撮影日記


1998年10月13日(火) 天気:くもり

КИЕВで撮った

「キエフ4M」型は,「Contax III」型のデザインを引き継ぐ機種である。生産が終了する1985年まで,原形となった1936年の「Contax III」とほとんど姿がかわっていない。まさに「生きた化石」といえるカメラだったのだ。1985年といえば,MINOLTA α-7000が登場した年だから,そこにいかに時間のギャップがあるか理解できることだろう。

「キエフ」は一般に「コンタックス」の模倣機と言われる。しかし,「キエフ」の場合,数多くの「ライカ」を「まね」して造った「ライカ」の模倣機とは,少々,事情が異なるようだ。第二次世界大戦後ソ連軍が,当時「Contax II」「Contax III」を製造していたドイツのツァイスの工場を接収し,そこの設備や図面,技術者をソ連に連れ帰って製造したものが「キエフ」であるというお話がよく知られている。このお話の通りだとすれば,「キエフ」は「Contax II」「Contax III」そのものであるといえるのだ。ただ模倣したものとは,わけが違う。
 世界中でライカを模倣したカメラはたくさん製造されたが,コンタックスを模倣したカメラは,外観だけを模倣したニコンを除けば,「キエフ」くらいしかない。したがって,交換レンズもLマウントのものにくらべれば,流通量が少ない。だから私も,当初はLマウントの「フェド」か「ゾルキー」を買って,Lマウントのニッコール様を装着することを企んでいたものだ。

しかし,「キエフ4M」のカッコよさに負けた。それはつまり,「Contax III」のカッコよさである。

先週は,「キエフ4M」にEktachrome Dyna EXを装填して,いろいろと試し撮りをしてみた。そして,仕上がったスリーブを見た結果,「意外とシャープである」「意外とヌケがいい」という印象を持つに至った。購入した「キエフ4M」は¥19,800である。あなたはこれを,高いと思うか?安いと思うか?
 現在は,運がよければ,キヤノンAE−1,ミノルタX-7,オリンパスOM-10などの実用になるAE一眼レフカメラが¥10,000以内で見つかる時代なのである。買った「キエフ4M」は,シンクロ接点がショートしており使えず,自慢の露出計も狂っている,つまり,半分壊れた状態である。これが,¥19,800もするのである。国産AE一眼レフカメラにくらべて,これははっきり「高い」と言えるだろう。つまり,高級品コンタックスを模倣した「キエフ」も,一応は高級品と言えるのだ。そう考えれば,描写が「いい」ことは意外でもなんでもなく,当然なのかもしれない。


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