撮影日記


2016年06月11日(土) 天気:晴

舞洲ゆり園で
「写真」について教えを受ける

大阪市営地下鉄中央線のコスモスクエア駅で降りるのは,はじめてのことであった。地下鉄のコスモスクエア駅ホームの中央付近には,ニュートラムへ乗り継ぐためのエスカレータがあり,ほとんどの人がそこに並んで長い列になっている。私はここで駅を出るので,そことは別のエスカレータをあがっていった。駅を出ると目の前に,バス乗り場がある。
 いま,大阪北港にある「舞洲ゆり園」で,ちょうどユリの花が見ごろだという。舞洲は人工島であり,そこに鉄道は通っていない。クルマで訪れるか,適当な駅からバスに乗り継いで行くことになる。今日は,コスモスクエア駅でバスに乗り換えて,「舞洲ゆり園」に向かうことにした。

「舞洲ゆり園」では,「250万輪のゆりが咲き誇る」とのことである(*1)。たしかに海沿いの広い敷地に,多数のユリが密生している。もう,とにかく数で勝負。ただただ大量に,無造作に植えているだけ,という感が強い。その無造作感が,とても魅力的に思える場所である。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

ときおり晴れ間が広がるものの,全体に薄曇りといった天気である。光がよく回りこんでおり,しかも明るいので,逆光も順光も気にせず,撮りやすい状況である。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

それだけに,背景やボケなどを意識しないと,平凡で平板な画像になってしまう。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

これだけ,色鮮やかな花が大量に咲いているのだから,当然のように,一眼レフカメラをもった人の姿も多く見かける。ディジタル一眼レフカメラが大半であるが,フィルムの一眼レフカメラの姿も見かけた。
 そんなとき,なぜか私のカメラとレンズを覗きこんでいるご年配の男性があった。そして,私になにか話しかけてきた。今日は,FUJI FinePix S2Proを持ち出している。「珍しい機種だねえ」あるいは「古いのを使っているんだねえ」と話しかけられるものと期待(笑)していたら,その方のお言葉は,予想とはまったく異なるものだった。

「フードを使ったほうがいいよ。」

それだけである(^_^; 理由も状況の説明もなにもなく,それだけである。高倍率ズームレンズでもっぱら長焦点側で撮っているので,付属のフードはほとんど役に立たぬ状況だ。むしろ,この人混みのなかで,フードを紛失する危険性のほうが重要である。そのような事情があってフードをつけていなかったわけなので,単に「フードを使ったほうがいいよ」と話しかけられても困るのである。「はあ,まあ必要なら手でハレ切りしますから」と応じたが,「フードを使ったほうがいいよ」とだけ繰り返される。せっかくご親切に教えていただいているようだが,もうしわけない。

「舞洲ゆり園」は,海沿いにある施設である。したがって,海を通る船もよく見える。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

ちょうど,赤い帆のヨットがうろうろしていたので,それがちょうど写りこんでくれる位置をさがして,私もうろうろする。すると,さきほどのご年配の男性がふたたび近くにいた。そして,こんどはこんなことを教えてくださった。

「こういうときはね,霧吹きをするといいんだよ。」

「こういうとき」とは,どういうときか,よくわからなかった。日差しはそれほどきつくないものの,とても暑い日である。霧吹きごときの水は,あっという間に蒸発し,そこに水の跡がシミになって残るだけになりそうだ。霧吹きの効果があるときとは,思えない。実際には,その男性もこの炎天下で霧吹きをする気はなかったのだろうか,続けてこう言った。

「あ,今日は霧吹きを忘れたよ。」

私は,そんなに「教えてあげたい人」に見えるのだろうか?という疑問だけが残ったのであった。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

「舞洲ゆり園」は,海沿いのお花畑であるから,静かな場所というイメージをもたれるかもしれない。しかし実際には,かなり騒々しい場所である。人が多く,みんながきれいな花に歓声をあげているという状況もあるが,上空にはつねに,ヘリコプターが飛んでいるのだ。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

「舞洲ゆり園」を空から眺められる,観光用のヘリコプターである。あとで乗り場のほうを覗いたところ,そこには順番待ちの人の列が見えた。このヘリコプターも,休む間がなかったようだ。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

人も多く騒々しいが,それ以上にたくさんのユリが咲いているので,気に入った花があればじっくり撮ることができる。これは,単純な多重露出をおこなったもの。まず-0.5EVの露出補正でピントのあった状態を撮り,つぎに露出補正なしで大きくピンボケにした状態を重ねたものだ。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

同じ花で多重露出をすればソフトレンズを使ったような画像になるが,まったく別の花で多重露出をすれば,色が混ざって不思議な雰囲気が得られる。

FUJI FinePix S2Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

すでに散ってしまって雌蕊だけになった花も少なくないが,まだまだ咲いている花は多くつぼみも残っていた。訪れた時期は,まあ悪くなかったようだ。強い日差しへの対策はじゅうぶんに考えたのだが,蒸し暑さにはあまり効果はない。夕焼けも期待できそうにない空模様なので,夕方を待たずに帰ることにした。

帰路はコスモスクエア駅に向かわず,西九条駅行きのバスに乗った。
 コスモスクエア駅からのバスは,北港観光バスという会社の路線である。一方,西九条駅からのバスは大阪市交通局のバスである。大阪市交通局のバスであれば1日乗車券「エンジョイエコカード 土・日・祝」が使えるが,北港観光バスのバスでは使えない。一方,コスモスクエア駅には大阪市営地下鉄(あるいはニュートラム)が乗り入れるが,西九条駅では地下鉄に乗り換えられない。地下鉄に乗るためには,地下鉄の九条駅まで歩くか,大阪環状線で弁天町駅まで1駅分乗車するか,適当な市バスで地下鉄の駅に向かう必要がある。
 ともあれ,「エンジョイエコカード 土・日・祝」だけでは,「舞洲ゆり園」に行くことはできないのだ。「舞洲ゆり園」への臨時直行便を運転するなら,西九条駅ではなく,九条駅なり弁天町駅なり,地下鉄に簡単に乗り換えられる駅を結んでいただきたいものだ。

*1 大阪舞洲ゆり園
http://yurien.com/


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