撮影日記


1999年01月16日(土) 天気:くもり

ニコンEM

いまさら言うまでもないが,この世に35mm判カメラは2種類ある。それは,ニコンとそれ以外のカメラである。ニコンのカメラは,その信頼性を裏付けるかのように,重厚なものが目立つ。いや,実際に,同クラスの他社製品と比べると,明らかに重いことが多い。超高級機ならいざ知らず,初心者をターゲットとした製品であれば,これはマイナス要因であろう。最近でこそ,「プロネアS」が「Woman's Nikon」を名乗るなど,小型軽量を誇る製品も見られるようになってはいるが。

しかし,今から約20年前の1980年,ニコンは思い切った製品を発表した。それは 「EM」という名称だった。愛称は「リトルニコン」。ニコマート系列のカメラががFM/FE系列となったときに,かなりの小型軽量化がはかられたが,EMはそれよりさらに小型軽量になったのだ。
 「EM」は,さらに機能的にも贅肉を削ぎ落としていた。露出モードは,絞り優先AEのみでマニュアル制御はできない。AEロックもなければ,露出補正は,逆光補正用の+2EVがあるのみ。多重露出も,プレビューやミラーアップもなかった。恐ろしいほどに,機能を割り切ったカメラであったのだ。
 しかし,必ずしもチープなカメラではなかった。デザインは,F3と同じくジウジアーロが参加しており,小型なりの存在感を与えてくれる。個人的には,折りたたみ式にも感じる巻き上げレバーがなんとも言えずに好きだ。また,絞り優先AE専用ではあるが,メカニカルシャッターのBと1/90秒だけは用意されている。スナップ用として考えれば,特に問題なく感じる。DX対応じゃないので,露出補正はフィルム感度設定を利用できる。

私の「EM」は,最近,YANさんが安価に見つけてくださったものだ。しかし,安いものには落とし穴もある。モルトがなくなりかけていたが,気にせず撮影したところ,見事に派手な光線漏れをしてくれたのである(笑)。しかたないので,フェルトを細く切って,モルトのかわりに裏蓋の溝に押し込んだ。その後,モノクロで試し撮りをしたが,今度は光線漏れなどの支障は発生しなかった。
 巻き上げのフィーリングはさすがにチープだが,シャッターの動作音も比較的小さく,スナップ用にぴったりのカメラである。

しかし,困ったことには,私が最近,スナップ用としてお気に入りなカメラは,「キエフ4M」なんだな。普通にスナップ撮りするなら,レンジファインダー機の方が,気楽に臨めるような気がする。どうも,一眼レフだと,気合が入りすぎる気がする。


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