撮影日記


2016年09月10日(土) 天気:曇ときどき晴

逆づけフードの謎

広島県山県郡安芸太田町の井仁にある棚田は,1999年に農林水産省から発表された「日本の棚田百選」に選ばれている(*1)。それ以後,田植えや刈り入れの時期になると新聞で紹介されることが多く,今年もつい先日,刈り入れがはじまったことが紹介された。訪れてみると,先月まではみかけることのなかった(2016年8月21日の日記を参照),写真を撮りにきている人らしき,カメラを手にした人の姿がちらほらとあった。

以前から,すこし気になっていることがある。それは,レンズフードを逆向きにつけたまま,撮影をおこなっている人を少なからず見かけることである。
 レンズフードにはいろいろな役割が期待されているが,大きくは3つが考えられる。
 いちばん重要視したいのは,半逆光時などにおいてレンズ先端付近に強い光があたることで,フレアやゴーストなどが発生することを軽減するためだ,とする人が多いであろう。フレアやゴーストについては,慎重な人が多いようだ。私が,たまたま使うまでもないと判断したからレンズフードを使っていなかったときに,ご親切に教えてくださる方もあったほどである(2016年6月11日の日記を参照)。このときは,レンズ面に直射光があたる影響もほとんどないと判断していた。そもそも,いまどきの3倍4倍あたりまえなズームレンズにおいて,その広角側でもケラレないようなフードが,望遠側で使うときにどれほどの効果を果たしてくれるのか。正直なところ,よほどの状況でなければ気休めくらいのものだと思っている(先の日記のときに使っていたのは,24mm〜120mmの5倍ズームレンズ)。また,よほどの状況であれば,三脚でカメラを固定し,冠布等できちんと影をつくってやるくらいのことを検討したい。もちろん,単焦点レンズに専用フードを使う場合ならば,その効果はそれなりに期待できると考えたい。
 レンズフードに期待されるもう1つの大きな役割として,レンズの保護がある。不用意に,岩や樹木,建物,あるいは人混みのなかで他人などに,レンズ先端がぶつかってしまったとき,レンズフードがついていると,そこで衝撃が緩和されて,レンズ本体が受けるダメージが軽減される。自分のたいせつなカメラやレンズを守ることにもつながるし,ぶつけてしまった相手のダメージをやわらげることにもつながる。
 もう1つ,無視できない役割として,見た目がカッコイイというものがある。フードそのものが立派な場合,それを見ているだけでカッコイイ。また,レンズのカッコよさをさらに強調してくれるフードもある。逆に,レンズのカッコ悪さを補う場合もある。たとえば廉価版の高倍率ズームレンズは,望遠側に鏡胴をくりだすとその先端部のか細さが気になるが,そこにフードをつけておけばかえってその細さがアクセントになりカッコよくなる。
 ただしこれらの期待される役割はすべて,フードを通常の向きに装着した場合のことである。逆向きにつけた場合は,それらの効果が期待できなくなる。むしろ,ピントリングやズームリングなどの操作を妨げるなどの,大きなデメリットが発生する。使わないときに紛失したくないというのであれば,すなおにバッグなどに片づけておく。バッグを持ち歩かない,あるいはいつでもさっと構えて撮れるようにしたいというのであれば,レンズフードを通常の向きに取りつけておいて,不意の逆光軽減に備えたり,万が一のときの衝撃緩和に備えるのがよいのではないだろうか。
 ともあれ今日も,そういう人の姿を見かけたものである。人それぞれいろいろな意図があってやっていることだろうから,わざわざ近づいていって話しかけ,その人の撮影を妨げるのも気が引ける。気になるけれど,気になるままにしておこう。もっとも,カメラバッグに収納するときはレンズフードを逆向きに取りつけるのがふつうだろうし,それを取り出してすぐに撮りたかったからフードをつけ直す余裕がなかったというなら,フードを逆づけしたまま撮っていることも理解できなくはない。

今朝の刈り入れ作業は,まだはじまっていない。いまの棚田は,フードをつけなおす余裕がないほどのせわしない被写体とは思えない。

Kodak DCS Pro 14n, SIGMA AF 14mm F3.5

しばらくすると正面の山を,いいぐあいに霧が覆いはじめた。

Kodak DCS Pro 14n, AF NIKKOR ED 180mm F2.8S (new)

石垣は,稲穂があふれんばかりの状態である。

Kodak DCS Pro 14n, SIGMA AF 14mm F3.5

今日は,先月ほどには朝露がついていなかった。

Kodak DCS Pro 14n, AF NIKKOR ED 180mm F2.8S (new)

天気予報では「晴れ」だったが,空には雲が広がっている。ときおり日差しがあるものの,期待していたような光線は得られない。

Kodak DCS Pro 14n, AF NIKKOR ED 180mm F2.8S (new)

Kodak DCS Pro 14nは,ハイキーに弱くない。そう考えて撮れば,いいぐあいになりそうだ。

*1 日本の棚田百選 (一般社団法人 地域環境資源センター)
http://www.acres.or.jp/Acres20030602/tanada/index.htm


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