない,ゾナータイプのレンズが,特に評価が高かったらしい。

ところで,「ゾナー(Sonnar)」とは,ドイツ語で「太陽」を意味するらしい。私は,ドイツ語の辞書を持っていないので,確認はできていないのだが・・・・
 一方,日本が誇るレンズ「ニッコール」は,「NIKKOR」と綴るわけで,ドイツ語的に読めば「ニッコール」なのだろうが,英語的に読めば「ニッコー」となるはずである。これは,すなわち「日光」である。「日光」とは,「日本光学」の略称であるが,これも結局は「太陽」を意味しているのである。
 中東の砂漠地帯などでは,太陽を忌み嫌う人びともあるようだが,カメラ産業が発達してきたヨーロッパでは,太陽はやはりありがたいものであったのだろう。優れた写真レンズに,「太陽」に通じる名前をつけることは,ヨーロッパでも日本でも,同じ感覚だったのかも知れない。

第2次世界大戦後,日本光学は,「ニコンカメラ」を発売するとともに,ライカマウントのニッコールレンズを市販していた。当時のニッコールは,主にゾナータイプだったらしい。
 この,ニッコールレンズを,当時のライフ誌契約写真家の三木淳氏が,ライフ誌専属写真家のダグラス・ダンカン氏に紹介し,ニッコールレンズの優秀さに驚いたダンカン氏が高く評価した結果,ニッコールレンズは世界中に認められるようになった,という話は有名だろう。このとき,三木氏は,ダンカン氏に,「これ(ニッコール)は日本のゾナーだ」と紹介した,という説がある。三木氏は,「ニッコールはゾナーのように優秀だよ」という意味で,こういう発言をしたのだろうか?それとも,単に「ニッコーという日本語は,ゾナー(太陽)って意味だよ」と言っただけなのか,それは知らない。

左:エキザクタマウントのテッサー(50mm F2.8)
右:ニコンFマウントのニッコール(50mm F1.4)


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