撮影日記


1998年04月21日(火) 天気:くもり

「鉄」を撮るとき
マクロスライダーが必須

これまで何度か,「ローカル線の撮影チャンスは1〜2時間に1回」と書いてきた。これはあくまでも「走行する車両」を狙ったときの話である。車両はなくとも,人のいないホームや駅舎などは十分にローカル線の魅力を引き出す被写体となりうる。

加計駅構内は4線1面となっている。中央の2線の間に島式ホーム1面があり,両端の2線は引きこみ線になっている。ただし,それらのレールはすっかりさびており,ここ数年,ほとんど使われていないようだ。
 それを支持するかのように,ポイントも違う。中央の2線へつながるポイントは電動式になっているのに,両端の引きこみ線につながるポイントは手動式である。このような手動のポイントは,これから採算性の悪いローカル線がなくなっていく中で,また残された施設が次々と合理化されていく中で,そのうち過去のものになってしまうであろう。こういうものを記録することもおもしろいのではないだろうか。

写真は,3次元空間の事象を2次元に表現する技法である。しかし,ちょっとした工夫で3次元を再現することができる。「ステレオ写真」と呼ばれるものだ。原理はいたって簡単。「左目」と「右目」に相当する位置から写真を撮り,それを「左目」の画像は左目で,「右目」用の画像は右目で見るようにするだけである。「左目」と「右目」の位置によっては,立体感が誇張されてなかなかおもしろいし,地形などの観察にも役に立つ。
 数10年前に,世界的な「ステレオ写真」の大ブームがあり,クラシックカメラを扱うお店に行けば,ステレオ写真用のカメラなどを数万円で入手することもできるだろう。
 だが,わざわざそういう大金をださなくても,ちょっとした工夫でステレオ写真を撮ることはできる。たとえば,1つの三脚にカメラを2台載せることができるプレートが売られているので,利用するとよい。ただし,この場合も「同じカメラとレンズが2つ」必要なので,あまり安くはできない。

そこで利用したいのが「マクロスライダー」である。本来は,接写の際にカメラの位置の微調整をおこなうためのものだ。その場合は,スライドする方向と同じ向きにレンズを取りつける。
 このとき,スライドする方向と直角な向きにカメラを取りつけるとどうだろうか。そう,「左目」と「右目」にあたる位置にカメラを移動させることが容易にできるのだ。こうすれば,1台のカメラでステレオ写真を撮ることができる。あなたのジマンのカメラ,レンズがそのまま使えるわけだ。
 人間の目の基線長は6cm程度と言われる。うちにあるマクロスライダーはその移動距離が12cmほどとれるので,十分な立体感が得られる。

このたびの可部線の撮影では,さすがにマクロレンズは持っていかなかったが,マクロスライダーはちゃんと用意していたのである。


← 前のページ もくじ 次のページ →