撮影日記


2017年09月21日(木) 天気:はれ

シグマ「ミニズーム・マクロ」は使える安ズーム

「シグマ」というメーカーに対する印象は,人によって異なるものがあると思う。たとえば,FOVEONセンサを用いたディジタルカメラに,先進性を見出す人もあるだろう。一定の高い評価を得ている交換レンズ群に,魅力を見出す人もあるだろう。いっぽうで,廉価に供給された交換レンズ群のイメージが強い人もあると思う。
 実際にシグマは,ニコンやキヤノンなどが純正品として供給するよりも安価に,交換レンズを供給してきたメーカーである。たとえば,日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.113」(1997年)を見てみよう。
 「サンニッパ」といえば,300mm F2.8の意味で,大口径望遠レンズの代表例だ。ニコンの製品では,AF NIKKOR ED 300mm F2.8Sに456,000円という価格がつけられている。それに対してシグマのAPO 300mm F2.8 ZENは,345,000円だ。
 あるいは,ニコンやキヤノンが発売していないようなレンズを供給してきた。このときニコンから発売されていた超広角レンズに,Ai NIKKOR 15mm F3.5やAi NIKKOR 13mm F5.6というものがあった。15mm F3.5の価格は233,000円で,13mm F5.6は1,034,000円である。よほどの明確な必要性がないと,とても購入できないレンズである。ところがシグマからは,14mm F3.5というレンズが発売されていた。価格は75,000円である。しかも,ニコンにはないオートフォーカスのモデルも用意されていた。ニコンの製品だと,とても買えそうにない特殊なレンズに手が届くのである。だから,この機会を逃してはならないと考え,なんとか在庫が残っていたものを1999年に購入することができた(1999年4月6日の日記を参照)。
 特殊で高価なレンズに対して,シグマは比較的廉価な製品を提供してきた。一般的なレンズに対しても,シグマは比較的廉価な製品を提供している。
 たとえばカメラとセットで販売されるようなタイプの標準ズームレンズとして,ニコンからはAF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.5-5.6Dというものが33,000円で発売されている。それに対してシグマからは28-80mm F3.5-5.6(ミニズームマクロ)というものが,28,000円で発売されていた。比較的廉価な純正品に対しては,さらに低価格な商品を提案しているのである。

SIGMA 28-80mm F3.5-5.6は,低価格であることをもっとも重視したと思われる製品であるが,気になるポイントもあった。「ミニズームマクロ」という名称にもあるように,最大で1/2倍までの接写が可能な仕様になっていることである。具体的には,ズームリングを80mmの位置にしたときにスイッチを「MACRO」に切りかえることで,最短撮影距離0.25mまで接近でき,最大で1/2倍(フィルム/撮像素子面上に写る像の大きさが実物の1/2倍)の撮影ができる,というものである。

便利そうなレンズとして気になる1本であったが,無理をしてまで入手して使いたいという欲求もなかったためか,あるいは私と同じように気にしている人が多いのが,意外と「よい出会い」がなく,ようやく入手することができたのである。
 このレンズにおいて,接写機能はあくまでも「オマケ」である。また,基本が廉価なズームレンズである。だから,「マクロ」レンズを名乗っているとはいえ,すさまじいほどの解像力や,美しいボケ味などを求めるわけにはいかないだろう。それでも,花を撮るのであれば,ほどよく甘くほどよくシャープな画像が得られるのではないかと,期待する。

Kodak DCS Pro 14n, SIGMA 28-80mm F3.5-5.6 Macro

なによりも,ここまで寄れることが便利である。このころの廉価版ズームレンズらしくやや硬調に感じるものの,背景もすべてボケてくれるから,こういう撮り方においては問題ないだろう。

Kodak DCS Pro 14n, SIGMA 28-80mm F3.5-5.6 Macro

ボケは,基本的に美しくない。被写体がヒガンバナだから,とくにごちゃごちゃして汚く見えている。その点については,背景がすっきりして見えるように構図を選べばなんとかなる。
 あくまでも廉価版レンズだから,多くを期待することはできない。それでも軽いレンズだから携帯しやすく,使い道はなにかと見つけられるのではないだろうか。


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