撮影日記


2016年05月16日(月) 天気:雨 ときどき激しく

水中専用レンズUW-NIKKOR 28mm F3.5は,
陸上で使えるか?

ニコノスは,水深50mでも使用できる水中カメラである。超広角レンズから中望遠レンズまで,交換レンズも用意されていた。ただし,50mmレンズは用意されておらず,ニコノスに標準的にセットされるレンズは,W-NIKKOR 35mm F2.5であった。この35mmレンズとNIKKOR 80mm F4の2本は「水陸両用」ということになっていたが,UW-NIKKOR 28mm F3.5,UW-NIKKOR 20mm F2.8,UW-NIKKOR 15mm F2.8の3本は「水中専用」ということになっていた。
 水中専用レンズでは,水中で生じる歪曲収差や色収差を修正するために,最前面の保護ガラスが凹レンズになっており,水中でなければピントがあわないという。そのため,10年くらい前にUW-NIKKOR 28mm F3.5を入手しながら,それ以来,まったく使っていなかった(2008年10月18日の日記を参照)。しかし,いつまでも放置しておくわけにはいかない。どのようにピントがあわないというのか,確かめてみよう。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 28mm F3.5, ACROS

なるほど,中心部はきちんと写っていても,周辺部でピントがあわず歪みも発生しているようだ。これが,「水中でなければピントがあわない」ことを言うのだろう。

ニコノスのようなビューファインダーカメラは,広角レンズと組みあわせて使うのが似合うと思っている。ニコノスの標準レンズといえる35mmレンズもいいのだが,28mmレンズが使えるともっとうれしい。せっかく入手したUW-NIKKOR28mm F3.5を,なんとか水中以外でも使えないものだろうかと考えるのは,当然のことである。
 では,前面の保護ガラスが,水中撮影に適した補正をおこなっているというならば,それを撤去するとどうなるだろうか。保護ガラスを撤去するときには,間違いなく防水用のOリングを傷つけることになる。そうすると,本来の防水性能は失われてしまう。もう補修用のOリングは入手できないようだから,このようなもとにもどせない非可逆的な改造をしてはいけない。しかしながら,私はたぶんこのカメラやレンズで水中撮影をすることはないだろうから,ここは目をつぶることにする。

前面の保護ガラスは,Oリングで固く締められている。傷がつくのを承知で,Oリングをこねくってむりやり引きはがせば,保護ガラスをはずすことができる。はずした保護ガラスは,ぶ厚い凹レンズであることがわかる。

保護ガラスをはずしたかわりに,58mm径のフィルタを装着しておく。これで撮ると,どうなるか?

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 28mm F3.5 (modified), ACROS

どこにも,ピントがあっていない(笑)。
 考えてみれば単純なことで,前面にあった凹レンズは,周辺部の補正にだけ影響をあたえていたのではない。ピントのあう位置がずれてしまったのは,当然のことである。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 28mm F3.5 (modified), ACROS

ピントのあう位置がずれてしまった結果,被写体までの距離が20cmくらいの接写専用レンズになってしまうようだ。この結果を利用して接写用のレンズとして使うのもおもしろいかもしれないし,あえてピントのあわないレンズとして楽しむのも一興かもしれない。残念なのは,ニコノスは一眼レフカメラでもなければディジタルカメラでもないので,それらの効果を確かめながら使えないことだ。予期せぬ結果が楽しいという面もあるが,偶然に頼る撮り方は少々ものたりない。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 28mm F3.5 (modified), ACROS

結局は,レンズを傷つけてしまっただけの,まったく無意味なことをしてしまったことになる。いちおう,前面の保護ガラスとOリングとを元通りにもどすことにするが,防水性能は回復させられない。どのみちボディのOリングなども劣化が進んでいるだろうから,本来の耐水深50mという性能は,もう期待しないほうがよい。そうはいっても,問題のなかった状態のレンズを意味なく傷つけてしまったことは,悔やまれる。

NIKONOS IV-A, UW-NIKKOR 28mm F3.5, ACROS

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