撮影日記


2020年05月24日(日) 天気:晴

学研のカメラで「撮ってみた」

学研が発行していた「科学」「学習」は,小学生を対象にした学年別の学習雑誌であった。とくに「科学」では毎号,さまざまな実験ができる教材が,付録として用意されていた。その教材の定番の1つに,カメラがあった。カメラが付録する月や,そのカメラでおこなう実験のテーマは年ごとに異なるようだが,5年生か6年生あたりのどこかでカメラが付録になることが多かったようである。また,カメラとは別に,日光写真というものが付録になることもあった(2019年12月11日の日記を参照)。
 私の手元に,「6年の科学」の付録だったカメラが残っている。これでどんな写真を撮ることができるのか,確認しておきたい。その付録にセットされていた印画紙や処理薬はもう残っていないので,ふつうの印画紙と薬品を使うことにする。製造が終了したのでこれも確実な入手が容易ではなくなってしまっているが,フジの号数印画紙フジブロWP FM3があまっていたので,これを使うことにした。

このカメラには,ピントグラスにあたるものが付属している。裏蓋を開いてピントグラスにあたるものをはめてカメラを被写体に向ければ,ピントグラスにあたるものを見て構図などを確認できる。ただし,ピントを調整する機構はない。このとき,カメラを置いた位置や向きを,なんらかの方法で,きちんと記録しておく必要がある。

構図を確認したら,光があたらないようにチェンジバッグのなかで裏蓋を開き,3cm×4cmのサイズにカットした印画紙を装填する。ここに装填するための印画紙は,あらかじめ暗室などでじゅうぶんな数をカットして用意しておく。そして,光を通さない袋などに入れておく。なお,未露光のものと,露光済みのものとがわかるように,袋は2つ用意しておく必要がある。

印画紙を装填したら,カメラをチェンジバッグから取り出す。このカメラの裏蓋は開きやすいので,パーマセルテープなどで軽く留めておくと安心である。
 そして,構図を決めたときと同じ位置,同じ向きにカメラを置き,レンズキャップを開いて露光する。今日はとりあえず,10秒間露光した。露光したらレンズキャップをはめ,ふたたびチェンジバッグのなかで裏蓋を開いて,撮影済みの印画紙を取り出し,袋に入れておく。

この手順は,組立暗箱で撮影するよりも,はるかに面倒なものである。カメラそのものはごく小さく軽いものであるが,あらかじめカットした印画紙を光にあたらぬよう安全に持ち運ぶ必要があることと,撮影したい場所で詰め替えるためのチェンジバッグが必要になるので,荷物がカメラ本体の大きさにくらべて,とても大がかりなものになってしまうのである。

露光した印画紙を持ち帰り,暗室で現像をおこなう。現像液としては,モノクロフィルム用のミクロファインを希釈したものを使っている。およそ120秒(液温はおよそ24度)の現像で,像の濃度がほどよくなった。これをフラットベッドスキャナで読み取り,ソフトウェア上で左右の向きと階調を反転する。そして,トーンカーブを調整すると,像が得られる。

GAKKEN camera, FUJIBRO WP FM3

全体にコントラストが低い像だったので,トーンカーブをかなりいじっている。ぼんやりとはしているが,なにが写っているかは,じゅうぶんに判別できる。画面の上のほうに変な影が出ているのは,カメラの内部底面に反射防止のために貼った紙の影であろう。これは,きれいに貼りなおす必要がある。

このカメラの特徴として,広角コンバージョンレンズが付属しているということがある。

GAKKEN camera, FUJIBRO WP FM3

広角コンバージョンレンズを装着して撮ったものは,たしかにずっと広い範囲が写っている。しかし,無理な広角レンズにありがちなこととして,周辺の像が激しく流れて見える。

ともかく,「6年の科学」付録のカメラは,現在でも撮影が可能であることが確認できた。ただ,このカメラで撮るならば,実際にこのカメラにセットされていたものと同じ印画紙,同じ薬品を使わなければ,意味がないような気もする。通常の手法を使うかぎり,このカメラによるアウトプットは,「撮ってみた」以上のものになりそうには思えない。


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