撮影日記


2019年11月03日(日) 天気:曇一時雨

Kodak DCS 400シリーズのシリアルナンバーをさぐる

11月3日は「晴れの特異日」と言われるが,今日は雨がぱらつくこともある,どんよりした1日だった。

先日,Kodak DCS 460の回路に不具合が生じたらしく,撮影に使うことができなくなってしまった(2019年9月28日の日記を参照)。まだ,原因などを特定できていない。今後,それを回復させるあるいは避けるためのめどがたたぬうちは,あらたにKodak DCS 460を入手できるチャンスがあっても,手を出すべきではないと考えていた。
 しかし,Kodak DCS 460を入手できる機会は,めったにない。だから,インターネットオークションに状態のよさそうなものが出品されていたのは,貴重なチャンスである。いまは手を出すべきではないと,頭では理解していても,結局はそれに手を出してしまったのであった。
 ともかく,2台目のKodak DCS 460が私の手元にやってきたのである。
 これは,小型一眼レフカメラという形に一体化されたデジタルカメラとして,はじめて600万画素での撮影ができるようになったものである。歴史的に重要な存在だと思うので,できるだけ実用できる状態で維持しておきたいものだ。

2台目のKodak DCS 460を入手した。

Kodakは,初期のデジタルカメラをリードしてきた存在である。デジタルカメラというものを発明したのはKodakであり,そして業務用に多数のデジタルカメラを出荷してきた。とくに,1990年代半ばから後半にかけて発売された初期のデジタル一眼レフカメラにおいては,Kodakの独壇場であったと言える。
 当時のKodakは,独自ブランドの一眼レフカメラを発売していなかった。そのため発売されたデジタル一眼レフカメラは,NikonやCanonの一眼レフカメラを利用して,Kodakによるデジタル回路が組みあわされたものとなっていた。それらの本体価格は100万円から300万円くらいになるもので,業務用として出荷されたものもあり,一般の市場で目にする機会はほとんどなかったようである。
 一般のユーザがデジタル一眼レフカメラの存在を強く意識できるようになり,また,多くの人が実際に入手するようになったのは,1999年に発売されたNikon D1以降のことと思われる。それなりに売れたことを物語るように,それなりの数の中古品が流通している。参考になるムックも,発売されている。
 それに対して,Kodakから発売されていたデジタル一眼レフカメラが,中古品として流通しているのを見かける機会は,きわめて少ない。機種限定の参考書も,見かけない。

そんな時代のKodakのデジタル一眼レフカメラは,どれくらいの量が出荷されたのだろうか?

あまり見かけない広告や雑誌記事等を参照すると,Kodakのデジタル一眼レフカメラには,次のような機種が存在することがわかる。なおここでは,カメラの機構等の変化を追いやすくするため,ニコンFマウントのモデルに限定して記載した(ほぼ並行して,キヤノンEFマウントのモデルや中判カメラ用デジタルバックも存在する)。

 
機種 特徴
1991 DCS 100 Nikon F3を利用。データ記録部は別ユニットで,本体とケーブルで接続。
1992 DCS 200 Nikon N8008 (F-801)を利用。HDD内蔵モデルは,はじめての一体型デジタル一眼レフカメラ。
1994 DCS 400シリーズ Nikon N90 (F90)を利用。DCS 460は一体型としてはじめての600万画素モデル。記録メディアはPCMCIA規格で着脱式。
1998 DCS 300シリーズ Nikon PRONEA 6i (600i)を改造。
1999 DCS 600シリーズ Nikon F5を改造。カラー液晶モニタを内蔵。電源がバッテリーパック化。
2001 DCS 700シリーズ DCS 600シリーズの改良型。処理速度の向上と価格の低下を実現。
2002 DCS Pro 14n Nikon F80をもとにした独自のボディ。ライカ判サイズのCMOSイメージセンサを採用。
2004 DCS Pro SLR/n DCS Pro 14nの改良型。Kodak DCSデジタル一眼レフカメラとしての最終モデル。

これだけの機種が存在するにもかかわらず,中古カメラとして流通するのを見かける機会が少ないのは,どうしたことか。理由としては,いろいろなものが考えられる。
 まず考えられる理由は,デジタル機器としてはあまりに古いことだ。カメラというもの,とくに高級機は,かつては「一生モノ」とまでよばれることもあったくらい,長く使えるものである。しかし,デジタルカメラに対しては,そういう意識は低い。年々,性能が向上していた時代の製品は,発売後1年も経過すれば,そのスペックはあまりに時代遅れに感じられたこともある。つまり,中古品としての商品価値が生じない,という事情が考えられる。
 あくまでも業務用として使われていたことも,理由として考えられる。個人が購入したものであれば,買い替えの機会に下取りや売却などされることも少なくない。そうすれば,製品が中古品として流通することにつながる。しかし業務用として組織が導入したものであれば,償却後は廃棄処分される可能性がある。
 さらに,そもそも生産された数が少ないことが考えられる。たとえば,中古カメラ店でよく見かける,PENTAX SPやCanon AE-1などの生産台数は,100万台を優にこえるとのこと。Nikon Fでも,100万台に近い数が生産されているという。発売されてから40〜50年が過ぎているのに,中古カメラ店でよく見かけるのは,それだけたくさん流通したことが大きく影響しているだろう。それに対して,Kodakのデジタル一眼レフカメラは,発売されてからせいぜい20年程度である。それにもかかわらず見かけることが少ないのだから,PENTAX SPなどにくらべると生産された数は,1桁も2桁も少ないものにすぎないと想像することができる。

それを物語るような数字が,コダック株式会社のプレスリリース「Kodak社製初期プロ用一眼レフデジタルカメラを日本カメラ博物館へ寄贈」(*1)に見られる。Kodakの初期のデジタル一眼レフカメラを,日本カメラ博物館に寄贈することを公表するものであるが,寄贈するカメラの説明文中に,販売された台数が記載されている。それによると,Kodak DCS 100が全世界で987台,kodak DCS 200が世界で3240台とのことである。たしかに,PENTAX SPの数にくらべると,1桁や2桁どころか,3桁くらい違っている。これだけの条件が重なれば,中古カメラ店で見かける機会がごく少ないのも,当然のことであろう。

さて,Kodak DCS 100やKodak DCS 200が流通した数は,かなり少ないことがわかった。
 見かけることが少ないとはいえ,それらよりはまだ見かけることのある,Kodak DCS 400シリーズは,どれくらいの数が流通したのだろうか。
 Kodak DCS 400シリーズに関する公式のアナウンスがなにか残っていないか,Internet Archivesで以前のKodakのWebサイトをさがしてみた。そこで見つけたものは,「プロフェッショナルデジタルカメラのバッテリーパック無償交換のご案内」(*2)という文書である。これは,初期のKodak DCS 400シリーズカメラに内蔵されていたバッテリーパックに不具合があるため,新型に無償で交換することをよびかけるものである。そこには,対象になる製品のシリアルナンバーが以下のように記載されている。

機種 対象製品のシリアルナンバー
DCS 420M 420-9000〜420-9120
DCS 420C 420-0150〜420-3560
DCS 420IR 420-9800〜420-9830
DCS 460 460-1000〜460-1280

文書で公開されているのは,シリアルナンバーの範囲だけである。シリアルナンバーのはじめの3桁は機種をあらわし,おわりの4桁は通し番号であると考えられる。また,Kodak DCS 420Mや420IRといった特殊なモデルには,通し番号で9000番以降が割り当てられているようである。

「420」はDCS 420であることを,「460」はDCS 460であることをあらわす。

シリアルナンバーには欠番がないとすれば,単純に引き算をした値が,対象となる台数になると考えられる。Kodak DSC 400シリーズの発売は1994年半ばであるが,対象になっている製品の発売期間が何箇月分に相当するのかは,この一覧だけからはわからない。
 少しだけ推定できることとして,Kodak DCS 400シリーズは,いちど前期型から後期型にマイナーチェンジがされていると考えられることがある。マイナーチェンジの内容として想像できていることは,たいしたものではない。組みあわせるカメラ本体が,Nikon N90 (Nikon F90のアメリカ向けモデル)からNikon N90s (Nikon F90Xのアメリカ向けモデル)に変更されていることと,デジタルバック部分前面右下のロゴが「Kodak DCS」から「Kodak ds digitalscience」というものにかわっているという2点だけであった(2019年6月27日の日記を参照)が,もしかするとこのときに,内蔵のバッテリーが新型に変更されていたという可能性はありそうだ。

Nikon N90sと組みあわされ,前面のロゴが「ds digital science」になっているものを「後期型」とする。

Nikon F90Xの発売が1994年10月なので,このマイナーチェンジは1995年の早い時期におこなわれたと考えられる。すると,バッテリー無償交換の対象になっている製品は,半年分くらいの出荷量に相当すると想像できる。
 Kodak DCS 400シリーズの販売終了時期は,はっきりわかっていない。しかし,2000年ごろに在庫処分セールがおこなわれていたようなので(*3),後継機であるKodak DCS 600シリーズが発売された1999年ころまでには,製造が終了していただろうと思われる。すると,販売期間は1994年半ばから1998年末までの,およそ4年半となる。

上の表で,バッテリーの交換対象になっているカメラの台数は,あわせて4000台弱となる。これが,半年分の生産量であるとするならば総生産台数はその9倍で,30000台をこえることになる。それにしても,PENTAX SPなどの生産台数より,2桁も少ないものである。
 このあたりの裏付けになる情報が得られないものかと,Kodak DCS 400シリーズのシリアルナンバーの収集をこころみた。実際に所有しているものや,eBayなどに出品されている製品の画像などから収集できたシリアルナンバーは,次の通りである。

機種 シリアルナンバー 備考
DCS 420C前期420-3475eBayで目撃
DCS 420C後期420-5231eBayで目撃
DCS 420C後期420-5265eBayで目撃
DCS 420C後期420-6748実機を所有
DCS 420C後期420-8093eBayで目撃
DCS 420M前期420-9127eBayで目撃
DCS 460C後期460-1736実機を所有
DCS 460C後期460-2097所有者からの報告(*4)
DCS 460C後期460-2635実機を所有

Kodak DCS 420Cの420-3475が前期型(ロゴが「ds」ではなく「DCS」)になっているのは,バッテリー無償交換対象の製品が前期型に相当するのではないか,という推定と整合する。Kodak DCS 420Mの420-9127は前期型でありながら,バッテリー無償交換対象になっておらず推定と整合しないが,シリアル番号はごく近いので許容される範囲であると思いたい(たとえば前期モデルとして製造後,出荷直前にバッテリーだけ差し替えられた,などの可能性がある)。
 もし,Kodak DCS 400シリーズの総生産台数が30000台くらいあるならば,通し番号が4桁だけでは足りなくなる。しかし,それを補うようなシリアルナンバーは,いまのところ見つかっていない。見つかったシリアルナンバーだけで考えれば,Kodak DCS 420Cで8000台強,Kodak DCS 460Cでせいぜい3000台程度だったのかもしれない。バッテリー無償交換対象になった製品の製造期間が1年分程度であり,シリーズ全体の製造期間が3年程度であったとすれば,総生産台数は12000台くらいとなって,収集したシリアルナンバーから推測できる規模と整合しそうである。

このように,Kodak DCS 400シリーズの総生産数は12000台くらいではないか,ということをとりあえずの結論とした。しかし,あまりにデータが少なく,あまりに乱暴な推定である。推定というか,まったくの想像である。もう少し,しっかりしたなにがしかの情報がほしいところだ。

*1 Kodak社製初期プロ用一眼レフデジタルカメラを日本カメラ博物館へ寄贈 (コダック株式会社)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/news/2011/0404.shtml

*2 プロフェッショナルデジタルカメラのバッテリーパック無償交換のご案内  (コダック株式会社)
※Internet Archivesのデータ。
https://web.archive.org/web/19970525140536/http://www.kodak.co.jp/KPD/6p112400.shtml

*3 Pick up a professional bargain (Published Nov 21, 2000 | dpreview staff )
https://www.dpreview.com/articles/1435612098/kodakprocloseout

*4 twitterにおける @korekichi_san の発言
https://twitter.com/korekichi_san/status/1148579137264553984


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追記:2019年11月25日(月) 天気:曇一時小雨

あらたなシリアルナンバーが観測されたので,追記する。

機種 シリアルナンバー 備考
DCS 420C前期420-3475eBayで目撃
DCS 420C後期420-5231eBayで目撃
DCS 420C後期420-5265eBayで目撃
DCS 420C後期420-6748実機を所有
DCS 420C後期420-8093eBayで目撃
DCS 420M前期420-9127eBayで目撃
DCS 460C前期460-1242eBayで目撃
DCS 460C後期460-1736実機を所有
DCS 460C後期460-2097所有者からの報告(*4)
DCS 460C後期460-2635実機を所有

あらたに観測された,Kodak DCS 460c前期型(460-1242)は,バッテリー無償交換対象のシリアルナンバーであり,バッテリー無償交換対象の製品が前期型に相当するのではないか,という推定と整合する。




追記:2019年12月06日(水) 天気:曇

あらたなシリアルナンバーが観測されたので,追記する。

機種 シリアルナンバー 備考
DCS 420C前期420-3475eBayで目撃
DCS 420C後期420-5231eBayで目撃
DCS 420C後期420-5265eBayで目撃
DCS 420C後期420-5795eBayで目撃
DCS 420C後期420-6431eBayで目撃
DCS 420C後期420-6748実機を所有
DCS 420C後期420-8093eBayで目撃
DCS 420M前期420-9127eBayで目撃
DCS 460C前期460-1242eBayで目撃
DCS 460C後期460-1736実機を所有
DCS 460C後期460-2097所有者からの報告(*4)
DCS 460C後期460-2635実機を所有

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