撮影日記


2016年08月25日(木) 天気:晴ときどき曇

ニコノスのシステムを陸上でも活用したい
水を満たしたUW-NIKKOR 20mm F2.8で疑似水中撮影?

ニコノスは,水深50mでの撮影も可能な防水カメラであるとともに,交換レンズなどの充実したシステムカメラである。しかしながら,システムの多くは水中での撮影に特化した,水中仕様のものになっている。とくに15mmから80mmまで用意された交換レンズのうち,陸上でも使用可能なレンズは,ニコノスとしての標準レンズである35mmレンズと中望遠80mmレンズ,それに2種類ある28mmレンズのうち「陸上専用」とされているほうをくわえて3本だけだ。一眼レフカメラではない,ピント調整が目測式のニコノスなら,28mmくらいの広角レンズをもっとも使いたくなるところだが,先に書いたように,28mmレンズは2種類用意されている。1つは水中専用のUW-NIKKOR 28mm F3.5で,もう1つは陸上専用のLW-NIKKOR 28mm F2.8だ。陸上専用のLW-NIKKOR 28mm F2.8は,水中専用のUW-NIKKOR 28mm F3.5ほどは市場に流通しておらず,店頭でみかける機会はほとんどない。だから,比較的入手しやすいUW-NIKKOR28mm F3.5やさらに広角なUW-NIKKOR 20mm F2.8をなんとか陸上でも使いたいと考えた。

UW-NIKKOR 28mm F3.5は,最前面の保護ガラスが凹レンズになっていることで,水中に特化した補正がされているという。だから,まずはその保護ガラスを撤去するとどうなるか,試すことにした。その結果は,保護ガラスを撤去しても,陸上では使えないというものだった(2016年5月16日の日記を参照)。
 つぎに,リバースリングを使ってレンズを逆向きに取りつけることで,拡大撮影用レンズとして使えるかどうか,試すことにした。その結果,拡大撮影用レンズとしてはじゅうぶんに活用できることが確認できた(2016年7月12日の日記を参照)。

3つ目の方法として,レンズの前面を水で満たすことで,水中と同じ環境で撮影できるかどうか,試すことにした。フィルタ取りつけ枠がゆがんだジャンク品として入手したUW-NIKKOR 20mm F2.8に,むりやりステップアップリングを固定し,そこにスカイライトフィルタをとりつけた(2016年8月16日の日記を参照)。

ニコノスボディに,水を満たしたUW-NIKKOR 20mm F2.8を取りつけた。これで,水中と同じ環境で撮影できるはずだ。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

期待通り陸上でも,水中専用レンズでピントのあった写真を撮ることができた。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

通常の20mmレンズと違って,魚眼レンズ風に歪曲しているのが,おもしろい。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

惜しいのは,四隅にケラレがあることだ。Kenko KFS-500で取りこんだのでわかりにくくなっているが,ケラレはかなり目立つものである。完全な水中ではないために水の厚みが少ないせいなのか,ステップアップリングやフィルタが厚すぎるのか,そのあたりはわからない。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

水を満たしていたつもりだが,水が漏れてしまったのか,少し気泡ができていた。そのため,上を向いて撮影すると,気泡の部分がボケた失敗作になる。ただ,場合によっては偶然,おもしろい写真が撮れるかもしれない。

つぎに,水の量を半分くらいにした状態で撮影してみよう。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

予想通り,水を通じて見える下半部はピントがあっているが,水を通じていない上半部はピントがあっていない写真になる。なんとなく,水底の世界を撮ったように思えてくる。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 20mm F2.8, ACROS

水を通じた場合はレンズのピント目盛のとおり無限遠までピントがあうが,水を通じていない場合はレンズのピント目盛を無限遠にしていても,ピントがあうのは20cmほどの至近距離である。そのバランスがうまく取れれば,1枚の写真のなかで,遠方にピントがあっている部分,遠方にピントがあっていない部分,至近距離にピントがあっている部分が混在する,不思議な印象の写真ができる。

一眼レフカメラではないから,ピントのあった部分とピントのあっていない部分とのバランスについては,運任せな面があるのが残念だが,おもしろい写真が撮れそうな期待がもてる結果となった。
 ともあれ,ニコノスの水中専用レンズを陸上での撮影に活用することは,じゅうぶんに「可能」なのである。だから,海に潜る予定のない人も,積極的にニコノス様をお迎えしてよいのである。


← 前のページ もくじ 次のページ →