撮影日記


2020年01月03日(金) 天気:晴

フィルムカメラの2019年問題は
たいしたものではない

かつて,「2000年問題」というものが,世間を騒がせたことがある。古いコンピュータ(ハードウェアあるいはソフトウェア)では,日付の「年」を西暦(グレゴリオ暦)の下2桁だけで扱っているものが多くあった。そのまま使い続けていると,1999年12月31日から2000年1月1日にかわったときに,2000年ではなく1900年としてに扱われることになる。それが原因で,社会のインフラストラクチャーなどに使われているコンピュータが誤動作すれば,多くの人の生活などに大きな影響を与えることになる,という問題である。誤動作がおこらないように,コンピュータ機器を入れかえたり,ソフトウェアを修正したりするなど,多くの人が努力をした結果,「2000年問題」による重大なトラブルをほぼ回避することができたようである。

この年末には,「2019年問題」というものの存在が聞こえてきた。フィルムカメラの日付写しこみ機能には,2019年12月31日までしか対応していないものが多数ある,という。それらのカメラでは,2020年以後,日付写しこみ機能が使えない(正確な日付を記録できない)という問題である。ただし,正確な日付を記録できないだけであり,カメラそのものが動作しなくなるわけではない。フィルムカメラが,まったく使えなくなるわけではないので,あわてる必要はない。
 この種の問題は,以前からあった。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」を軽く見返してみたところ,デジタル表示のクォーツ時計を利用したオートデート機構(クォーツデート機構)をさいしょに搭載したカメラは,Konica Acom-1 autodateあるいはKonica C35EF autodateあたりのようである。これらのオートデート機構は,「1999年までのカレンダーを記憶させている」とあるので,2000年以降は使えないことになっている。ただし,現物を確認していないので,「99」のつぎに「00」の表示ができないのか,2000年以降はうるう年の処理などが正確にできないだけなのか,そのあたりはわからない。
 オートデート機構が広く使われる前は,ダイアル式の日付写しこみ機構が搭載されたカメラがあった。「年」「月」「日」それぞれの数値を,ダイアルで指定するものである。そのようなカメラの場合,「月」には1〜12,「日」には1〜31の数字が用意されていても,「年」に00〜99の数字を用意しているわけではない。たとえば,Canon A35 DateLuxというカメラでは,「年」に用意されている数字は,78〜88と0〜9だけである(79〜89と0〜9になっているバージョンの存在も確認している)。FUJICA AUTO-5 DATEというカメラでは,「年」に用意されている数字は,79〜95である。いずれも,21世紀を迎えるよりずっと前に,日付写しこみ機構が役に立たなくなっている。

さて,私の手元にあるカメラの多くも,「2019年問題」を抱えているのかもしれない。すぐに出てくるいくつかの機種を確認してみよう。

Canon Autoboy Sは,無事に2020年を迎えられたようである。

Nikon F80も,無事に2020年を迎えられたようである。

SAMSUNG MAXIMA Zoom 105Tiは,「年」を98〜49に設定できる。

フィルムカメラとしては最末期にあたる時期に発売された機種の1つである,FUJI Silvi F2.8は,「年」を00〜35に設定できる。

しかし,Nikon AF600 QD(ニコンミニ)は,2020年を迎えることができず,1993年に戻ってしまった。

繰り返しになるが,2020年を迎えられなくても,カメラそのものの機能が失われたわけではない。気に入ったカメラは,これからも変わらず,使っていけばよいのである。
 デジタルカメラのなかにも,2020年を迎えられなかった機種がある。たとえばOLYMPUS C-1400Lは,2016年までしか対応していなかった(2017年9月24日の日記を参照)。フィルムカメラと違ってデジタルカメラでは,これは大きな問題となる。デジタルカメラで撮影した画像には,容赦なく撮影日時が記録されるのだ。


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