撮影日記


2017年07月27日(木) 天気:晴

チノンのイチガンは珍しい? CHINON CP-9 AF

1985年にMINOLTA α-7000が発売された後,いろいろなメーカーからレンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラが発売されるようになった。このときにオートフォーカスの一眼レフカメラを発売しなかったコニカやフジなどは,一眼レフカメラの市場から静かに去っていった。
 各社からレンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラが発売されていった状況を,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」でたどってみよう。vol.82(1985年2月)では,MINOLTA α-7000のみが該当するが,vol.85(1986年2月)では,Nikon F-501AFとMINOLTA α-9000が加わっている。さらにvol.87(1986年9月)ではMINOLTA α-5000が加わって,ミノルタのラインアップが充実していった。vol.88(1987年2月)では,PENTAX SFX,OLYMPUS OM707,Canon EOS650とEOS620,KYOCERA 230-AFが掲載されて,レンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラのメーカーが出そろった。

vol. PEMTAX OLYMPUS Canon KYOCERA CHINON Nikon MINOLTA
1985 82             α-7000
1986 85           F-501AF α-7000
α-9000
1986 87           F-501AF α-7000
α-9000
α-5000
1987 88 SFX OM707 EOS650
EOS620
230-AF   F-501AF α-7000
α-9000
α-5000
1988 91 SFX OM707 EOS650
EOS620
230-AF
210-AF
200-AF
CP-9AF F-501AF
F-401
α-7000
α-9000
α-5000
1989 94 SFXn
SF7
OM707 EOS650
EOS620
EOS750
EOS850
230-AF
210-AF
200-AF
CP-9AF F-501AF
F-401
F-801
F4, F4S
α-7000
α-9000
α-5000
α-7700i
α-3700i

しかし,レンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラを発売したメーカーは,これだけではない。ペンタックス,オリンパス,キヤノン,京セラ,ニコン,ミノルタに加えて,もう1社ある。vol.91(1988年3月年)をよく見れば,チノンからCHINON CP-9 AFというレンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラが発売されているのを見つけられるはずだ。

チノンCP-9 AF
7社目のAF一眼レフカメラ チノンCP-9 AF

日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.91(1988年3月)での説明文には,CHINON CP-9 AFは「9種類の露出モードが選択できる」とある。その内容は,オートズームプログラムAE(ふつうのプログラムAEだが,ズームレンズを望遠側にするとシャッター速度が速くなる),絞り優先プログラムAE(できるだけ絞り込もうとする),シャッタースピード速度優先プログラムAE(できるだけ速いシャッター速度を使おうとする)に加えて,AEB(露出をずらしながら連続して撮影する),絞り優先AE,マニュアル,バルブ露出となっている。また,インターバルタイマー撮影機能もあると説明されている。さらに,vol.93(1988年9月)では,オートフォーカス用レンズに「レンズ内モーター駆動式」という一文が追加された。このように,とても魅力的なことが書かれている。ただし,オートフォーカス撮影用の交換レンズは,28-70mm F3.5-4.5と70-210mm F4.5のわずか2本しか掲載されていない。そして,このレンズのマウントについて,なにも書かれていない。チノンはCHINON CP-9 AFと同時期に何機種かの一眼レフカメラを発売しており,それらはKマウントと互換性のあるレンズマウントを採用しているので,CHINON CP-9 AFのレンズマウントもKマウントと互換性があるものと予想できるが,そのことは明記されていないのである。また,Kマウントと互換性があるとして,PENTAXのオートフォーカスシステムとの互換性などはどうなっているのだろうか,まったくわからない。
 以前から気になる機種の1つだったのだが,ともかく中古カメラ店などで見かけたことがない。日本国内では,あまりにも売れていなかったのだろうか。OLYMPUS OM101も見かける機会の少ない一眼レフカメラだったが,見かけたことがまったくなかったわけではない。フジカAXシリーズもそうだ,見かける機会は少ないが,まったく見かけなかったわけではない。これらにくらべれば,Mamiya ZEシリーズはとてもメジャーな存在だったと思えるほどである。

CHINON CP-9 AFは,流通する数がかなり少ない機種だと思うが,それ以外の機種も見かけることは少ない。そもそも,チノンの一眼レフカメラは,少なくとも日本国内ではどちらかというと珍しい存在になっているようだ。

さて,せっかく珍しい存在のカメラがやってきたのだから,まずは,いちばん気になることを確かめたい。
 CHINON CP-9 AFのレンズマウントは,Kマウントと互換性があるのだろうか?
 SMC PENTAX-M 50mm F1.7をはめてみたところ,きちんと装着することができた。レンズマウントの形状はKマウントと共通であることが確認できた。

CP-9 AFにSMC-M 50/1.7を装着
チノンCP-9 AFはKマウント機

つぎに,動作をたしかめよう。幸いにも,電池ボックスはきれいだ。接点に腐食が見られるようなこともなく,蓋のロックにも問題はない。電池を装填し,電源スイッチをオンにする。シャッターレリーズボタンを半押しすると,ひと呼吸おいて,レンズが動いた。ファインダーを覗くと,ピントもちゃんとあっている。オートフォーカスは,問題なく動作しているようだ。
 CHINON CP-9 AFは,ピントリングを駆動するモーターがレンズに内蔵されている。そのせいか,ピントリングの回転は,とても速く感じられる。しかし,オートフォーカスのセンサは発展途上にあるのだろうか,シャッターレリーズボタンを半押ししてから,レンズのピントリングが動作しはじめるまで,少し間が生じる。それでも,動き出せばピントあわせは爆速だ。キヤノンやニコンのような超音波モーターではないようで,動作音も爆音である。

CP-9 AFモード切替ボタン
チノンCP-9 AFの露出モード変更ボタン

CHINON CP-9 AFは,マルチモードAE機である。シャッターレリーズボタンの隣にある四角いボタンで,マニュアル露出,プログラムAE,絞り優先AE,バルブを切りかえる。シャッター速度優先AEは,設けられていない。
 選択したモードは,巻き戻し側にある液晶ディスプレイに表示される。設定した絞り値やシャッター速度などの情報も,ここに集中的に表示される。

CP-9 AFのLCD Pモード
チノンCP-9 AFの液晶ディスプレイは左側にある

それに対してファインダー内の表示は,シンプルだ。よくある追針式露出計をLEDに置きかえたものになっており,シャッター速度を読み取ることはできるが,絞り値を読み取ることはできない。

レンズマウントの形状が,Kマウントと互換性があることは確認できた。つぎに,マウントの機能にどこまで互換性があるかを確認しよう。

CP-9 AF ボディとレンズのマウント面
チノンCP-9 AFのレンズマウント内には電気接点がある

CHINON CP-9 AFは,オートフォーカス用レンズにモーターが内蔵されている。そのため,この当時のペンタックスのオートフォーカス一眼レフカメラに見られるような,レンズのピントリングを駆動するためのシャフトが存在しない。かわって,マウント内に電気接点がある。各種の情報をやりとりするとともに,ピントリングを駆動するモーターに電力を供給しているものと思われる。

ペンタックスのAFマウント
ペンタックスのオートフォーカス一眼レフカメラのマウント。CP-9 AFとは電気接点の位置が異なる。

ペンタックスのオートフォーカス一眼レフカメラのレンズマウントは,マウント面に多数の電気接点が設けられている。電気接点の位置がまったくことなるのだから,CHINON CP-9 AFとペンタックスのオートフォーカス一眼レフカメラとでは,少なくともオートフォーカスのシステムに関しては互換性がないことになる。

よく見れば,CHINON CP-9 AFのマウント面には,1つだけ電気接点がある。

CP-9 AFボディマウント拡大
チノンCP-9 AFのマウント面には電気接点が1つある。

これは,ペンタックスのプログラムAEに対応した接点と同じ位置にあるように見える。

ペンタックスAのボディとレンズマウント
CP-9 AFマウント面の電気接点は,ペンタックスAシリーズの電気接点と共通する位置にある。

そこで,プログラムAEに対応したSMC PENTAX-A 35-70mm F4を装着し,絞りリングを「A」ポジションにした。すると,CHINON CP-9 AFの撮影モードもプログラムAEに切りかわった。

レンズのAとLCDのP
チノンCP-9 AFは,ペンタックスAレンズでプログラムAEが使える。

SMC PENTAX-A 35-70mm F4の絞りリングを「A」ポジションからはずすと,CHINON CP-9 AFの撮影モードはマニュアル露出と絞り優先AEが選択できるようになった。
 かわって,プログラムAEに対応していないSMC PENTAX-M 50mm F1.7を装着すると,マニュアル露出と絞り優先AEは選択できても,プログラムAEは選択できない。
 シャッターレリーズ動作をさせて,自動絞りが動作することも確認できた。CHINON CP-9 AFのレンズマウントは,ペンタックスAシリーズのプログラムAEにも対応したものだったようだ。

逆に,CHINON CP-9 AF用オートフォーカスレンズは,ほかのKマウントのカメラでは使えそうにない。なにせ,絞りリングが存在せず,つねに最小絞りで使うことになる。せめて,ペンタックスAシリーズのボディでプログラムAE専用レンズとして使えないかと期待するが,CHINON CP-9 AFボディのレンズマウントには,ペンタックスAシリーズと同じ電気接点があるものの,CHINON CP-9 AF用オートフォーカスレンズのマウントには,それに対応する電気接点がない。このレンズは,まさにCHINON CP-9 AF専用ということになる。

CP-9 AFのレンズ
チノンCP-9 AFのオートフォーカス用レンズには絞りリングがなく,モーターを内蔵した独自規格のもので,他社のボディでは使えそうにない。

なお,オートフォーカスの35mm判一眼レフカメラを発売したのは,さらにもう1社,シグマがある。これについては,まだ1台も実物をさわっていないので,何も語らないことにする。


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