撮影日記


2018年10月18日(木) 天気:晴

いまあらためて「標準レンズ」がほしくなる

最近,TAMRON SP 45mm F1.8というレンズが,気になっている。

レンズ交換のできるカメラには,「標準レンズ」とされる焦点距離のレンズがある。それよりも焦点距離が短く,より広い範囲が写るようになっているレンズは「広角レンズ」とよばれ,逆に焦点距離が長く,写る範囲がより狭いものに限定されているレンズは「望遠レンズ」とよばれる。また,「標準レンズ」とされる焦点距離を中心に,より短いほうへも長いほうへも焦点距離を変えられるような「標準ズームレンズ」とよばれるものもある。

標準レンズの焦点距離は,厳密には決まっていない。ただ,ライカ判のカメラにおいては古くから,なかば習慣的に,50mmくらいの焦点距離をもつレンズが,標準レンズとして扱われている。
 単焦点の標準レンズには,いろいろな特徴がある。
 1つは,価格が安価なわりには,高性能であることだ。以前は,カメラボディとセットで売られることも多かったから,大量生産によって販売価格を抑えられるという効果があっただろう。最近では,標準ズームレンズがカメラボディとセットで売られるようになり,安価なものも発売されている。そのため相対的に,単焦点の標準レンズは,高価で高性能なレンズとして位置づけられるようになっている。
 そう,高性能であることも,単焦点の標準レンズの特徴だ。なにより,基本的に明るいレンズである。F1.4はあたりまえで,F1.2というさらに明るいレンズのラインアップも見られた。廉価版とされるF1.8やF2のレンズでも,高級ズームレンズでよくあるF2.8より明るいのである。たぶん,広角レンズやズームレンズにくらべれば,設計や製造に無理がないのであろう。

F1.4の標準レンズ NIKKOR-S Auto 50mm F1.4

一方で,50mmレンズは扱いにくい,という印象をもつ人もある。たしかに50mmレンズで写せる範囲は,思ったよりも狭いものである。ぱっと目に入った光景を撮ろうと思えば,慣れていないうちは数歩くらいは後ろに下がる必要があるだろう。逆に,遠くのものを大きく写せるという印象も受けない。
 私も,どちらかというと50mmレンズは苦手に感じる。
 とくに風景を撮るときには,もう少し焦点距離が短いほうが,落ち着く感じがする。だからといって,35mmレンズでは明らかに広角レンズなので,撮りたいと思っているものとは違ってくる。

6×9判のMamiya Universal Pressで風景を撮るときは,100mm F3.5のレンズをよく使う。
 Mamiya Universal Pressでは標準レンズとしては,90mm,100mm,127mmが用意されているが,このうちでは100mmがいちばんしっくりくる。

マミヤプレス用の標準レンズ Mamiya-sekor 100mm F3.5と127mm F4.7

6×9判で100mmレンズを使ったときに写る範囲は,ライカ判で43mmレンズを使ったときに写る範囲と同等である。50mmレンズより写る範囲が広いが,35mmレンズほどの広角レンズである必要はではない,という私の感覚にあっているのだ。

そこで,焦点距離が40mmから45mmくらいのレンズに興味がわくことになる。
 とくに焦点距離45mm程度のレンズは,コンパクトなものというイメージがある。45mmくらいのレンズとしては,これまでに「パンケーキレンズ」ともよばれる,薄型のレンズがいろいろと発売されてきたから,その印象が強いのだろう。たとえば,ヤシカ(京セラ)が発売したTessar T* 45mm F2.8やコニカが発売したHEXANON AR 40mm F1.8などがそのようなレンズの例とされる。

Tessar T* 45mm F2.8とHEXANON AR 40mm F1.8

とくにTessar T* 45mm F2.8は以前から興味のあるレンズだったので,「よい出会い」があったときに入手した(2006年3月9日の日記を参照)。実際に撮ってみると,写る範囲については期待通り,描写も評判通りすなおなもの。ただ,小さすぎるので,操作は必ずしも快適ではない。一方,HEXANON AR 40mm F1.8は,その明るさも魅力的である(2018年6月11日の日記を参照)。
 なにより残念なことは,それらがニコンFマウント用のレンズではないこと。やはり,使い慣れているしそのほかのレンズもじゅうぶんにそろえているニコンの一眼レフカメラ,あるいはニコンFマウントのディジタル一眼レフカメラでも使いたいものである。

最近になって,TAMRON SP 45mm F1.8というレンズの存在を知った(*1)。仕様を見ると,魅力的に感じるところが多い。そこで,あらためて,ニコン用の標準レンズが気になってきたのである。

まず,ニコンから発売された焦点距離45mmくらいのレンズは,2種類しかない。GN AUTO NIKKOR 45mm F2.8とAi NIKKOR 45mm F2.8Pである。いずれもすでに販売されていない古いレンズであり,中古品でしか入手できない。「ほしい」と思ったときに,ぽんと注文できるようなものではないのである。また,Ai NIKKOR 45mm F2.8Pはオートフォーカスの一眼レフカメラやディジタル一眼レフカメラの各機種で使うときに制約がほとんどないが,そもそもがマニュアルフォーカス用のレンズなので,オートフォーカス撮影はできない(*2)。

45mmという焦点距離以外の要素は,AF NIKKOR 50mm F1.8Dもじゅうぶんに満たしてくれる(*3)。レンズはコンパクトであるが,「パンケーキレンズ」として企画されたわけではないようで,小さすぎることはない。明るさも,じゅうぶん。オートフォーカス用レンズであり,かつ絞りリングもあるタイプのレンズなので,マニュアルフォーカスの一眼レフカメラ,オートフォーカスの一眼レフカメラ,ディジタル一眼レフカメラの多くの機種で,制約なく使える。ただし写りについては,以前からよく使っているマニュアルフォーカスのAi NIKKOR 50mm F1.8などと大差がなさそうなので,いまさら購入するのもおもしろくない。あたらしい,AF-S NIKKOR 50mm F1.8は光学系もあたらしくなっていそうなので魅力的であるが,レンズに絞りリングがないことと,かなり大柄なレンズになったことに抵抗がある(*4)。

では,TAMRON SP 45mm F1.8は,どうだろうか。
 ちょうど興味のある焦点距離で,しかもF1.8というじゅうぶんな明るさをもつ。ボケ具合もすなおなようで,写りについても期待できる。絞りリングがないので,マニュアルフォーカスの一眼レフカメラでは使えないケースもあるが,ディジタル一眼レフカメラでの使用を重視すれば問題ない。ただ,最近の大口径レンズは,画質を優先してのことだろうが,コンパクトさに対してまったく遠慮がないようで,このレンズも大きなものに感じられる。

ともあれ,「ほしいもの」があるときに,「どれが好都合であるか」迷うことは,とても楽しいことなのである。

*1 SP 45mm F/1.8 Di VC USD (株式会社タムロン)
https://www.tamron.jp/product/lenses/f013.html

*2 AI Nikkor 45mm F2.8P (株式会社ニコン)
http://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/ai_nikkor_45mm_f28p/

*3 AI AF Nikkor 50mm f/1.8D (株式会社ニコン)
http://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/ai_af_nikkor_50mm_f18d/

*4 AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (株式会社ニコン)
http://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/af-s_nikkor_50mm_f18g/


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