撮影日記


2016年12月10日(土) 天気:曇ときどき晴

ギミック満載?Kodak Tele-EKTRALITE 600

2016年10月に,コダックがあたらしいロゴを発表した(*1)。「あたらしい」ロゴではあるが,以前のロゴをリニューアルしたようなデザインなので,「あたらしい」というよりも「なつかしい」と感じる人があるかもしれない(*2)。「K」の文字を図案化したロゴは,コダックのロゴとして,私にとっても見慣れたものである。

先日,CASIO QV-10Aだけが目当てで,コンパクトカメラのジャンクが詰めこまれたアルミケースを落札した(2016年12月8日の日記を参照)。そのアルミケースそのものもジャンク品であり,落札の目的は,CASIO QV-10Aだけだったのである。しかしながら,せっかく縁あって,私の手元にやってきたカメラたちである。どんなものが入っていたのか,1つ1つ確認することにした。
 まず手に取ることになったのは,いちばん上に乗っていた,このカメラである。

「600」という大きな文字と,「K」の文字を図案化した「Kodak」のロゴがある。そしてこの形状から,このカメラの正体はすぐにわかった。コダック「テレ・エクトラライト600」という,110カートリッジフィルムを使うカメラである。実物を目にするのはたぶんはじめてのことであるが,私が以前からもっているコダック「エクトラ200」と同じ雰囲気をかもしだしてるから,すぐにその関連に気がついたものだ。だから,同じようにストラップを引くとカメラがひらいて,カバーになっていた部分がハンドグリップになる。

このクラスのコダックのカメラには,正直なところ,あまり魅力を感じてこなかった。
 126カートリッジフィルム用のカメラも,110カートリッジフィルム用のカメラも,どちらも基本的に簡便なものであり,メカニズム的な魅力,システム的な魅力があまり感じられなかったのである。それでも徹底的にシンプルで,小さく軽いなら,それなりに魅力はある。だが,フラッシュを内蔵させ,さらに望遠レンズまで内蔵させて肥大化したカメラからは,魅力が消失している。そもそも画質が期待できない110カートリッジフィルム用のカメラに,望遠レンズを内蔵させたところで,どれほどの効果があるというのか。

このカメラは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.73」(1982年版)に掲載がある。固定焦点で固定露出,フラッシュ撮影にはフリップフラッシュを使う仕様のEKTRA 200,エレクトロフラッシュ内蔵のEKTRALITE 400とあわせて,Tele-EKTRALITE 600は,最上位モデルとして掲載されている。
 Kodak Tele-EKTRALITE 600の特徴の1つは,自動発光式のフラッシュを内蔵していること。「カメラ総合カタログ vol.73」には,「被写体の明るさを自動的に読みとり,必要な時にだけ発光する“センサライト・ストロボ”を世界で初めて内蔵」と,アピールしている。
 もう1つの特徴は,望遠レンズに切り替えができることだ。
 上部にあるこのレバーで,望遠レンズへの切り替えをおこなう。

しかし,このレバーには,妙に「遊び?」がある。
 望遠レンズモードを解除してノーマルモードにするときは,レバーがかちっとはまる。

そして,レバーがこの位置で望遠レンズモードに切り替わる。

だが,そこからさらに,レバーは大きく移動する余地がある。

妙である。そこで,レンズの動きを注意して見た。望遠レンズがセットされた後,レバーの動きに応じてレンズの位置が微妙に動いている。もしやこれは,ピント調整か?それならば,ピント調整の目盛がどこかにあるはずだ。レバーには,なかほどにも1か所,クリックストップがある。きちんとつくりこまれているようだが,レバーの周囲に目盛らしきものは,みつからない。
 その答えは,ファインダーの中にあった。

ファインダーの視野内には撮影距離に応じたピクトグラムがあり,,レバーの動きに応じて赤い板がそこを動くようになっている。
 これならば,ファインダーを覗いたまま,ピント調整ができるというものだ。これは,あまりに過剰に思える。距離計等に連動しているわけではないので,上面のレバーのところに目盛があればじゅうぶんだと思うのだが。ともかくKodak TELE EKTRALITE 600は,妙なところに凝っていることに驚かされたのである。
 だが,驚かされたのは,これだけではない。

望遠レンズモードでは,ちゃんとカメラの前面にレンズがある。

だが,ノーマルモードにすると,レンズがなくなって,シャッターがむき出しになる。距離目盛が凝ったつくりであるのに対して,ここのつくりは,実に雑なものに感じる。

ノーマルモード用のレンズは,シャッターの後ろ側に出てくるのであった。

望遠レンズモードのときは,シャッターの後ろ側にレンズはない。

すなわち,Kodak Tele-EKTRALITE 600の望遠レンズモードは,標準レンズにテレコンバータを組みあわせるタイプのレンズではない。ノーマルモードのレンズと望遠レンズモードのレンズとを,まるっと切り替えるようになっている。

そして,さらに驚かされたことがある。

なんと,フィルムが装填されたままである。
 コダックの「VR」フィルムのロゴを見るのは,いったい何年ぶりだろうか。
 まあ,このフィルムはもう撮影には使えないと思うが,カートリッジがまた1つ入手できたことは,よいことであった。

*1 コダックはなぜ10年前の「K」マークロゴを復活させたのか? (WIERD.JP,2016年11月21日)
http://wired.jp/2016/11/21/kodak-revives-iconic-logo/

*2 KODAK BRANDING (WORK-ORDER)
http://www.work-order.co/kodak/


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