撮影日記


2016年02月12日(金) 天気:曇ときどき晴

リコーと言えばサンキュッパ

以前から「ぜひとも入手しておきたい」と考えていたカメラを,ようやく救出することができた。

リコーの一眼レフカメラ「XR500」だ。
 決して,珍しいカメラではない。また,高価なカメラでもない。むしろ,安くてよく売れた,そんなカメラである。しかし,いざ入手しようと思うと,意外と納得できるものが見つからない。
 もともとが安いカメラであるから,ジャンクコーナーでもときどき見かける。そして,多少の汚れや傷があっても,いちおう動いていることが多い。動いているなら1000円程度は,不当に高価なものとはいえない。そんな条件のものはこれまでにもよく見かけてきたが,救出には至らなかった。
 ボディだけで入手しても,意味がないと考えていたからである。

このカメラは,「RICOH XR500」という名称でよぶよりも,「リコーのサンキュッパ」とよぶほうが,わかりやすいかもしれない。
 「サンキュッパ」とは,メーカー希望小売価格が39800円だった,という意味である。カメラボディが28300円,標準レンズが9000円,ケースが2500円で,これらをまとめたセットが39800円になる。ケースはなくてもかまわないが,この9000円の標準レンズ「XR RIKENON 50mm F2」をあわせて入手しなければ,「サンキュッパ」の意味はない,と考えていたのである。
 今日,たまたま立ち寄ったブックオフで,ジャンク品が詰めこまれた青いコンテナの中に,500円の値札が貼られたXR500ボディを見つけた。外見はまあまあで,シャッターも動作している。500円なら,安いと言ってよいだろう。だが,レンズがなければ意味がない。XR500を元のコンテナに戻して,隣のコンテナも覗いてみた。そこには,300円の値札が貼られたXR RIKENON 50mm F2があった。
 「リコーのサンキュッパ」の救出ということに,相成ったのである。

ジャンクコーナーのレンズには,お約束のようにカビが付属している。
 レンズ前面のネームプレートに,カニ目回しをはめる穴や凹みなどが見られない場合は,側面でネジ止めされていることが多い。そのネジは,鏡銅を繰り出すと姿をあらわす。

ネームプレートをはずした下には,カニ目回しではずせそうなレンズ群が姿をあらわす。

カビは第2群レンズにあるようなので,内側を回したい。しかし,ここには接着剤が軽くつけられているようで,どうしても外側もいっしょにはずれてしまう。接着剤らしき部分をライターオイルで拭きつつ削れば,内側だけを回すことができた。

カビの生じていたレンズを取り出して清掃し,あとは元通り組み立てればよい。

「リコーのサンキュッパ」というフレーズは,その低価格さをアピールするものである。性能や機能,デザインなどではなく,あくまでもメーカー希望小売価格が安いことのアピールである。RICOH XR500と同じ時期に発売されていた一眼レフカメラとしては,たとえばCanon AE-1がある。その価格は,50mm F1.8レンズ付きで71000円(日本カメラショー「カメラ総合カタログ Vol.64」(1979年版))。もちろん,ケースは別である。RICOH XR500はマニュアル露出専用で,シャッター速度の範囲が1/8秒〜1/500秒まででかなり狭いものになっているが,一般的な条件での撮影にはじゅうぶんに対応できる。マニュアル露出専用とはいえ,TTL開放測光露出計が内蔵されているのだから,使いにくいカメラだというわけでもない。50mmレンズでは,開放F値がF1.4やF1.8くらいのものが多いので,F2というとかなり性能が劣っているように感じるかもしれないが,撮影に困るようなものではない。F2.8クラスの高級なズームレンズより,さらに1段明るいレンズなのである。きれいな写真を撮るために必要な機能は,ちゃんと備えているのである。

リコーのカメラといえば,古くは「リコーフレックス」や「リコーオートハーフ」のシリーズが有名だった。とくにRICOHFLEX III型は,昭和30年ころまでの二眼レフブームの嚆矢ともいえる存在だ。RICOHFLEX IIIは,ボディもレンズもシャッターも,いずれも簡素な造りであったが,きれいな写真を撮るために必要な機能や性能をもっている(2015年1月21日の日記を参照)。低価格ながらきれいに写るとして,よく売れたカメラとなった。このことを高く評価する人は,少なくないはずだ(2015年5月10日の日記を参照)。
 RICOH XR500とXR RIKENON 50mm F2の組みあわせも,きれいな写真を撮るために必要な機能や性能をもっているわけで,低価格ながらきれいに写る一眼レフカメラが実現されたのである。それは,とてもリコーらしいカメラだと言ってもよいのではないだろうか。
 もちろん,RICOHFLEX IIIにくらべれば,ずいぶんと近代化され贅沢なものになっている。ひこひこ。


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