撮影日記


2021年05月06日(木) 天気:晴

Kodak DCS 460/420の感度設定に意味はあるか?

Kodak DCS 460とKodak DCS 420は,1994年に発売された,デジタル一眼レフカメラとしてはごく初期の製品である。このうち,Kodak DCS 460は600万画素の撮像素子をもち,感度はISO 80相当で撮影ができる。もう1つのKodak DCS 420は150万画素の撮像素子をもち,感度はISO 100〜400相当で撮影ができることになっている。
 これら2機種で使われる撮像素子は,大きさが違うだけで,素性に大差はないと想像している。これらの画素のピッチは同じようであり,画素数の違いがそのまま面積の違いに反映されているように見えるからである。Kodak DCS 460の撮像素子の大きさが27.6mm×18.4mmであるのに対し,Kodak DCS 420の撮像素子の大きさは13.8mm×9.2mmで,ちょうど面積が1/4になっているのである。
 なお,Kodak DCSシリーズの開発にかかわったJim McGarvey氏による「The DCS Story」(2019年11月4日の日記を参照)によれば,Kodak DCS 460の撮像素子は「M6」というもので,Kodak DCS 420の撮像素子は「M5」というものとのことである。

ところで,Kodak DCS 460もKodak DCS 420も,どちらもニコンのフィルム一眼レフカメラ(Nikon F90シリーズ)に,Kodak製のデジタルバックを組みあわせたものである。デジタルバック側には,撮影時の感度を設定するようなボタンやメニューは用意されていない。カメラ側のフィルム感度の設定が反映されるようである。あえて,対応していない範囲にカメラ側のフィルム感度を設定して撮影すると,撮影後にエラーメッセージが表示され,カメラ側のフィルム感度設定が対応範囲内に自動的に変更される。
 このとき,とりあえず,撮影は実行され,画像は記録されている。
 対応していない感度に設定して撮影したのであれば,大幅な露出オーバーや露出アンダーになっているはずだ。
 実際にどうなるのか,試してみることにした。

先にも書いたように,Kodak DCS 460はISO 80でのみ撮影ができることになっている。カメラ側のフィルム感度設定をISO 80にして,絞り優先AEで撮影をすると,当然ながら適正な露出の画像が得られる。

Kodak DCS 460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S (F5.6, 1/15sec, ISO 80)

つぎに,ISO 400に設定して,絞り優先AEで撮影する。デジタルバックの感度がISO 80相当であるならば,すなわち感度がISO 80のフィルムを装填した状態に相当するのであるならば,2段階ほど露出アンダーになるはずだ。

Kodak DCS 460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S (F5.6, 1/80sec, ISO 400)

ISO 80で絞りがF5.6のときにシャッター速度が1/15秒であったのだから,ISO 400での露出が絞りF5.6でシャッター速度が1/80秒になるのは,自然なことである。撮影した結果は,ISO 80に設定したときにくらべて明らかにアンダーな露出になっている。デジタルバックの感度は,あくまでもISO 80になっているということのようである。

それならば,カメラ側のフィルム感度設定をISO 1600にして撮影すれば,シャッター速度がさらに速くなるわけだから,撮影結果はさらにアンダーになり,かなりまっ暗に近いものになると予想できる。

Kodak DCS 460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S (F5.6, 1/320sec, ISO 1600)

ところが,撮影した結果は,予想にまったく反している。露出がアンダーどころか,むしろオーバーである。
 その中間の,ISO 800に設定した場合は,どうだろうか。

Kodak DCS 460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S (F5.6, 1/160sec, ISO 800)

どうしたことか,さらに露出オーバーである。まだ,たしかなことは言えないが,カメラ側のフィルム感度設定をISO 800以上に設定すると,デジタルバック側では増感処理のようなことをして,ISO 3200くらいのフィルムに相当する動作をするようになっているのだろうかと思われる。意外にも,高感度に設定しての撮影が可能になっているようである。
 ただ,この画像を見てわかるように,高感度に設定したときの画質はノイズがひどく,実用的とはいいがたいものである。

一方で,低感度に設定したときは,どうなるだろうか。デジタルバックがあくまでもISO 80のフィルムに相当する動作をするのであれば,それなりの露出オーバーになるはずだ。

Kodak DCS 460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S (F5.6, 1/5sec, ISO 25)

こちらは予想通りに,露出オーバーになった。
 感度設定がISO 80専用となっているKodak DCS 460であるが,実際にはISO 80相当程度の「低感度モード」とISO 3200相当程度の「高感度モード」が計画されていたのではないだろうか。しかし,高感度モードでのノイズの問題がじゅうぶんに解消できないなど,完成度があがらなかったことから,高感度モードの機能がそのまま封印されたのではないかと想像できる。

たしかに,画質がよろしくない「高感度モード」であるが,これはこれでおもしろい表現に使えたりしないだろうか。このあたりの動作について,もっとためしてみる必要がある。ただ,ISO 80以外に設定しても,レリーズするたびに設定がISO 80にもどるようになっているので,「高感度モード」を使うのはかなり面倒なことではある。


← 前のページ もくじ 次のページ →