撮影日記


2016年01月14日(木) 天気:曇

力尽きそうなKodak DCS460
349万円は蘇えるのか?

年明け早々に,友人から送られてきた荷物(2016年1月4日の日記を参照)に入っていたものは,FUJIX DS-505Aだけではなかった。FUJIX DS-505Aは,いちおうの「復活宣言」をだせたのだから(2016年1月12日の日記を参照),つぎの課題に取りかかろうと思う。

これは,Kodak DCS460という,ディジタル一眼レフカメラである。
 見ればすぐに気がつくと思うが,Nikon F90に大きなバッテリーグリップを取りつけたような姿をしている。実際にこのディジタルカメラは,Nikon F90(正確には,Nikon F90Xの輸出用モデルNikon N90s)のボディが,そのまま利用されている。下半部には,Kodakによるディジタル回路(記録メディアやバッテリーを含む)が入っている。まさに,とってつけた姿だ。両者はネジで留められているだけなので,いくつかのネジとケーブルをはずせば,完全に分離できる。分離したカメラ本体は,電池ボックスと裏蓋とがあれば,ふつうにNikon F90として使用可能である。
 Kodak DCS460の発売は,1994年である。Nikon D1の発売より5年前,FUJIX DS-505Aの前モデルFUJIX DS-505の前年に発売されている。ディジタル一眼レフカメラとしては,ごく初期に発売された1台である。ディジタルカメラの存在を一般に広く知らしめたとされるCASIO QV-10の発売は1995年3月の発売だから,Kodak DCS460はCASIO QV-10より前のディジタルカメラである。
 そのような古い機種であるが,撮像素子の画素数は600万画素ある。ようやく,ビデオカメラをベースにした「スチルビデオ」というものの価格が,ある程度こなれてきた時代である。ディジタルカメラというものも市場にあらわれはじめたが,画素数でいえば30万画素クラスのものばかりで,まだまだ画質の面ではフィルムを使ったカメラにおよぶべくもない。このころ,フィルムと同等の結果を得るためには600万画素はほしい,といわれていた。Kodak DCS460は,そういう意味でも「使える」ディジタルカメラを実現していたことになる。
 Kodak DCS460のカメラ本体はNikon F90だから,操作性も機能も,そして使えるレンズも,じゅうぶんなものがあった。ただし価格もそれなりに立派なもので,本体のみで349万円である(*1)。実際に使用するには,本体のほかにレンズや記録メディア(PCカード型のハードディスクが想定されていた)なども必要になる。撮影した画像を処理するパソコンも,それ相応のパワーをもったものが必要だったはずだ。そうなると一式で500万円以上は必要になるだろうから,個人が趣味で使う目的に買えるような代物ではない。

そんな夢のようなディジタルカメラをいただいたのだが,「動作が不安定である」「専用ソフトがないから出力画像がうまく開かない」という状況であることを知らされた。まったく動かない,というわけではないようである。

動きをたしかめようと思ったのだが,さっそく,使い方に迷ってしまった。カメラ部分はNikon F90そのものだから,そこの使い方は問題ない。
 ディジタル回路のほうは,どうなっているのだろうか。背面に,現在のディジタルカメラでは必須といえる,撮影した画像を確認するための液晶モニタがない。そのかわりにあるものは,大きなコネクタが2つ,小さな液晶ディスプレイが1つ,その下に小さなボタンが2つと,少し離れたところにやや大きなボタンが1つである。
 小さなボタンには,「DELETE」「SCSI ID」という文字がある。ということは,右下の大きなコネクタはSCSI接続用のもので,左側の丸いコネクタは電源をつなぐためのものだ。以前はパソコンと周辺機器とを接続する規格としてSCSI (スカジー)は一般的だったが,最近は耳にすることも目にすることもなくなった。これらのことから,背面の液晶ディスプレイには,バッテリの状況,撮影可能コマ数およびSCSI接続のための設定項目が表示され,撮影済のコマを削除するときには「DELETE」ボタンを,SCSI接続の設定を変えるとときには「SCSI ID」ボタンを使うのだろうと,想像できる。
 では,大きなボタンはなんだろう?ディジタル回路部分の電源スイッチかな?と思って押してみたが,なにも変化はおこらない。
 間違いない,バッテリーが消耗している。では,ACアダプタを接続してみよう。

背面の液晶ディスプレイが,なにやらパニックを起こしている。
 内部のコンピュータが暴走したのか?状況がよくわからないので,いろいろとボタンやスイッチを動かしてみるが,なんの変化もない。リセットボタンのようなものも,見つからない。こうして眺めてみると,操作する部分がとても少ないことに気がつく。
 皆目見当がつかないので,ネット上になにかヒントがないかさがしてみた。しかし,有用そうな情報は見あたらない。基本的に業務用として流通していたのだろうから,趣味的にいろいろ試す人があまりいなかったのかもしれない。そのときふと,カメラから「きゅいーん」という小さな音が聞こえてきた。挿入してあるカード型ハードディスクが,目を覚ましたようである。見ると,「CARD BUSY」というインジケータが点滅し,液晶ディスプレイの表示が落ち着いている。Kodak DCS460というディジタル一眼レフカメラは,「充電しないと使えない」のではないだろうかと,思えてきた。
 液晶ディスプレイの中では,バッテリーをあらわしていると思われるマークがさかんに動いている。これは,「充電中」をあらわしているのだろう。ここはじゅうぶんに,充電してやろうじゃないか。

数時間後,液晶ディスプレイの表示は落ち着いた。バッテリーのインジケータが満充電をあらわしているように見え,撮影可能コマ数をあらわすと思われる数値も表示されている。ACアダプタのコードを抜くと,しばらくしてその表示は消えた。そこでさきほどの,ディジタル回路の電源スイッチかなと思ったボタンを押してみた。だが,とくに動きはない。こんどは,カメラ本体の電源スイッチをONにしてみた。するとカメラが起動し,背面の液晶ディスプレイの表示も点灯した。
 Kodak DCS460は,充電しないと使えない。電源は,カメラ側でON/OFFすればよい,ということがわかった。
 そのまま,シャッターレリーズボタンを押してみた。カメラは動こうとしたようだが,そのまま電源が切れてしまった。ディジタル回路が完全に故障しているのだろうか?いや,これはきっと,内蔵のバッテリーが力尽きかけているのが原因かもしれない。そうであれば,バッテリーを交換すれば,また使えるようになるのではないだろうか?
 今日はもう遅いので,明日,あらためて試してみよう。

バッテリー部分の改造は危険な行為であるが,FUJIX DS-505Aのバッテリー再生が(いまのところ)うまくいった(2016年1月10日の日記を参照)ので,ちょっと味をしめている(笑)。

次ページへつづく

*1 Kodak Professiional DCS460 デジタルカメラ (コダック株式会社)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/professional/products/cameras/dcs460/index.shtml


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