撮影日記


2018年11月06日(火) 天気:晴

前後に長いのがこの時代の特徴
キヤノン オートボーイジェット

小型カメラというものは,基本的なスタイルが古来より大きくは変化していない,といえる。具体的には,縦よりもやや横に長い形状のボディのほぼ中央か,向かって少し右に寄ったところに撮影用のレンズが取りつけられている。そして,カメラをかまえたときの右手側でシャッターレリーズの操作をおこなうようになっている。1920年代のライカI型から1980年代の各種コンパクトカメラ,そして最近のディジタルカメラに至るまで,大きくは変わっていないのである。
 しかしときには,それまでにはありえなかったような形態のカメラが発売されることがある。
 たとえば,1960年ころにハーフサイズカメラのブームがあったときには,Canon DIAL 35やYashica Rapide,TARON Chicなど,横長ではなく縦長の形状のボディをもつカメラがあらわれている。1990年代末にディジタルカメラが普及しはじめたころには,レンズ部が回転したり,レンズ部をはずしてケーブルで接続して撮影できるようなものなど,フィルムを使ったカメラではありえないようなスタイルの製品があらわれている。
 コンパクトカメラにズームレンズが搭載されるようになり,一眼レフカメラにオートフォーカス機能が取り入れられるようになった1990年代前半を中心に,のちに「ブリッジカメラ」とよばれるようになるカメラの流行があった。これには2つのタイプがあり,1つは,オートフォーカス機構をもったフォーカルプレン式シャッターの一眼レフカメラであるが,レンズ交換ができないタイプのものだ。もう1つは,一般的なコンパクトカメラよりも大柄なボディに大きめのズームレンズを搭載した,高機能なレンズシャッター式のビューファインダーカメラである。フォーカルプレン式シャッターの一眼レフカメラと,レンズシャッター式のビューファインダーカメラということで,まったく異なるしくみのカメラであるが,外見上の共通点が1つある。それは,どちらもズームレンズを搭載していることから,前後に長いスタイルをしていることである。

1990年に発売されたCanon Autoboy JETは,レンズシャッター式「ブリッジカメラ」の1つである。

ぱっと見た目は,少し大きめの一眼レフカメラ用ズームレンズである。そこに,グリップやフラッシュがついているようなスタイルである。レンズキャップを開くと,それはフラッシュになっており,撮影レンズのズーム操作にともなって,発光部の前のレンズが前後し,照射角が調整される。操作部の多くは,カメラをもったときの右手が届く範囲に集中しており,片手でも撮影ができる。

「ブリッジカメラ」は,業界が統一的に用いていた用語なのかどうかは,確認していない。また,一眼レフカメラではない「ブリッジカメラ」には,明確な定義がなさそうである。これらのことから,個人的には「ブリッジカメラ」という語句は嫌いである。しかし,こういうタイプのカメラが集中的に発売された時期があったことは,歴史上の重要な事実である。


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