撮影日記


2017年10月01日(日) 天気:くもり

望遠逆アオリ撮影の効果は?

被写体の面,レンズ面,フィルム(あるいは撮像素子)面がすべて平行になっているとき,画面全体にピントのあった像が得られる。精密に製造されたカメラでは,レンズ面とフィルム面との平行は保たれている。しかし,被写体の面が都合よく平行になっているとはかぎらない。被写体がカメラに対して斜めになっていれば,どうしてもカメラに近い側と遠い側とではピントがずれてしまう。
 そのようなときに,全体にピントをあわせる方法は2つある。
 1つは,十分に絞りこむことだ。絞りこむことで,ピントがあったように見える範囲を広げることができるが,そのかわり必要な露光時間が長くなってしまう。また,絞りこみすぎることが,画質の低下につながる場合もある。
 もう1つの方法として,アオリというテクニックが使われる。レンズ面およびフィルム面を平行からずらし,被写体の面,レンズ面,フィルム面の延長が1つに交わるようにしたとき,被写体の面全体にピントがあう(シャインプリューフの法則)。このテクニックは,おもに大判カメラで使われる。大判カメラは,レンズボードとフィルムホルダとが蛇腹で接続され,それぞれが自由に動けるようになっているためである。
 アオリ操作によって被写体全体にピントをあわせられるようになるが,意図的に逆に操作することで,ピントのあう範囲をごく狭めるような撮り方がされることもある。最近では,実際の風景をミニチュアのように見せる,本城直季氏の作品が有名であろう。

注文していたことを忘れていたマウントアダプタが,Chinaの業者から送られてきた。

ソニーαNEX-C3にキヤノンFDマウントのレンズを装着するための,マウントアダプタである。
 このマウントアダプタで使ってみたいのは,Canon FDレンズではない。以前,タチハラ・フィルスタンド45にキヤノンFDマウントのカメラを接続できるようにした(2015年6月11日の日記を参照)。それを,ディジタルカメラでも活用してみたくなったのである。

昨日は,よく晴れていた。
 標準から広角系の焦点距離で撮れば,自分から見て斜めに渡る鉄橋でも,全体にピントがあっているように見える。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

ここで「逆アオリ」の効果を利用してみよう。
 TACHIHARA Fielstand45には,FUJINON W 210mm F5.6を装着し,シャッターは開放にしておく。後部には自作のFDマウント付きボードをとりつけ,マウントアダプタを使ってSONY αNEX-C3を取りつける。

SONY αNEX-C3の液晶モニターを少しはねあげれば,楽な姿勢のままで構図を決めることができる。拡大機能を利用すれば,少々まどろっこしいものの,ピント調整にルーペは不要だ。

4×5判における210mmレンズは,ライカ判における60mm相当程度の,長めの標準レンズといえる焦点距離のレンズである。しかし,APS-Cサイズの撮像素子をもつSONY αNEX-C3で使うならば,ライカ判で300mm程度の超望遠レンズに相当するものになる。

SONY αNEX-C3, FUJINON W 210mm F5.6

うまく,電車の正面以外は大きくボケてくれた。しかし,微妙にピントをはずしている。シャッターレリーズが,早すぎた。この電車がもう少し進んだ位置(架線柱との距離がこの状態の半分くらいの位置)で撮るつもりだったのだ。ほかでもないが,SONY αNEX-C3は,シャッターレリーズボタンに指をかけてから,実際に露光されるまでの間が,少々長い。その間隔があまり気にならないカメラを使う感覚で撮ると,電車が想定していた位置から行きすぎてしまうので早めにレリーズをおこなったのだが,それでは早すぎたのである。

SONY αNEX-C3, FUJINON W 210mm F5.6

シャッターレリーズのタイミングがつかみにくいのはSONY αNEX-C3の問題ということで,4×5判の組立暗箱を利用した逆アオリ撮影そのものに問題があるというわけではない。


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