撮影日記


2016年08月02日(火) 天気:晴

見た目は「おもちゃ」だが「まっとう」に写る
Diana+は意外に使える!?

道具に「こだわり」のある人は,ある水準に満たないような道具を「おもちゃのようだ」と表現することがある。この「撮影日記」を読んでくださっているあなたは,たぶんカメラに対する「こだわり」をおもちのはずだ。だから,こんなカメラは「おもちゃのようだ」と感じるのではないだろうか。

Lomographyが発売する,「Diana+」 (ダイアナ・プラス)というカメラである。1960年代に香港のメーカーから発売された簡便なカメラを,2007年に機能強化して復刻したもの,とのことである(*1)。市場では「トイカメラ」,すなわち「おもちゃカメラ」として認識されている。実際に手に持ってみると,そこからは精密機械としてのカメラという感触は伝わってこない。全身プラスチックで,伝わってくる感触はあくまでも「おもちゃ」である。
 「Diana+」は,「トイカメラ」とはいえ,120フィルムを使って写真を撮る機能がそなわっている。実際に撮影に用いることはできるのだろうか,また,実際にどのような写りを示してくれるのだろうか。
 フィルム装填は,問題なし。巻き上げはふつうの赤窓式(裏蓋に濃い赤に着色された窓があり,そこから120フィルムの裏紙に印刷された番号を読み取る方式)であるから,故障することはない。ただし,粗雑につくられていると,ここから光線漏れなどの問題をおこすことがある。シャッターはエバーセット式(チャージの操作が不要で,いつでもレリーズできる)の単純なものだが,きちんと動作しているようだ。シャッターの動きは意外と気持ちよく,よいテンポで撮りすすめられる。
 そしてフィルム1本を撮り終わり,フィルムを巻ききって取り出そうとした。ロックをはずして裏蓋を開けたとき,カメラのなかで「ジャーッ」という嫌な手ごたえを感じた。すでに,裏蓋は少し開いて,カメラのなかは暗黒でなくなっている。もう,しかたない。そう,最後まで撮って,巻ききったフィルムは,思いっきり緩んでいたのである。現像したところ,大幅にかぶっており,使えるコマはない。ただ,ところどころ部分的に像が見られるところでは,意外とまっとうな写りをしているように思えた。

フィルムの緩みを,なんとか防がねばならない。Diana+のなかを観察してみたところ,フィルムを下からおさえるプラスチックの板が外れかけていることがわかった。そこは,ぱちんとはまるようになっているが,フィルムを交換するたびに力のかかる場所である。いつしか,緩くなっていたのだろう。不思議なことに,そこにはネジあならしきものがあるので,適当なネジを使って固定した。

根本的な解決になったかどうかはわからないし,そもそもここの部品自体がぺらぺらなので,あくまでも一時しのぎにすぎないかもしれない。場合によっては,かえって症状が悪化するかもしれない。だから,同様のことをするならば,あくまでも自己責任でおこなうこと。ともあれこんどはフィルムが緩むようなこともなく,無事にフィルムを取りだすことができた。

Lomography Diana+, Diana Lens+ 75mm, 400TMY-2

全身プラスチックのチープなボディに取りつけられた標準レンズは,プラスチック製の75mmレンズである。周辺部はかなりぼけぼけになっているものの,全体としては思ったよりもまっとうな写りを見せてくれる。フォーマットの大きさは,七難を隠すのかもしれない。

Lomography Diana+, Diana Lens+ Fisheye 20mm, 400TMY-2

Diana+で興味深いものの1つが,多彩な交換レンズである。そのうち,Fisheye 20mmレンズを入手していた(2016年6月12日の日記を参照)。こちらも,案外とまっとうな写りである。

Lomography Diana+, Diana Lens+ 75mm, 400TMY-2

標準レンズで撮った写真も,あらためて見れば,四隅の像がかなり崩れ気味であることが目立つ。また,被写体までの距離が5mくらいのところが,もっともきれいに写るようになっているのであろうか。

Lomography Diana+, Diana Lens+ Fisheye 20mm, 400TMY-2

魚眼レンズや超広角レンズでは,もっと鋭角な分かれ道を撮りたいのだが(2014年9月13日の日記を参照),これでもじゅうぶんに楽しめる。
 ところで,Diana+には,二重写し防止という複雑な機構というか,そういう概念はない。いつでも好きなだけ巻き上げられるし,いつでもレリーズできる。だから意図せずして,二重写しをしてしまうことがある。だから,よく見てほしい。この建物の壁に,ポストが写っていることを。

Lomography Diana+, Diana Lens+ Fisheye 20mm, 400TMY-2

ともあれ,魚眼レンズを通してみれば,いつもの駅前のいつものポストも,いつもと違った姿を見せてくれる。

Lomography Diana+, Diana Lens+ Fisheye 20mm, 400TMY-2

今年の「魚眼レンズの日」(2014年10月10日の日記を参照)は,Diana+とDiana Lens+ Fisheye 20mmを使うことにしよう。6×6判に円形魚眼レンズが結ぶ像には,予想を大きく上回る楽しさが感じられるのだ。

Diana+は,せいぜい「写ルンです」程度のカメラだから,とくに「トイカメラ」が好きだというわけでないなら,あえて入手する必要はないかもしれない。しかし,もしこの交換レンズFisheye 20mmも入手できるなら,積極的にお迎えしてもよいのではないだろうか。Diana+の総合評価としては,ケンコーのミラージュ双眼鏡と同じように(2015年5月18日の日記を参照),「見た目はおもちゃだが,使えなくはない」「値段を考えればよくできている」ということにしようと思う。

*1 Diana+ / Diana F+ Camera / Specifications (Lomography)
http://microsites.lomography.jp/dianajp/specifications/


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