撮影日記


2019年08月12日(月) 天気:晴れ

「パンプキン!」

ここ何年も,書店の数は減少傾向にあるという(*1)。私が生まれた町,それを一言で言えば,故郷ということもできる。その故郷の町でも,昨年ついに,歩いて行ける範囲から書店がなくなってしまった。その周辺にあったはずの古書店も,いつしか姿を消している。もしかしたら,ごく小規模な個人営業の書店や,学校の教科書と取り次ぐことを専業にしているような書店はあるのかもしれないが,現在,流通している書籍を,それなりにそろえた規模の書店が姿を消してしまったのである。
 現実には,電車に10分も乗れば着くターミナル駅には,大規模な書店がある。週刊誌くらいであれば,コンビニエンスストアで買える。また,「読みたい」ことがわかっている書籍は,通信販売で買うことができる。だから,書籍の入手に困ることはない。しかし,実際に書店で手に取ってなかを確認してから買うことも,1つの楽しみである。また,目当ての書籍をさがす過程で見かけた,別の書籍に興味をもつこともある。

その後,故郷の町にあったさいごの書店にお勤めだった方が,その近傍に書店を開業された。残念ながら,開店が11時ころで,19時には閉店してしまう。だから,仕事で訪れたついでには,そこに立ち寄ることができない。いちどだけ,開店準備中のところを訪れることができ,「児童書を中心に新刊も古書も扱おうと思っている」というお話をうかがうことはできたが,そのあとに仕事が控えていたので,開店を待ってお店を覗くことができないでいた。
 今日も,猛暑である。しかし,このあとに,とくに予定はない。だからようやく,そのお店に入ることができた。

CONTAX Tvs, ACROS

お店のなかは,ゆったりとレイアウトされている。屋外に置かれた特価本コーナーを除けば,古書店にありがちな雑然さは微塵も感じない。あくまでも新刊の読み物が中心で,カメラや写真に関する古書籍はあまりないようだ。「児童書を中心に」と聞いていたせいか,子ども向けの本に気になるものがいくつかあった。そのなかで,新刊書として置かれていたこの「パンプキン!」という書籍を,つい手にとってしまった。

田辺小学校のところに落とされたという「模擬原爆」(2014年8月5日の日記を参照)をテーマにしたお話しである。長崎に使った原子爆弾とほぼ同型の「模擬原爆」を使った投下訓練は,全国各地でおこなわれたという。この本を手に取り,なかをパラパラと確認する。扱っているのは,田辺小学校のとのころのものだ。これは,読むべき本である。
 このようなお話が出版されたことは知らなかったので,店主に聞いてみる。ずっと以前に単行本として発行されたが,このたび文庫化もされたとのこと。月末には作家さんがこられてサイン会をするとのことだが,残念ながらその日にはお店に行けそうにない。

あらためてじっくりと読むと,模擬原爆の碑は「田辺の駅から,広い道沿いに,ほれ,風呂屋の前通って。」という場所にあることが描写されている。この本が書かれたときには,まだ「天然温泉田辺」は健在だったのだろう(2008年5月10日の日記を参照)。

「パンプキン!」を手に取る前に目をつけていた本は,岩崎少年文庫の「広島の姉妹」である。

原爆に関する書籍が目についたのは,やはりこの時期だから,ということだろう。ただ,もしかすると私が手にするのではなく,ほかの人に読んでもらうべきだったのかもしれない,という気もしている。

*1 書店数の推移 1999年〜2017年 (日本著者販促センター)
http://www.1book.co.jp/001166.html


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