撮影日記


2021年10月26日(火) 天気:晴

背景ぐるんぐるん

期限切れフィルムは,性能が劣化している。ただし,どのくらい期限をすぎれば,どのくらいどんなふうに性能が劣化するのかは,フィルムの銘柄の差,保管状態の差などで,一概には言えない。しかし,まとめて入手していた期限切れフィルムのうちでは,コニカカラーのものよりもフジカラーのもののほうが,いくぶんかは状態がよい(2021年8月14日の日記を参照)。
 入手したジャンク品のカメラの動作も安定してきた(2021年10月23日の日記を参照)ので,こんどは少しは状態のよいフジカラーの期限切れフィルムで試し撮りをおこなうことにした。

ピントリングを,このカメラの最短撮影距離(1.2m)にあわせて撮ったものである。中央にある葉にピントがあうように,二重像合致式の距離計を内蔵したカメラを使って,葉とカメラの距離をあわせるようにした。それでも厳密にあわせることは難しく,どうしてもピントは甘くなる。

さらに,レンズの設定を変更して撮ってみると,みごとな「ぐるんぐるん」である。渦巻き状の後ろボケは,レンズに非点収差があるものと思われる。
 さてここで,このカメラの正体を明かしておくことにしよう。

「フラッシュフジカ ズーム デート」(FLASH FUJICA ZOOM DATE)という機種である。レンズ固定式で,レンズシャッターを内蔵したプログラムAEのカメラ,いわゆるコンパクトカメラである。ライカ判サイズのコンパクトカメラとして,はじめてズームレンズを内蔵したものである点が,特筆される。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載された期間も短く,vol.62(1978年5月)やvol.67(1980年2月)には掲載がなく,その間のvol.64(1979年3月)には掲載が見られる。日本カメラ「カメラ年鑑」では,1979年版(1978年12月)の「新製品ニュース特報」のコーナーで取り上げられており,発売は1978年10月となっている。1980年版(1979年12月)にも記載があるが,1981年版(1980年12月)には記載がないので,1980年のうちに販売が終了したものと思われる。

一眼レフカメラ用のレンズとくらべたくなるくらいの,大きなレンズである。ズーミングは直進式,開放F値は全域でF3.8となっている。のちの時代のカメラに搭載された,いわゆる「暗黒ズーム」(開放F値がおおむねF8よりも大きく,日中でも高感度フィルムを使いたくなるようなレンズを揶揄する表現)とはまったく異なるスタイルである。ただし,焦点距離の範囲は狭く,短焦点側で37mm,長焦点側で55mmなので,ズーム比としては1.5倍にも満たないものである。

ピント調整は目測式で,最短撮影距離は1.2m,各目盛のところにクリックストップがある。目測式だから,焦点距離の範囲もとくに長焦点側にいたずらに伸ばしても,扱いにくいだけだろう。ただ,短焦点側にはもう少し,せめて35mmまではカバーしてほしかった。
 このように,ズーム比としてはささやかなものではあるが,レンズの前にコンバージョンレンズを取りつけるような方式よりは,当然ながら扱いやすいのである。そして,短焦点側,長焦点側,その中間くらいで,続けて撮って並べてみれば,ズームレンズの効果もわかりやすいというものである。

FLASH FUJICA ZOOM Date (at 37mm), FUJI 100

FLASH FUJICA ZOOM Date (at 45mm), FUJI 100

FLASH FUJICA ZOOM Date (at 55mm), FUJI 100

最短撮影距離で撮ったときには目立った後ボケの「ぐるんぐるん」も,遠景を撮る場合にはあまり目立たないようである。
 ともあれ,これは,復活させる意味のあるカメラだと思っている。


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