撮影日記


2016年07月30日(土) 天気:晴

さらば,「関係ない椅子」

みなさんも,ご自宅に「踏み台」があるのではないだろうか。ふだんあまり使わないものは,高いところに片づけておくことが多い。特別に背が高い人でなければ,そのようなところのものを出し入れするのには,踏み台が必要である。
 踏み台としてつくられたものにも,いろいろな種類がある。本来は踏み台ではないものでも,踏み台として使えるものはいろいろある。よく写真撮影をしている人であれば,2〜3段くらいの小さな脚立を使っている人もあるだろう。私は,ホームセンターでよく売られている,丸椅子を踏み台として使ってきた。踏み台として手ごろな高さがあり,かつ,本来の椅子として使うにも具合がよい。

長く使っていたその丸椅子が,壊れてしまった。
 家の周囲は,水はけのためにやや傾斜がつけられている。そこで作業をするために椅子を置くと,少し傾いた状態になる。これまで気をつけてそこに乗っていたのだが,うっかり端のほうを踏んでしまって,椅子ごとこけてしまった。私自身,あちらこち擦りむき,脛が腫れ上がるような強いこけかたをしたのだが,椅子のほうはもっと重傷であった。4本の脚のうち,2本が根元から折損してしまったのである。これは,直しようがない。

この椅子は,自宅で踏み台や椅子として使ってきただけではない。いろいろなところに,いっしょに出かけることもあった。三脚を立てて,被写体にカメラを向けて,光を待つ。あるいは風止みを,あるいは目的とする列車が来るのを待つ。そのとき,連れて行った丸椅子に座って待つ。あるいは,丸椅子に乗って,1段高いところから撮るようなこともあった。
 それだけではなく,丸椅子そのものを被写体にすることもあった。
 丸椅子がそこに存在する必然性は,なにもない。いや,必然性があってもよい。丸椅子の存在は,その周囲の状況とは関係しない。「関係ない椅子」として,丸椅子を撮っていたこともあった。…というのは,少々大げさで,もともとは会話の中で「関係ないですが,」というところが「関係ないすが,」と少々雑になったときに,「関係ない椅子が,」とダジャレ?で返すのを思いついただけのことである。
 「関係ない椅子」と称して撮った写真は,この丸椅子の遺影になってしまった。

Nikon F, Ai Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.5S, PX

それでも私は,この丸椅子のことを忘れない。
 そして同じような椅子を,ホームセンターで買ってきたのであった。

「関係ない椅子」


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