撮影日記


2016年10月20日(木) 天気:晴

これがOM101 PowerFocusの真髄!?
ダイアルの回転速度とピントリングの移動量

OLYMPUS OM101は,「ボディ側のダイヤルでピントを合わせるマニュアルフォーカスカメラの全く新しいタイプ」(日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.93」,1988年,日本写真機工業会)として,1988年に発売された(2016年9月28日の日記を参照)。ダイアルによってモーターを回しピントをあわせるというのは,OLYMPUS OM101特有のものである。言葉だけ聞いていると,「凝った機構だが,使いものになるのだろうか?」という疑問をもってしまう。実際に使ってみたところ,そのような心配は無用なことがわかった。この感覚は独特であるが,じつに使いやすく感じたものである。

まず気になることは,ダイアル操作とピントリングとの動きに時間的な遅れがあるかどうか,である。OLYMPUS OM101を構えると,ごく自然に,右手の親指のところにピント調整のダイアルがくる。

そこにふれてダイアルを動かすと,それにあわせてピントリングがすーと動く。この点は,問題がない。

では,微妙なピント調整は可能だろうか。ダイアルをそうっと動かすと,ピントリングもそれに応じてゆっくり動く。標準ズームレンズを使う程度であれば,とくに問題はなさそうだ。
 では,最短撮影距離から無限遠まで,一気にピントリングを動かすことはできるだろうか。ダイアルを思いっきり動かすと,ピントリングも一気に動いた。思った以上に,スムースに動いてくれる。
 このダイアルをゆっくり動かせばピントリングが少しだけ動き,ダイアルをすばやく動かせばピントリングがたくさん動くようである。
 あらためて,簡単に比較してみよう。

ボディのダイアルを,ここから…

…ここまで,…

…一定量を動かすことにする。

ダイアルを動かす量は同じでも,動かす速さによって,ピントリングが動く量が変化するだろうか。

ピントリングの位置を無限遠にしておき,まずは,じわじわ少しずつ,そうっとダイアルを動かした。

ピントリングの位置は,5mまでも動かなかった。

こんどは,ゆっくりだが,スムースにダイアルを動かした。

ピントリングは,1.5mまで動いた。

さいごに,できるだけすばやく,一気にダイアルを動かした。

ピントリングは,最短撮影距離の位置までは届かなかったが,0.75m近くまで動いた。

ダイアルを速く動かすほど,ピントリングの動く量が大きくなるようである。
 ダイアルを動かす速さによって,自動的にピントリングの動きが拡大/縮小されている,という言い方もできる。
 これならば,最短撮影距離の位置から無限遠の位置まですばやくピントリングを動かすことも可能だし,微妙なピント調整をすることも可能である。このような優れた機構を取り入れたのがOLYMPUS OM101だけで,あとが続かなかったことは,惜しまれる。オートフォーカスと,このダイアルによるパワーフォーカスの両方を取り入れた,OM707とOM101の後継機が発売されていたら,それはどんなものになっていただろうか。その機構を取り入れた上級機が発売されていたら,今ごろ,カメラ界の勢力分布図はずいぶんと違うものになっていたのではないだろうか。
 ダイアルの回転速度によって移動量が変化するというのは,技術的には特別なものではないと思う。だが,それをピント調整に利用した点に,オリンパスの「本気」を感じたのだ。
 外野として,好き勝手なことを妄想するのは,楽しいことである。


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