撮影日記


2015年08月06日(木) 天気:晴

「チェキ」フィルムは夜景にも!
Ernemann HEAG 0と「とうろう流し」の夜

NHKの世論調査によると「あなたは、いつ、広島に原爆が落とされたかを知っていますか。」という問いに正確に答えられた人は,広島市68.6%,長崎市で50.2%,全国では29.5%だったという(*1)。この数値は,大きいと見るべきだろうか,小さいと見るべきだろうか。この設問では,「昭和20年(1945年)8月6日」と正確に答えなければならないという意味では,難しい設問であったと言える。広島市以外の地域で,あまり高い正答率にならなかったことは,しかたのないことであろうか?見方を変えて,広島市の人は,いわゆる「東京大空襲」の正確な年月日を答えられるだろうか?もしかするとこういう問いかけに対して,「東京大空襲と広島への原爆投下を同レベルに扱ってはいけない」という批判が出るかもしれない。あるいは「平和を願う心を些末な知識の有無で押し測るな」ということもできるかもしれない。ただ個人的には,時刻まではいいから,年月日くらいは覚えておいてもらいたいと思う。
 「昭和20年(1945年)8月6日」という日付を答えられない人があるとしても,実際に8月6日には,平和の祈りのために,広島市を訪れている人が多くいる。「日付を正確に知っている」ことにももちろん意味はあるが,実際に8月6日を選んで広島市を訪れる人が存在することには,もっと大きな意味があると思う。
 ともあれ世論調査の結果や意味をどう評価するかについては,人によってそれぞれ思うことがあるだろう。
 ところでこの文章は,あくまで「撮影日記」なので,写真やカメラの話題に戻ることにする。

数年前から,8月6日におこなわれる「とうろう流し」を撮るようにしている。6×9判や4×5判などでしっかりと撮ってみたいという思いもあるが,真剣に祈りのために「とうろう」を流そうとしている人の妨げになるようなことはしたくないし,平日であれば仕事もあるので,大げさな機材を持ち歩くことも難しい。したがって,自分のなかでは比較的お手軽な機材で撮ることになる。いまのところは,2007年8月6日にROLLEIFLEXで撮影したものが,わりとよく撮れたのではないかと思っている。

ROLLEIFLEX Automat, Tessar 7.5cm F3.5 (F4, 1/2sec), E100GP

ROLLIEFLEXは背の高いカメラであり,かつウエストレベルファインダーになっているので,小型三脚と組みあわせてローアングルから撮影するのには,好都合である。
 これに味をしめて,翌年にはMamiya RB67での撮影を試みたが,潮の流れなどが具合悪く,思ったようなものは撮れていない。ROLLEIFLEXでは,感度ISO100のポジフィルム(E100GP)を使用した。Mamiya RB67では,感度ISO400のネガフィルム(PRO400)を用意したのに,残念である。さらに一昨年には,ディジタル一眼レフカメラ(Nikon D70)での撮影を試みた。そう,「とうろう流し」は単に被写体として眺めれば,夜景であり,イルミネーションのようなものである。高感度での撮影が好都合ではないか,と思われるのである。
 さて今年は,ディジタルカメラではなく,やはりフィルムで撮影しようと考えた。Mamiya Universal PressかMamiya RB67で,フジのPRO400Hを使いたいところであるが,平日であるためこのような大柄なカメラは持ち歩きたくない。では,ZENZA BRONICA ETRSの出番かなと考えたところで思い出したのが,Ernemann HEAG 0である。Ernemann HEAG 0は,大名刺判のプレートカメラ(乾板用カメラ)なので,とても軽量であり,コンパクトに折りたためば携帯も容易である。プレートカメラだったら,フィルムはどうするの?と思うかもしれないが,この「撮影日記」をずっと読んでくださっている方ならば,覚えているだろう。そう,「チェキ」のフィルムを使うのである(2015年6月9日の日記を参照)。「チェキ」のフィルムは感度ISO800だから,「とうろう流し」の撮影にじゅうぶんに使えるはずだ。

大名刺判のホルダ3枚に,「チェキ」フィルムを装填して,準備完了である。
 夕方,出かけるのが遅くなったので,平和祈念公園に着いたころには,人ごみはかなり解消していた。今年は原爆ドームの前に,折り鶴が設置されている。

カメラはErnemann HEAG 0,三脚はSLIK PRO miniであれば,荷物はごくごくコンパクトなものになる。だが,実際には,ちょっとかさばるものも用意していた。それはチェンジバッグと「チェキ」本体である。先に「大名刺判のホルダ3枚に」と書いたが,これはすなわち,ホルダを3枚しかもっていないことを意味する。撮影現場でフィルムを交換するにはチェンジバッグが必要であり,撮影済みフィルムはすぐに「チェキ」本体を使って現像してしまうのが,ミスを防ぐことになる。

いろいろと露出を変えて何枚か撮ってみたのだが,今回は絞りF8で,露光時間を約2秒にしたものが,もっとも具合がよいようだ。

Ernemann HEAG 0, Ernemann Detektiv Aplanat 10.5cm F6.8, FUJI instax film

「チェキ」フィルムは,インスタントフィルムなのだから,撮影したその場で撮影結果を見ることができるのはあたりまえだ。ディジタルカメラであれば,撮影結果をその場で確認できるのは当然のことになっている。むしろ,撮影してすぐに撮影結果を見ることができない,ということのほうが,いまとなっては特殊なことなのかもしれない。
 ともあれ,インスタントフィルムを使うと,プレートカメラでもお手軽に使えるわけで,これはなかなか愉快な組みあわせである。

*1 社会や政治に関する世論調査 「原爆意識調査(広島・長崎・全国)」単純集計表 (NHK放送文化研究所,2015年08月05日)
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/social/pdf/150805.pdf


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