撮影日記


2016年05月12日(木) 天気:晴

APS-Cサイズならケラレないか?
内視鏡レンズ KARL STORZ 593-T2

ニコンやキヤノンのディジタル一眼レフカメラは,フィルムの一眼レフカメラで使っていたレンズも使えるようになっている。ただしディジタル一眼レフカメラの撮像素子には,フィルムのサイズ(ライカ判,36mm×24mm)よりも小さいAPS-Cサイズ(機種等によって微妙に差があるが,23.7mm×15.6mmなど)とよばれるものが使われていることも多い。APS-Cサイズの撮像素子をもつディジタル一眼レフカメラでもライカ判サイズの撮像素子をもつディジタル一眼レフカメラでも同じ交換レンズを使えるようになっているが,同じレンズを使っても,APS-Cサイズのものではライカ判で使うときにくらべて,写る範囲が狭くなる。その差は,レンズの焦点距離でいえば,およそ1.5倍に相当する。たとえば,ライカ判で使えば広角レンズである35mmレンズをAPS-Cサイズで使えば,およそ1.5倍の52mmレンズに相当する標準レンズの範囲が写せるレンズとして使うことになる。

先週は,VEMAR 28mm F3というTマウントレンズを使った。素性のわからないレンズであるが,意外にも描写はまともである。ずっと以前に使ったときには,周辺の描写がややあやしいものに感じられた(2010年7月9日の日記を参照)のだが,撮像素子がライカ判よりも小さなディジタル一眼レフカメラで使えば,レンズの中心付近だけを使うことになるので,写りのよいレンズに感じられるのかもしれない(2016年5月5日の日記を参照)。
 いまのところ私の手元に,Tマウントレンズは3本ある。今日は,このレンズを使う。

カール・ストルツ (KARL STORZ)の「593-T2」というレンズだ。カール・ストルツは,ドイツに本社のある,内視鏡などの医療機器メーカーである(*1)。このレンズは,内視鏡とカメラとを接続する部分のようだが,「593-T2」というのはこのレンズ単体の形式なのか,このレンズを使う内視鏡システム全体の形式なのか,そのあたりはよくわからない。
 このレンズは,焦点距離を70mmから140mmまで変化させられる,ズームレンズになっている。ライカ判のカメラで使うと,140mmから120mmあたりの範囲では問題ないが,110mmあたりから四隅にケラレがファインダー内でも確認できるようになり,70mmではほぼ円形の視野になる(2006年3月30日の日記を参照)。内視鏡の像を撮影するだけならば,それで問題ないのだろう。
 一方で,無限遠から等倍近くまで連続的にピントがあうようになっているのは,大きな魅力だ。
 KARL STORZ 593-T2はズームレンズだが,焦点距離を短い側にするにつれてレンズ先端が奥に引っ込んでいく。そのため,ライカ判では四隅のケラレが目立つようになり,実質的には140mmの単焦点レンズとしてしか使えない。だが,撮像素子の小さなディジタル一眼レフカメラで使えば,少しは短い焦点距離でも実用になるのではないだろうか。

そこで今日は,Nikon D1様の出番となる。私の手元にあるディジタル一眼レフカメラのうちではこれだけが,マニュアルフォーカスレンズでAE撮影ができ,かつ,撮像素子がAPS-Cサイズである。
 Nikon D1に,KARL STORZ 593-T2を取りつけると,妙にあやしい雰囲気になる。これはこれで,とっても魅力的なスタイルだ。

被写体は,まだまだ楽しめる,サギゴケの花だ。

Nikon D1, KARL STORZ 593-T2 (at 140mm)

期待通りの,かっちりした写りである。解像度も,悪くないようだ。ただ,このレンズはかなり暗い。開放F値は記されていないが,露出の値から考えれば,140mmのときにはF16くらいに思われる。したがって,背景はあまりボケてくれない。

Nikon D1, KARL STORZ 593-T2 (at 100mm)

焦点距離を100mmにしても,四隅のケラレは気にならない。

Nikon D1, KARL STORZ 593-T2 (at 70mm)

焦点距離を70mmにすると,さすがに四隅のケラレが顕著になる。

無限遠から1:2倍以上の接写域まで,連続的にピントをあわせられるズームレンズとしては,ニコンのAF Zoom-Micro-NIKKOR ED 70-180mm F4.5-5.6Dがよく知られているが,このKARL STORZ 593-T2もズームマイクロレンズであると言ってよいだろう。接写のときは,構図を調整するためにカメラを移動させるのも,容易ではない。ズーム比はあまり大きくなくても,ズームレンズになっていれば,構図の調整が容易になる。

Nikon D1, KARL STORZ 593-T2 (at 140mm)

ただし,背景はボケない。似た構図を,単焦点のマイクロニッコールで撮ってみれば,違いは一目瞭然である。

Nikon D1, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

花を撮るときにはどちらのレンズを使うのがよいか,それは好みの問題であり,どのように撮りたいかの問題である。大きなボケを撮りたいようなときを除けば,KARL STORZ 593-T2が重要な選択肢になるのは間違いない。ただし,70mm〜100mmの範囲で使うときには,四隅のケラレに要注意である。

*1 KARL STORZ Endoskope
https://www.karlstorz.com/af/ja/index.htm


← 前のページ もくじ 次のページ →